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第6話 運命の重なり



「ねーねー!このにんげんさんぼくよりよわい!」


「ほんとうにきゅーせーしゅなの?」


「しー!アウ、イウ。この方が起きてしまうでしょ?」


『はーい。』



子供の無邪気で悪意のない会話が耳に入り、

おぼろげな視界をクリアにするよう

まだ眠い目を擦り見開く。


すぐ目の前には、こちらに興味津々な様子でこちらの顔を覗くエルフの子供2人と金髪の美人なお姉さんが居た。


「め!さましたー!」


(何この可愛い生き物……ハハ。ハハ。ずっとこんな風に平和でればいいのに。

って、イテテテテ。)


状況確認しようと、レシウスを探しに

起き上がろうとするも全身の謎の痛みに上体を起こすだけで精一杯だった。


「なぜ【神託議連団(マディス)】に楯突たてついた!!」


「我々の集落まで危険に晒すな!」


「そ、そうだ!!今すぐ出て行け!!」


「まあまあ!落ち着いて皆さん。

僕達は、救世主をぶことに成功したんだよ。だけど、可哀想なことに彼女は今大変な状況でだねぇ……。」


突如聞こえてきた怒号の数々に、不安と焦りが滲む。

レシウスは、毅然と対応するもエルフの民と私達との間にはみぞがあるように思えた。


外の騒がしさは、【神託議連団(マディス)】を敵に回したことをレシウスにとがめていることが原因なようだ。


(どうしよう………、今私が外に出ても火に油かな………。でも、どうしたら。)


私が痛む身体を起こし外に出た時だった。

白い髭を地に着くほど伸ばしたエルフの老人が現れると、民達は押し黙った。


「ほっほっほ。皆の者。この魔術師が言っていることはまことじゃよ。

とがめるならば、引き入れたわしも同罪じゃなぁ?」


「ザス長老を疑うなど滅相もございません!」


「そ、そうでしたか。貴方様がそう言うのであれば、私どもも彼女らを受け入れます。」


救世主の訪れをまだ、納得できない民も居たようだが、それでも長老の判断が絶対的な効力を持って渋々受け入れられたようだった。


(よ、よかった……。どうなることかと。)


「ほっほっほ。救世主よ、確かニア殿と申したな。レシウスと共に主屋おもやまで来なさい。そこに、魔女のお嬢さんも休ませているでな。ほっほっほ。」


「は、はい…!ありがとうございます。」


私は言われるがまま、レシウスと共に

集落の中央にある主屋おもやへ招かれた。



「ほっほ。わしらエルフ族はのぉ。

独自の生活、国と国をえさず

自給自足と自然に祈りを捧げることで恩恵を得ているでなぁ。国や世界の荒事に巻き込まれたくないと……強く思う者がおるのじゃ。

悪い事でないでのぉ、許してやっておくれ。」



集落の中でも目立つこの主屋おもやは、丸太で建てられており

招かれた部屋には様々な書物が置かれていた。

長老に座るよううながされるがまま、私とレシウスは席に付いた。


「フフ、ザス長老、それは僕達もわかっているさ。ここに来たのは他でもない。

実は、救世主が特異な体質だと言えばいいのかな。

それらについて悩まされていてね。」


「…ほぉ。特異……。

例えば、魔女のお嬢さんの厄災の特性が全てニア殿に引き継がれたことかのぉ?

それとも、寿命が縮んでおることかの。ほっほ。」


「わ、わかるんですか?!どうにか治せませんか?

………あと関係あるかわからないですが、ルフェリアに祝福を探せって言われたんです。」


「ふむ。わしには無理じゃな。

………祝福か。一体魔女のお嬢さんは、何者なんじゃ?ほっほっほ。」


エルフの侍女が、長老にとある書物を持ってきた。

そして、その書物の表紙をそっと撫でながら想いを馳せるようにぽつりぽつりと語りだす。


「ほっほっほ。

心当たりはあるでなぁ。

少しばかり、老人の昔話に付き合ってもらおうかのぉ。」




昔々、そのまた大昔。

約一万年前に世界を揺るがす大厄災に見舞われていた。

そこに一筋の光が差し込むように、救世主が

王楽園キング・エデンに突如姿を現したのだ。


救世主はあまりに強く、それでいて人々に慈愛を持って接していた。

人々から嫌われていた神竜でさえ、その慈愛で味方につけるほどだ。


人々はこの救世主なら世界を救ってくれるだろうと心から願い信頼していた。

しかし、悪戯に厄災は人々を襲い多くの生命が奪われ失われていった。


各地で大洪水に見舞われた時だった。

人嫌いの一頭の神竜は、救世主と共に大いなる祝福の力を行使し洪水から人々を守ったのだ。


そして、救世主は大厄災を収めるために

自らを犠牲にして厄災をその細身の身体に封印。

後に、耐えきれず孤独に自死してしまった。


残された神竜は、何も告げずに死んでしまった救世主をいつまでもいつまでも健気に待ち続けたのだ。

何千何万年という時が経ても、救世主が持っていた聖剣を守護しながら。




「ほっほっほ。この神竜はのぉ、今も生きる生命力の塊そのものなのじゃ。その名を、古神竜こしんりゅうシーザ。

もしかすると、シーザならばどうにか出来るやもしれぬ……。」


「ハハハハ!なるほど。

救世主、厄災、神竜。まるで、昔話が蘇ったかのように偶然に揃っていくね。

被害は少ないが、各地での厄災の報告は近年増えているのも事実。

それを知ってか知らずか、救世主の召喚をルフェリアから直々に頼まれたのさ。」


「……そうだったんだ。それならルフェリアが、何か知っている可能性はあるかもしれないね。」


思えば、ルフェリアが最初に助けてくれたことも

ただの偶然ではなかったのかもしれない。



「ほっほっほ。どちらにせよ、古神竜こしんりゅうシーザと相見あいまみえる価値はあるのぉ。

…それと、お主らにちとお使いを頼まれて欲しいのじゃ。

魔女のお嬢さんを助けるためにも、ぜひキケロ洞窟へ行って来て欲しいのじゃよ。」



「ハハハ!僕らとしても、それは願ったり叶ったりの申し出だ!ニア、ぜひともこのお使い引き受けよう。」


「うん!!」


人嫌いの神竜か。

ファンタジーでは、鉄板中の鉄板の竜との出会い。

心身共に疲弊していたが、その名の響きに心がワクワクで満たされていく。


あわよくば、仲良くなれたら背中に乗せてもらい自由に大空を滑空する妄想を想像してしまう。

実に、ロマン溢れる響だ、とてもいい。

あと、できれば怖いから寿命のデバフだけでも取り除けたらなぁとも思う。


「いい返事だ!ところで、長老。

一体何をすればいいんだい?」


「ほっほっほ。若い者はやはりフットワークが軽くて羨ましいのぉ。わしも、昔は無茶したもんでのぉ……。

おっと、話がそれたの。

霊薬を作るための輝万草キバンソウ)と、わしらエルフ達の生活に欠かせない鉱石や薬草の採掘採取を頼みたいのじゃ。」


「了解した!早速、向かおうじゃないか!」


「ほっほ。待つのじゃよ、レシウスよ。

今のままだと、ニア殿が可哀想でなぁ。

エルフ族に伝わるこのローブを授けよう。

それと、2人で洞窟は危険なのでなぁ、親衛隊の副隊長とその隊員達と共に向かうと良いぞ。」


「助かるー!やっぱり、ここを頼ってよかったよ!」


「レシウスには、借りがあるでなぁ。

それを返したまでじゃよ、ほっほっほ。」


こうして、次の目的は

古神竜こしんりゅうシーザの住まうキケロ洞窟に行くことが決まった。

どうか、このデバフが次こそは直りますように……。

心からそう願う私であった。


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