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第5話 氷王の勅命と覇剣四従徒


ニア一行が狼煙のろしを上げようとしていた、まさに同刻ーーー。


ここ白亜の城塞が目立つ王国都市

王楽園キング・エデン】の中央にそびえ立つ

立派な城には逃げおおせたバアルと兵士達が帰還していた。


ここは、まるで神がおわす選定された国。

悪を滅する光の様に神々しくも、それでいて救いがない程の残虐無慈悲な楽園。


城内の大広間にある威厳かつ神聖な玉座の最奥から感じる威圧感に、兵士達は緊張感と恐怖で足がすくんだ。


しかしバアルは恐れることなく、玉座の前に

ひざまずこうべを垂れる。

生意気な少年のあどけなさは面影も残さず、王を前に大人びた口調で淡々と告げた。



「王よ、

此度こたびの失敗到底許されるとは思いません。ここにお詫び申し上げる。

しかしながら、朗報がございます。

救世主は、軟弱者であり

ろくに武術、魔法、剣術も知らぬ素人であることが判明しました。

ご命令とあらば、いつでも奴の首を貴方に捧げましょう。」



王が答えるよりも先に、

テーブルを囲み座した3名が口々にバアルを非難し始める。


小柄な体型に合わない大きさのローブをまとう幼女は、その傲慢ごうまんさであざける。

手に持った注射器をテーブルに幾度となく刺す動作が奇妙だ。



「坊主には、殺れなかったようだね〜?

ワシなら〜、この毒薬を1本なんて言わずに50本はブッ刺して〜、救世主の身体が腐るところが見たい見たい見たい見たい見たい!!!だって、ワシのが強いもーん!ふふん♪」



その隣に座る世界一イケメンを自称している色欲の魔族の男は、

さぞどうでもよさそうに髪を指でクルクルともてあそぶ。


「女の子相手に手こずるなんて、バアルくんはおっちょこちょいだ。

…ところでボクのこの美しさに釣り合うレディを誰か紹介してくれないかナ?」



幼女の向かい側に座る、

高身長でショートヘアの彼女は短剣を丁寧に磨いていたかと思えば

暴食さながら食パン一斤をそのまま頬張り、また短剣を磨く。


食パンを平らげると、目の前に置かれた食パンをもう一斤食べ始めた。


「まっふぁふ!のほのほほ、まえっへひたのね!(全く!のうのうと帰って来たのね!)」


ピキピキとバアルのこめかみには血管が浮き出す。


「…ウゼェ、テメェらには聞いてねぇ。

それにな……王の御前だ、私語をつつしめ。」

 


王からの信頼が最も厚い王都最強の

覇剣四従徒メタトロニオス】の4人は

一斉に王へ視線を移し御言みことを待ち望む。




その琥珀の瞳には、とうに希望はなくーー。

肩まで伸びている黒髪を揺らし、王もまた視線を4人に向けた。


その視線は、まるで氷で心臓を穿つような

鋭さと痛みを伴うようで肺が凍てつき呼吸すらままならない。


いつの間にか王の魔力は、大広間中に満ち溢れ温度を急激に下げた後、天井や壁には氷柱つららができ、床は氷結していた。



しばらくの沈黙の後、

玉座に座する青年王の威厳ある声音が大広間に響く。


「バアルの過ちは、今後に活かせばよい。

しかし救世主よそものは、野放しにできぬ。

奴は、この世界オルカナサスの神に仇なす存在になりかねん。

何としてでも、神を守り抜き救世主よそものを殺せ。手段は選ぶな。」



『仰せの通りに。』



覇剣四従徒メタトロニオスの4人は、

命令を遂行するため玉座を後にした。

1人残された王は、独白する。



「……何としてでも、邪魔はさせん。

新薬の完成を急がねばなるまい。」


彼の決意は、救世主の登場でより強固なものとなった。

そして手段を選ばず、完膚なきまでに敵を倒すため孤高の氷王ひょうおうは動き出すーーー。




そして、ニア達もまた

砂漠地帯に向かって歩みを進めていた。

幸いにも、追っ手との遭遇そうぐうは免れ

ることに成功。


ニアは、エリスに背負われルフェリアはリリーに背負われていた。

2人は私達をそれぞれ背負いながら、一定のスピードを保ったまま走っているのに息一つ上がっておらず

私は肉体構造そのものが自分と違うのではと疑ってしまう。



「エリスさん、重かったら言ってね……!

代わりにレシウスさんに背負ってもらうから!」


「ハハハハ!何で僕が背負う前提なのさ。」


一番楽らくそうにしてるから………。」


「そんなことはない、僕は魔術師だから走るより飛ぶ方が楽だー!僕の方が背負われたい、フフ。」


(蔑む様な眼差し)


「そ、そんな目で見ないでくれ……。案外僕のハートはガラス製なんだから。

……あ!そうだ!!!ニアは祝福を付加された時に同時に魔女の厄災も受け継いでしまったね。

僕達にも影響してくるから、はいこれ。」



先頭を走るレシウスが投げて渡して来たのは

白い鉱石を紐に通しただけの首飾りだ。

とりあえず、変な物ではないだろうから身につける。


「……そう言えば、なんか頭の中に声?みたいなのがしてそれに代償デッドデバフがどーのこーのって言われて。

厄災だけじゃなくて、寿命が縮んでしまうらしいんだよね。」


「おい!ニア!何でもっと早くそんな大事なことを言わねぇんだ!!」


「俺も、リリーの意見に同感だ。」


「アハハハハ!本当、すごいよニア。

とことん、世界から見放されてるなー!

ちなみに、その首飾りを身につけると

生命力アップ、幸運アップで少しは君と僕達への厄災の影響も緩和されるだろう。

寿命までは、どうすることもできないがね。」



「……ですよね。」



(これが本当の極・縛りプレイってことかぁ…。…最悪だ、創造神め、不遇な扱いばかりしやがって、合ったら取っちめてやる…………。)



とは思うものの、とりあえず悲しんでいる暇はない。

まだ恩返しもできずに死ぬなんて悔しい。


そして、なぜ自分が救世主としてこの世界に呼ばれたのか。

なぜ世界から拒絶されているのか気になることばかりだ。


目先の課題は、代償デッドデバフをどう対処すればいいのかだが、

……こういう時はあーだこーだ考えるよりも、明るく前向きに生きることが今は最も重要だろう。



そんなことを考えていると、

狼煙のろしに気づいて追い付いた妖精の長と冥界の王とも無事合流を果たす。

いよいよ、エルフの住まう山岳地帯が目と鼻の先に見えて来たーーー。



しかし、妖精の長は歩みを止めてその美しい顔を歪めながら険しそうに口にする。



「……恐らく神託議連団(マディス)に目をつけられたわ。私達5人の十傑は救世主をんだ大罪人として大々的に指名手配されるみたいよ。

悪いのだけど、私が貴方達と同行するのもここまでよ。妖精達と湖が、とても心配なの。」



神託議連団(マディス)】と聞いた瞬間、

私以外の皆の表情がわかりやすいくらいに一気に悪くなった。


「…まあ、転移召喚した場所が悪かったな。

あの王都は、神託議連団(マディス)管轄下かんかつかだ。

覚悟はしていたが…、アイツらは無慈悲で残虐で容赦ない。アタシも故郷の家族や仲間が少し心配だな……。」



「…肝心な救世主の召喚は叶った。

固まって行動すると目立つ、君達の言うことも理解できるしね?

………ここは、うん。

一旦解散するとしよう!

ハデスとエリスはどうするんだい?」



「俺は、修行に勤しむとしよう。

きたるべき、戦いに備えて。」



「……右に同じく。

冥界の様子も見に行かねばと考えていたからな。何かあれば、使者をそちらに遣わせる。」



「了解した。ハハハ!そんな寂しがらなくていいさ、ニア!

僕はもちろん君と一緒だからね!」


レシウスがリリーからルフェリアを預かり

ヴィヴィアン、ハデス、リリー、エリスと合意のもとそれぞれ別行動を取ることになった。



(寂しいし、心細さはあるけど

固まって行動することのリスクも否めない。

全員が全員捕まってしまえば、それこそ取り返しがつかないもんな。)



4人の背中を見送りながら、

空が黄昏れ色に染まっていたことに気づく。



「これからてんてこ舞いになるぞー!

疲れて眠れば、不安もそのうち吹っ飛ぶさ。

……君が気になることも、君のその代償デッドデバフについても、何でもエルフ族の長老に聞いてみると良いよ。」



「…うん、そうだね。

でも正直、今も頭がパンクしそうです。」



「ハハハハ!チッチッチ。これからが本番さ。

頑張れー、ニア!頑張れー、僕ー!」


そうして、日が暮れて辺りが真っ暗になったころ魔除けの魔術と松明一つの灯りを頼りに

慣れない足場に手こずりながら山岳を歩いた。


(歩いてたらうっかり死んだりして……。イヤイヤイヤ!!

とにかく気をつけながら、慎重に行こう…………。)


もちろん山道など歩き慣れておらず、夜道は不安で堪らなかった。

加えて代償デッドデバフで寿命が縮むと言っても、タイムリミットもわからず

夜の暗闇が死の恐怖と重なり、油断すれば足元をすくわれそうだ。


たまに、転んだり怪我をするもののなんとか食らいつくように必死になってひたすら歩いた。

首飾りを装備したお陰か

擦り傷程度で済んだのも文字通り不幸中の幸いだと思った。


レシウスの記憶だけが頼みの綱という最悪な状況で

ようやく遠くの方に点々とほんのり明かりが見えた。


ようやくエルフ族の集落があるふもとに辿り着いたのだーーー。


ヘトヘトな私は辿り着けた安心感に、レシウスの言った通り何かを考える暇もなくその場に崩れ落ち泥のように眠ってしまった。


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