第9話 離れていても、心はずっと側に
ナイトクイーンの【注射】により、古き神竜の姿は強制的に削がされ、あろうことかその身を人間へと変えた。
シーザは自分だけでナイトクイーンに挑もうとするも、怪我のせいでうまく立ち回れず片膝を付いてしまう。
比較的細身で、竜の名残か胸筋の発達が目立つ。亡き片目には黒の眼帯。
髪は短髪で顎には少し髭を生やしイケオジ風な見た目、下半身は辛うじて履いてる。
「なぁんで、ワシが神竜を必要としているのか。教えてあげようかの?
我が王の望み!偉大なる研究を成功させるために生命力の塊である竜の血が必要なの♪だからそれを邪魔するなら……シネば?」
「……貴様らは仲間ではなかったのか?」
「ワシとこいつらを一緒にするなんて、神竜は見る目ないの〜。
っあ〜!いっけなーい⭐︎
シーザが身を挺して守っていた【聖剣】も回収させてもらわなきゃなぁ!」
ナイトクイーンは、あろうことか
風化して錆びつきボロボロの見た目の剣を聖剣と呼んだ。
ーーそして、その手で抜こうと試みる。
「……ふんぬ!………ふっ!!………んああああっ!!抜けなーい!!!
どうなってやがる!!」
「アハハハハハッ!あの、ロリババ!抜けないでやんの。
それは、救世主にしか抜けないのさ。
お前じゃ"絶対無理"だよ、諦めたら?」
「ムキィイイイイイイイイッ!!
レシウスゥウウウ!!救世主より先にその首切り落とすぞッ!!!」
自分の強さを誇りにする彼女は血相を変え、可愛らしい見た目にそぐわない見幕で、レシウスへの殺気をぶつける様に
爆破系統の魔法をこれでもかと繰り出したきた。
「ははは、こわ。
どうやら相当、煽りが効いたようだ。
ニア、今のうちに聖剣を抜いて見せるんだ。
そしたらシーザも受け入れてくれるだろうさ。」
「我々親衛隊も援護する!!」
「……!!う、うん!!!
皆ありがとうッ!!!」
ナイトクイーンと、レシウスの互いの魔法が
ぶつかり合いその衝撃波は簡単にニアの身体を吹っ飛ばす威力だ。
スフィアと親衛隊員達は、自分を壁として余波を受け止め聖剣への活路を開く。
「餓鬼共!!!!
あんまり大人を舐めるんじゃぁぁあないよオオオオオオオ!!!
火花よ炸裂しろ(スパーク・プロフューズリー)!!!!!」
月下美人の魔法は、広範囲に高威力の火花を炸裂させたーーー。
レシウスの防衛魔法よりも早く放たれたナイトクイーンの攻撃魔法に皆対応しきれず
スフィアと親衛隊もその攻撃を食らい、
そのままニアに襲いかかった。
(ヤバいヤバいヤバい!!避けれる訳ないって!!
あと少しで!!!あと少しでッッ、聖剣に………ッ届くッ!!!)
攻撃魔法を食らうのとほぼ同時に、ニアの手は聖剣を握り引き抜いたーーー。
「厄災の娘が、救世主だと……ッ!!
どう言うことだッ!!!?」
ニアは、引き抜いた聖剣を壊れぬ様、守るように抱きしめたまま、上から落ちた大岩に当たるまでその身体を吹き飛ばされた。
ーー弱々しく横たわったまま、起き上がらない。
誰もが、ニアは死んだと思った。
その時だったーーー。
ニアは、光に包まれる。
そして、白い人影が蝋燭の炎のように揺れながら現れ神竜をただ見つめた。
「……我の救世主だ………。
そうか………、お主はずっとずっと我の側に、
一番側に居てくれたのだな。
……愚鈍な我を、どうか、どうか許してくれ……ッ!!」
その瞳から溢れた雫は、頬を伝う。
一万年前に世界を救った救世主の聖剣は、
古神竜シーザを孤独にさせないために残された剣だったのだ。
一万年もの間、ただ1人の人間を待ち望んだ神竜は、
救世主はもう生きていないと、独り自決したことも本当は全てわかり切っていた。
しかし、割り切ることが出来ずにいた。
けれど、共に世界を救った神竜の救世主は、ずっとずっと側に寄り添い続けていたのだ。
例え姿形が目に見えずとも。
もう二度と語らう事は、できずとも。
ーーそっとシーザに微笑むと泡の様に消失していった。
シーザはゆっくりゆっくりと歩み、
聖剣を身を挺して守ったニアの身体を支える様に持ち上げる。
「……すまなかった、救世主の娘よ。
お主が聖剣を守ってくれたお陰で、気づくことが出来た。
どんなに離れていても、心は繋がっていると言うことを。」
「ゥ…、ゥゥ。」
「救世主……!無事なのかッ?」
「ぅ、うん………。たぶん、体の骨は折れたかも……。ぁ、聖剣も無事でよかったぁ……!」
「バカ者!!お主が死んではッ、誰がこの世界を救うのだ!!」
「うぅ、言い返せないです。
……こ、腰の……ポシェットに、ぽ、ポーション……。」
シーザはニアの腰のポシェットから、慌てて
ポーションを取り出し、2本ほどそれを飲ませた。
痛みは和らぎ、上体は起こすことができた。
しかし、立ち上がることはできなかった。
竜の姿であれば、自分の生命力を分け与える事も出来たが、人の姿に無理や変化させられ
まだ馴染めないのか、自分の本来の力を引き出せずにいる。
「救世主よ、少しの間、聖剣を借りるぞ。
恐らく、これならば我が奴を斬れる。」
「………?う、うん。」
神竜シーザは、その手に聖剣を持ち構え
レシウスとスフィア、親衛隊員を蹴散らして得意げに嗤うナイトクイーンへ立ち向かう。
「フフッ♪そんなボロボロでワシとやり合うのかぁ〜?
気に入った♡救世主の死体と一緒にお前も仲良く並べてやるさね?」
「……そうか。
もう黙れ。我はな、今心底、虫の居所が悪い。
貴様のせいでなッ!!!!」
「ッイイ♡本気でやり合おうねぇ!!!!
ぶちのめして、その口二度と聞けなくしてやるさねッ!!!!」
「神竜!援護する!
こいつは僕より格上だ!気をつけて!!」
ーーシーザの手に持つ、聖剣は
彼の思いに呼応するようにその刀身を変化させ
刀に形状を変えた。
ゆっくりと鞘から、滑るように抜刀し
斬る構えを見せたーーー。




