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バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件  作者: 沢田美


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3/30

放課後デートは突然に

「で、デートっ!?」


 思わず声が裏返った。

 自分の声がやけに響いて、胸の鼓動まで一段と速くなる。

 そんな僕の狼狽なんてお構いなしに、白瀬さんは静かに一歩、また一歩と近づいてくる。

 髪がふわりと揺れ、甘く柔らかい香りが鼻先をくすぐった。

 ――近い。

 あと半歩で、呼吸が触れ合ってしまいそうな距離。

 思わず視線を逸らしながら、なんとか言葉を絞り出す。


「し、白瀬さん……そういえば須藤さん達は?」


「帰ったよ?」


 まるで天気の話でもするかのような軽い調子。


「だって、私の趣味なんてあの人たち知らないし、興味ないと思うからさ」


 口の端をわずかに上げる。

 その笑みは、からかうようでいて、どこか挑発的だった。


「どうする? 行く? 行かない?」


 耳元で囁かれたような錯覚に、喉がひとりでに鳴る。ゴクリ。

 ――なんだ、この人。バイト先で見てきた彼女は、こんな危険な魅力を放つ人だったか?

 まるで見たことのない一面に、僕の理性がざわつく。

 でも――嫌じゃない。むしろ、もっと知りたいと思ってしまう。


「い、行きます! 『ヒーリング』オタクとして、僕も一緒に行きます!」


「お! ノリいいじゃん」


 白瀬さんの笑顔が、ふっとやわらかくなる。

 その笑みに、胸の奥がくすぐったくなるのを感じた。


 ※


「ねぇ、有馬っち! 見てこれ! ケンヤのアクスタとか缶バッジあるよ!」


 普段はクールな彼女が、今は瞳を輝かせて駆け寄ってくる。

 まるで小さな子供のように、頬をほんのり赤くしてはしゃいでいた。

 どうやら『ヒーリング』と書店のコラボキャンペーンの真っ最中らしい。

 棚一面に並ぶ限定グッズに、彼女の視線はあちこち飛び回る。

 ……こんな表情、初めて見た。

 学校で見せる余裕たっぷりの笑顔とも、バイト先の明るい先輩の顔とも違う。

 これが、白瀬さんの本当の姿なんだろうか。

 胸の奥がじんわり温かくなる。


「有馬っちの推し、誰なん?」


「ぼ、僕ですか? 僕は……やっぱりアスカですかね! 漫画で出会ったばかりの主人公には最初は厳しかったのに、主人公の成長と共に――」


 気づけば早口になっていた。

 でも、白瀬さんは嫌な顔をするどころか、同じ熱で笑ってくれる。


「わかるわー。アスカとジュンジの関係、私も好きだよ!」


「ですよね! あの二人の距離感が徐々に変わっていく感じとか――」


「めっちゃいいよね! 特に5巻のあのシーンとか――」


 二人で盛り上がっていると、白瀬さんがふと手に取ったのはハート型のキーホルダー。

 ケンヤとスズミのカップリング仕様、“カップル専用”の文字が光っている。

 ……なぜか、その文字が胸に小さく引っかかった。

 白瀬さんは少し恥ずかしそうに笑って、それを棚に戻す。


 ※


 不意に、背後から声が飛んできた。


「お、白瀬さんじゃーん」


 体がぴくりと硬直する。

 振り返ると、うちの学校の制服を着た女子二人が立っていた。


「お、ミセッちにアリッちじゃん」


 白瀬さんは全く動じず、いつもの調子で会話を始める。


「なにしてんの? こんな所で」


「好きな漫画の新刊が出たから買いに来たんだ」


「へぇー、それで、その隣の人、だれなん?」


 ――やばい。完全ステルス機能、故障中か!?

 焦る僕をよそに、白瀬さんがニヤリと笑った。


「私のパシリ」


 僕の腕を軽く掴み、からかうように指差す。

 二人は安堵したように笑い、すぐに口を開いた。


「だよね! 私らてっきりこんなのが彼氏かなにかかと思ったわー」


「白瀬さんが、こんなしょうもなさそうな奴と付き合うなんて、ないよねー」


 胸の奥がズシンと重くなる。

 ……悔しい。言われたこと以上に、その言葉を否定できない自分が悔しい。

 そんな僕を横目に、白瀬さんがふっと微笑んだ――けれど、その笑みは妙に鋭い。


「しょうもなくないよ。有馬っちは、めちゃくちゃ面白いパシリなんだ。……二人には勿体ないくらいね」


 声のトーンは穏やかなのに、どこか有無を言わせない迫力があった。

 空気がわずかに張り詰め、二人は怯んだように「じゃ、じゃあウチらはこれで」とそそくさと立ち去った。

 二人の背中が見えなくなると、白瀬さんの表情が少しだけ柔らかくなる。


「……ごめんね、変なこと言って」


「え?」


「パシリとか。でも、あいつら結構うるさいから」


 その横顔が、少しだけ寂しそうに見えた。

 ――白瀬さんも、色々と大変なのかもしれない。


 ※


 グッズや新刊を手に入れた帰り道。

 夕方の光に照らされた横顔が、どこか満足そうに見える。


「今日、めっちゃ楽しかった」


「え?」


「有馬っちと一緒で良かった。一人だと、こんなにはしゃげないから」


 白瀬さんが照れくさそうに笑う。

 その笑顔に、胸が温かくなった。

 そんな彼女が、不意に僕の腕をくいっと引いた。


「ねぇ、漫画、一緒に見ない?」


「え? 別にいいですけど……でも、どこで読むんですか?」


「んなもん決まってんじゃん」


「?」


 白瀬さんが、いたずらっぽく笑う。


「私の家だよ」


「――ッ!?」


 心臓が、一瞬で跳ね上がった。


「え、ちょ、待って、家って――」


「ダメ?」


 上目遣いで見つめられて、言葉が出なくなる。


「べ、別にダメじゃ……ないです」


「やった! じゃ、決まりね」


 白瀬さんが嬉しそうに笑って、僕の手首を掴む。

 夕暮れの街を、二人で歩く。

 手首に残る温もりが、やけに意識されて――僕の顔が熱くなった。


もうテンプレ使うのダルいので、適当になんか書こうかな!

有馬蓮くん、君が羨ましいよ。

そこ変われ!!!

明日も21時〜22時頃に投稿するのでお楽しみに!!

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