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バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件  作者: 沢田美


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18/30

契約と1番クジ

 夏のはじまりを告げるように、セミの鳴き声が聞こえてくる。

 昼休みの教室で僕は、読んでいるライトノベルを1ページ、また1ページ捲る。

 文字を目で追いながら、そこに書かれた描写を元に想像する。

 想像……。


『僕は、白瀬さんのことが好きです』


 白瀬さんに言ったあの言葉。

 忘れたと思っていたはずなのに、ずっと頭の中で再生される。

 思わず恥ずかしさで叫びたくなる。

 それを我慢するように、唇を噛み締める。

 恥ずかしい……昨日から白瀬さんと顔を合わせられてない。

 いや、正確には――

 白瀬さんの方が、僕を避けている。

 ふと、朝のことを思い出す。


 ※


 朝、いつも通り学校へ登校すると、僕より先に教室に白瀬さんたちのグループがいた。


「お、おはよう」


 僕が司くんたちに挨拶すると、司くんたちは明るく挨拶を返してくれた。


「おう、おはよー!」


「おはよう、有馬」


 でも――

 白瀬さんは、顔を伏せていた。

 視線を合わせようとしない。

 ……白瀬さんに、避けられてる!?

 その後も何度か声をかけてみた。


「白瀬さん、おはよう」


 素通り。


「白瀬さん、これ昨日の……」


 無視。

 こ、こうもあからさまに無視されると……キツイ。

 告白したから?

 気まずいから?

 それとも――

 嫌われた?

 胸が、ぎゅっと締め付けられる。


 ※


 そして、今に至る……。

 ラノベの内容が、全く入ってこない。

 文字を目で追っているだけで、頭に入らない。

 うーん、もどかしい……。

 そうだ! LINEなら!

 僕はとっさにスマホを取り出して、LINEを開く。

 LINEを開けば、すぐに白瀬さんのアイコンが見つかる。

 そういえば、僕のLINEの友達って……公式LINEと身内のLINEばっかりなんだよなー。

 白瀬さんが唯一の、学校関係の友達。

 指が、画面の上で迷う。


『白瀬さん、今日大丈夫? なんだか元気ないみたいだけど……』


 色々な思考をしながら、文字を打っていく。

 この文で大丈夫なのだろうか……。

 重くないかな。

 迷惑じゃないかな。

 送信ボタンを押す勇気が、出ない。


「なにしてんのー?」


 突然の声に、僕は思わずスマホを落としそうになる。

 そして、その衝撃で――

 指が、送信ボタンを押してしまった。


「あ……」


 送信済み。

 取り消せない。


「うん?」


 僕はため息をついて、声の方へ振り向く。

 すると、そこにいたのは須藤さんだった。


「な、なんですか?」


「いやー、最近紗良と仲良しだなー? って思って!」


「へ?」


「だって、昨日紗良と2人きりで何か話してたでしょ?」


 須藤さんはキョトンとした顔で言う。

 昨日、白瀬さんと話した後のことを思い出す。

 あの後、白瀬さんを僕が泣かせたみたいな感じで疑われたんだっけ。


「ねぇ、有馬っちはさ? 紗良のこと、好きなん?」


「――ッ!?」


 その発言に、思わず昨日の告白が脳裏をよぎる。

 僕はビクッとして、席を立つ。

 顔が、熱い。


「アハハ! 分かりやすー。ねぇ、有馬っち!」


「は、はい!?」


「少し、契約を結ばない?」


「け、契約?」


 須藤さんはそう言って、僕に歩み寄る。

 彼女の甘い匂いが、僕の鼻をくすぐる。

 ち、近い!


「ちょっと渡り廊下で話そ!」


 須藤さんの手に引かれて、僕と彼女は渡り廊下まで走った。


 ※


「ねぇ、有馬っちはさ? 私が司のこと好きなの、知ってる?」


 渡り廊下に着くなり、須藤さんは唐突に言った。


『須藤さんは司のことが好きなんだよ』

 

 海斗くんの言葉が、脳裏をよぎった。

 そういえば、そんなこと言ってたな。


「う、うん。詳しくは知らないけど」


「そっか! 私と司はね、幼なじみなんだよね!」


「え!? そうなんですか!?」


「そ! 保育園から高校、全部一緒!」


 須藤さんは、微笑みながら言う。

 そんな昔からの付き合いなのか。

 そして、須藤さんは話を続けた。


「私さ、司のこと小学生の頃から好きでさ」


「…そうなんだ」


「毎回、友達なんかに協力を促して、何度かアタックしてきたけど……」


 須藤さんの顔が、少し曇る。


「アイツ、鈍感すぎて全部おじゃんなの!」


 確か海斗くんも『鈍感』とか言ってたよな。

 司くん、結構周りに気を配れるのに……なんで肝心なところは鈍感なんだ。


「それでさ、私たち来年で受験じゃん?」


「ま、まぁ……ですね」


「だから、忙しくなる前に、今年中に告白したいの!」


「なるほど!?」


 須藤さんが楽しそうに、僕の肩に手を置く。


「そこで! 私も有馬っちの恋をサポートするから! 私のにも協力して!」


 協力、か……。

 でも、僕はもう告白してしまってるからな。

 今さらサポートされても……。

 ふと、須藤さんに視線を向ける。

 彼女の目が、ギラギラと輝いている。

 断れる雰囲気じゃない。


「わ、わかりました」


「やった! ありがと! 有馬っち!」


 須藤さんが、ぴょんと跳ねる。


「でも、僕は何をサポートすれば?」


「あー! それは!」


 須藤さんが、人差し指を立てる。


「夏休みに、みんなで夏祭りに行ったり、BBQする予定だからさ! その時にお願いしたい!」


 BBQ? 夏祭り?


「聞いてないよ!?」


「あれ?」


 須藤さんが、きょとんとする。


「そ、それって……まさか!?」


「え? 有馬っちって、私たちのグループLINEとか入ってない?」


「……入ってない。なんなら、クラスのグループLINEにも入ってない!」


 僕と須藤さんの間に、沈黙が流れる。

 セミの鳴き声だけが、やけに大きく聞こえる。


「分かった、じゃあ私が誘うから、スマホ貸して!」


「お願いします……」


 僕は須藤さんに、スマホを渡した。

 慣れた手つきで、スマホを操作する須藤さん。

 画面を見ながら、何かを入力している。

 そして、1分ほどで返ってきた。


「はい、おしまい!」


「え!?」


 ふと画面を見ると、そこには――

 白瀬さん、司くん、海斗くん、光くん、有村さん、須藤さん。

 いつも絡んでいる人たちの連絡先が、追加されていた。

 な、なんで!? てか! 勝手に!?


「勝手に追加してるけど、怒られないよね!?」


「うん? 怒らないでしょ、だってアイツらだよ?」


 須藤さんって、意外と大雑把なのか?

 でも、確かに。

 司くんたちなら、怒らないだろう。

 むしろ、喜んでくれるかも。


「あ、あと」


 須藤さんが、にやりと笑う。


「紗良のLINEも追加しといたから」


「え、それはもう……」


「あれ? もう追加してたの?」


「は、はい……」


「そっか。じゃあ、早速みんなに挨拶しよ!」


 須藤さんは、そう言って渡り廊下から教室へ戻っていった。


 ※


 放課後。

 僕は一人で、LINEを眺めていた。

 よし、これで司くんたち全員に挨拶はできた……。

 司くん、海斗くん、光くん、有村さん、須藤さん。

 みんな、優しく返信してくれた。

 でも――

 白瀬さんからは、まだ返信がない。

 朝のメッセージも、既読にすらなっていない。

 やっぱり、避けられてるのかな。

 そんなことを思っていた時だった。


 白瀬『ちょっと話したいことあるから、校舎裏まで来れる?』


 白瀬さんからの、突然の返信。

 僕の胸が、思わず跳ねる。

 話したいこと。

 何だろう。

 昨日の告白のこと?

 それとも――


 有馬『わかりました』


 僕はすぐにそう返信を返し、荷物をまとめて校舎裏に向かった。


 ※


 校舎裏まで、走って行く。

 息が、上がる。

 心臓が、うるさい。

 校舎裏の階段に座り、夕方の風に黄昏れているのは――白瀬さんだった。

 彼女の自然な、凛とした横顔が美しい。

 ドキドキと、胸が踊る。


「――有馬っち」


 こちらの存在に気づいた白瀬さん。

 いつもなら手を振って、笑顔になる彼女。

 でも、今の白瀬さんは落ち着いた顔をしている。


「白瀬さん、話って……」


 白瀬さんが、ゆっくりと立ち上がる。

 彼女の真剣な眼差しが、僕を見つめる。

 息が、止まりそう。


「有馬っち、ちょっと付き合ってほしい場所があるんだけど」


「え、場所……?」


「うん。ついて来て」


 白瀬さんは、そう言って歩き出した。


 ※


「へ? ここって……」


 白瀬さんに言われるがままに連れてこられた場所。

 そこは――アニメイトだった。

 困惑する僕。

 しかし、彼女はいつにも増して真剣だ。


「有馬っちも、覚悟して」


「はい? 何を?」


「あれ? 知らないの?」


 白瀬さんが、不思議そうな顔をする。


「今日は『ヒーリング』の一番くじの発売日だけど?」


「忘れてたああああああああ!」


 思わず、声を上げた。

 そうだ、今日だ!

 『ヒーリング』の一番くじ、今日発売日じゃないか!

 完全に忘れてた!


「白瀬さん、僕も本気で行きます」


 僕は、拳を握る。

 白瀬さんが、にやりと笑った。


「頼んだよ! 相棒!」


 僕と彼女は、お互いに顔を見合わせ、財布を構えた。

 朝の気まずさは、どこかに消えていた。

 今は、ただ――

 一番くじに、全力を注ぐだけ。

 僕たちの戦いは、これからだ!

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