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バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件  作者: 沢田美


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14/30

震える声

 水野愛莉――僕が中学の時の同級生で、学年一可愛いと言われていた。

 ただ、それだけの関係。


 白瀬さんの質問に答えようとしたが、言葉が喉に詰まった。

 脳裏を過ぎるのは、中学時代の記憶。


「……」


「そっか、なんかごめん! 聞いちゃマズかったね!」


 作り笑顔で、白瀬さんは言った。


 さっきまでの楽しい空気が、一変していた。

 妙に、時間がゆっくり流れる。


「なぁ、どしたん? 紗良〜?」


 そう言って、僕と白瀬さんの間に割って入るのは有村さんだった。


「いや、なんでもないかな! さ、早くケバブ食べて次行こ次!」


 白瀬さんは有村さんの背中を押しながら、司くんたちの方へ向かう。

 その後ろ姿が、いつもより小さく見えた。


 ※


 それから、僕たちはゲームセンターに行き、ボウリングに行き、アニメイトに行った。


 みんなは楽しそうだった。

 司くんと須藤さんは相変わらず仲が良く、海斗くんと光くんは僕に優しく接してくれた。


 でも――


 白瀬さんだけは、いつもと違った。


 笑顔は変わらない。

 声のトーンも、いつも通り。


 それなのに、何かが違う。


 僕に話しかける回数が、少し減った気がする。

 目が合っても、すぐに逸らされる。


 ――僕、何かしたのかな。


 そんな疑問を抱えたまま、僕たちは解散した。


 胸のモヤモヤは、最後まで晴れなかった。


 ※


 日曜日は、一日中部屋にこもっていた。

 アニメを見ても、ラノベを読んでも、集中できない。


 頭の中は、白瀬さんのことでいっぱいだった。


 ――水野さんのこと、説明したほうがいいのかな。


 でも、何をどう説明すれば...


 スマホを何度も手に取っては、置く。

 LINEを開いては、閉じる。


 白瀬さんとは、まだLINEを交換していない。


 ――話したい。


 ちゃんと、説明したい。


 次に学校で会うのは、また来週。

 でも学校では、白瀬さんはいつも友達と一緒だから、二人きりで話すのは難しい。


 結局、何もできないまま、日曜日は終わった。


 ※


 月曜日の朝。

 僕はいつも通り早く家を出て、学校の教室でラノベを読んでいた。


 昨日は『ヒーリング』の最新話が公開される日だったけど、白瀬さんから何も言われなかったな……。


 そんな些細な疑問を抱きながらも、ラノベのページをめくる。


「なぁにしてんのー?」


 白瀬さんの声がした。

 思わず顔を上げる。


 そこにいた白瀬さんは、いつもの雰囲気といつもの笑顔をしていた。


「お、おはようございます。ちょっとラノベ読んでました」


「ふーん、そうなんだ」


 白瀬さんはそう言いながら、僕が座っている席の隣に椅子を持ってくる。

 そして、彼女の視線が僕を捕える。


 至近距離!? こんな近くまで……心臓が、うるさい!

 白瀬さんの良い匂いが、僕の鼻まで届く。


「有馬っち、今日私と――」


 白瀬さんが何か言いかけた、その時。


 ヴィヴィヴィ


 僕のスマホが震えた。


「――ッ」


 白瀬さんの言葉が止まる。


「あ、ごめんなさい...」


 僕は慌ててスマホを取り出す。


 画面には、LINEの通知。


【LINE】

水野愛莉

『こうやって連絡するの久しぶりだよね!』


 ――水野さん!?


 思わず、画面を凝視する。


「...有馬っち?」


 白瀬さんの声が、少し遠く聞こえる。


 スマホを開くと、続きのメッセージが表示された。


『私さ、今度蓮くんが働いてる

ファミレスでバイトすることにしたから♪

よろしくね!』


 ――え?


 なんで、バイト先を...?


 しかも、なんでこのタイミングで...!


「有馬っち、どうしたの?」


 白瀬さんが、僕のスマホ画面を覗き込もうとする。


「――ッ!」


 僕は咄嗟に、スマホを胸に抱える。


「い、いや! なんでもない!

 店長から、連絡があって...!」


 ――嘘、ついた。


 白瀬さんに、嘘をついてしまった。


「...そっか」


 白瀬さんの笑顔が、一瞬だけ固まった気がした。


 でも、すぐにいつもの明るさを取り戻す。


「有馬っちも大変だね〜。

 でもあそこの店長、めっちゃ頼りになるから!」


「あ...うん」


「今日も、バイト?」


「...うん。17時から」


「そっか! 頑張ってね!」


 白瀬さんは満面の笑みで言った。


 でも――


 その笑顔が、どこか悲しそうに見えた。


 ※


 放課後。

 持ち帰る教科書や持ち物をバッグに詰めていると、司くんと海斗くんが僕の元へ来る。


「なぁ有馬! 今日ゲーセン行くんだけど来るか?」


「ごめん、今日バイトがあって……」


「そうか、なら仕方ないか」


 司くんは優しく笑って言うと、二人は教室を出ていった。


 僕も荷物をまとめて、教室を出る。


 その時――


 廊下で、白瀬さんと目が合った。


「...」


 白瀬さんは、一瞬だけ僕を見て――


 すぐに、視線を逸らした。


 ――やっぱり、何かおかしい。


 ※


(白瀬紗良の視点)


 荷物をまとめて、私は有馬っちのいる席に視線を向けた。


 ――もう、いない。


 有馬っちの席には、誰もいなかった。


「...行っちゃった」


 小さく呟く。


「紗良〜、今日帰りどこに行くー?」


 奏が話しかけてくる。


「...ファミレス」


 気づいたら、口からその言葉が出ていた。


「え?」


 困惑する香澄。


「ファミレスに行きたい!」


 ――会いたい。


 有馬っちに、どうしても。


 今朝、言えなかったこと。

 伝えたかったこと。


 ちゃんと、話したい。


 ※


(有馬蓮の視点に戻る)


「あ、有馬くん! ちょっといいかな?」


 更衣室で制服に着替えた僕を、店長が呼ぶ。

 この時の僕の心臓の鼓動は、妙に早かった。

 店長が僕を呼び止めた理由は、きっとあれだ。


「今日からこの時間帯に新しく入ることになった、水野さんだよ」


 そう言って店長は、レジで僕に水野さんを紹介した。


「よろしくね! 蓮くん!」


 水野さんの笑顔は、中学の時と変わらない。

 明るくて、人懐っこくて、誰にでも優しい。


 ――悪い人じゃない。


 それは分かっている。


 でも――


「有馬くん、水野さんに仕事教えてあげて」


 店長の言葉に、僕は頷く。


「は、はい...」


 その時、店の入り口のドアが開いた。


 カラーン


「いらっしゃいませ」


 条件反射で声を出す。


 ――そして、固まった。


 そこに立っていたのは、白瀬さんだった。


 須藤さんと、有村さんも一緒に。


「――あ」


 白瀬さんと、目が合う。


 その瞬間――


 白瀬さんの視線が、僕の隣にいる水野さんに向いた。


 白瀬さんの笑顔が、一瞬だけ消えた。


 ――やばい。


 これは、まずい。


 すごく、まずい。


「有馬っち...」


 白瀬さんの声が、小さく震えていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

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