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第8話 綺麗な花には毒がある



「……うそ、でしょ……?」


始めての臭い。悲惨な死人の有様。

竜から切ない途切れ途切れの息使いが聞こえる。


むせ返るほどの血の臭い。頭がおかしくなりそうな状態。

ーーーバラバラになった、人間の腕や足の肉片と内臓が至るところに散らばっている異様な光景。


「ッぅうウッ……!」


滞りなく涙が止まらない。

喉が焼けた。

呼吸がままならなくて心臓が傷んだ。

普通に生きてきたらまずあり得ない、この光景に嗚咽が止まらず吐いてしまう。


むごいな…。……ニアは戦場に慣れないのだろう?吐くのも無理はない。」


安心させるように優しく優しくスフィアはニアの背中をさすりながら、その表情を曇らせる。


「先の爆破の轟音は、

神竜を攻撃するためのものだったのか……?」


「その可能性が、高いだろうね。

…ニア、水だよ少しずつ飲みなさい。」


レシウスから渡された小瓶に入った水を、

勢いよく飲み干す。

この心に降りかかる、行き場のない気持ちが、また喉元から溢れ出しそうだった。


親衛隊員の1人が、急ぎ辺りの偵察を終え

皆に報告する。


「取り急ぎご報告致します。

ここにある死体の数はザッと10人程。

恐らく、【王楽園キング・エデン】の兵士達でしょう……。しかし、一体何故。」




「………ハァ、ハァ……うるさいぞ……!!

……人間……風情がッ!!!

これだから人間などッ!不愉快なのだ!!」


神竜シーザは、ニア一行にその剥き出しのいきどおりと負った傷の数々に顔をゆがませた。

そしてその巨体を持ち上げたかと思えば、尻尾の先をこちら目掛けて振り払う。


ギリギリでニアも避けるが、よろけて転んだ先には人の腕が落ちていた。

視界と思考がうまく回らない、

二振目の攻撃が、ニア目掛けて再度振り払われる。


スフィアがやむを得ず、ニアを抱き抱え

すかさず降ろすと弓でシーザを攻撃するために構えた。


「やむを得ない……。神竜よ、すまない……!!」


「ダメッ!!!神竜を攻撃してはダメだよ!!」


咄嗟とっさに、ニアが静止に入る。


「勝手なことをごめん!!

でも、まだちゃんと話せてないッ!!」


「ハァ…ハァ………な、なぜだ人間……?

ッ貴様からは厄災の臭いがするッ!するではないかッ!!!」


怒り狂う神竜には、話が通じぬ様で

先ほどよりもむしろ我を失うくらいに

血に濡れながら見境なく攻撃を始めた。



エルフの長老から聞いてた昔話でも、確かに人嫌いだと聞いてはいた。

こんなにも、人への怨みや嫌悪をあらわにするほど嫌いであるとはここにいる誰もが思っていなかったのだ。


一万年前に世界を救世主と共に救った話から

てっきり、本心は人々と共に生きたいと望んでいるものだとーーー思っていたのだ。


いや、まだ決めつけるのはナンセンスだろう。

決めつける事は、簡単だ。

これは、直接本人に聞くしかないだろう。

でもどうやって……?


「救世主は、何処どこなのだッ!!!

貴様らが隠したのか………ッ?!貴様らが殺したのかッ!!!許さぬ!!!!」


「ニア、何故ここまで神竜がいきどおっているのか僕らにわからないけど……、

何もしないとこちらが死んでしまう。殺す訳ではないよ、ただ気絶させる。」


「ッダメ!!!ごめん、わかってる………。

でも、シーザの声……何処どこかで聞いたことのある"声"なの!!

後少しで、思い出せそうで………!!!」


「神竜に心当たりがあるのかい?」


直接会ったことなど当然なく、

今回が初対面なことは間違いない。

けれど、ニアはその"声"を既に知っていた。


そうーーー。

神父アスナデを打倒する際に

頭の中に直接流れてきた、あの無機質な"声"と同じだ。


今相手にしている神竜シーザの声は感情が表に出ている状態だが、

確かに同じ声質であることを思い出した。



「声!!!そう、声が同じなの!

私がアスナデを王楽園キング・エデンで倒した時に聞こえた!!!

貴方は、私を導いてくれていたんだね……。」


すると、神竜の怒りに満ちた瞳に、少しずつ光が戻っていく。


「な、なぜ………、王楽園キング・エデンでの我が救世主が神父を倒したことを貴様が知っているのだ……!確かに、あれ以来救世主とのコンタクトが一切取れなかったが……。何か知っているのか?!洗いざらい吐け!!!人間の娘!!!」


シーザはその巨体をかがめて、

ニアを覗き込む様に顔を近づけたーーー。


ドンッ!!!!!


瞬間大岩が突如吹っ飛び、土煙の中から、小さな影が現れた。


「他の女子おなごに欲情するなんて、ワシ許せなぁい!

……あは♡シーザの背中ガラ空きだよ?」



子供のような見た目。

体型に釣り合わないブカブカのローブを(まと)

一人称がワシの少女は、傲慢(ごうまん)にその口角を上げる。

神竜の身体目掛けて、彼女は腕を振りかざす。その手に持った注射器を神竜に、突き刺したーー。


「ッく!!!!?貴様!!!我に何を刺した!!

……クソ、殺しそこねていたのか!!!!」


シーザは唸り声を上げ、巨大なその身をどんどん縮めていく。

成人男性程の体格になったところで、その縮む変化は止まった。


少女の刺した注射器の影響なのか、

偉大なるいにしえの神竜は自分が一番嫌悪したいた人間の姿に変わっていた。

人の姿に変わろうとも身体中傷だらけ、片目は失われていた。

一つ違ったのは、その背中に翼は無くなっていた。


「我を、我を!!!!人間にしたのかァァァァァア!!!!」


「やっぱりワシ好みの良い男♪さ、王楽園キング・エデンに共に来てもらおーかの?シーザ。

……ん〜?お前達は、何故このワシに歯向かおうとしている?弁えろ〜?」


ニア、レシウス、スフィア、親衛隊員達は

シーザを守るために少女の前に立ちはだかる。


「久しいね、僕のこと覚えているかな?

覇剣四従徒メタトロニオス】の1人、月下美人(ナイトクイーン)よ。

申し訳ないけど、神竜は僕達とお取り込み中でね。

渡す訳には行かないな、ロリババァ?」


「だぁれが!!!ババァだって!!!!!

……って、クソミソ悪魔のレシウスじゃないか。

と言うことは、大罪人もみーっけ♪ワシちゃんついてる〜!」


覇剣四従徒メタトロニオス】の1人、月下美人(ナイトクイーン)

その年齢は、見た目からは判断しかね、ゆうに80を超えると噂だ。

彼女はその頭脳明晰さを生かして魔術の研究をし続けている。

しかし、ナイトクイーンからは黒い噂が目立つ。


獲物を捕獲する時の蛇の様に、こちらに狙いを定めている。


「【覇剣四従徒メタトロニオス】が1人、月下美人(ナイトクイーン)

小娘きゅうせいしゅの抹殺と、シーザを奪い返すぞ♪

…ワシから逃げられると思うなよ。」



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