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第26話 ダンジョン前で運命は廻る


背後に佇むそれは、一切の気配を断ち

ニアはその巨体の影が自身に落ちるまで存在すら感知できなかった。


しかし、瞬時に鞘に手を掛け振り翳すまでの判断力の速さは常人を超えた異常さを物語っていた。

何の適正も持たずに、ただの村人並みの者が成せる技ではない。


それは、素人であるニアも理解していた。

ならば何故、そのような動きが出来たのか。

そんな事を考える隙を敵は与えてなどくれない。


巨体の持ち主は、一瞬判断力を鈍らせるも

刀身を強靭な腕で受け止めてみせた。

そして、中途半端に刺さった刀を腕ごとぶん回したのだーー。


「………ッ!!」


そのままニアは軽々と吹っ飛ばされ、4、5メートル先の木の枝にその背中を受け止められる。

その衝撃で、草木の棘が身体を傷つけた。


動けぬ、ニアを何とか手助けしようと、アテシーがその身軽さと小ささを駆使し翻弄するように巨体の周りをあちこちに移動してみせた。


「ニアに近寄るな!!」


その時間稼ぎの甲斐があって目を回した巨体が倒れ込んだ隙に、ニアは自分の近くにある草木を利用してそれで拘束したのだ。

もちろん、ほんの一時凌ぎにもなるかわからないが、今できる最低限の行動をするしかなかった。



強靭な肉体に草木の棘が刺さり、体中から血が滴る巨体の持ち主。

しかし、巨体全身を強張らせ筋肉を使って止血してみせた。

常人離れの手練れであることは明らかである、勝ち筋があるかは不明だ。

しかし、巨体は随分余裕ある様子だった。


「…ぅううぬ、見るからに何処にでもいるわっぱに見えたが……。ふん、なるほど。その刀捌きは、お主自身のものではないな?

即ち、側か……」



「いきなり襲ってきて、何を言ってるんだこの巨人は……。何が目的なんだ?」



「ふん。ワシはな、出くわした相手から有金全て掻っ攫う言わば……賊であるな。今はとりあえずそう言うことにしておこう」


ニアもアテシーも、互いの顔を見合わせてコイツ何言ってるんだとそんな表情で相手を睨む。

けれど、そんなことお構いなしに全長3メートル程ある目前の巨人はその拳をニアの刀目掛けて食らわす。


「……ハッ!!!!」


すかさず刀身で受け身を取るも、その防御が無謀であるかのように身体ごとまたも吹っ飛ばされてしまうーー。


刀身は、幸い折れなかったもののニアは泡を吹いて気絶してしまう。

アテシーは、慌てて巨人の前に立ちはだかるも

その拳に容易く身体を鷲掴みにされた。


「ッ離せ!!その娘は、何も持ち合わせてないし、金品の在処も知らない…!

ワタシはそれを用意できる!…………つまり、どういう事かわかるだろう?」


「……ほぉ?賊相手に交渉を持ち掛けるとはお主、慣れておるなぁ?

……ふん、利用価値はあるか。ならば、お主は金品を。ワシらは住処に戻っている。

夕刻までに用意出来ぬならば、この娘は殺す。

良いな?」


「……夕刻だって?!あと10時間もないじゃないかッ」


とは言ったものの、アテシーは元創造神である。

そう、つまりはこの世界の理解者(スペシャリスト)であるのだ。

武はアテシーにあるだろう。


しかし、不安要素もある。

まず、本当にニアを解放してもらえるのか。

次に、エリスが世界の構築まで干渉していないか。

これが為されていた場合、かなり参るだろう。


つまり、見た目は同じだが中身が全くの別物であるのだからーー。

今のところ、世界の構築まで干渉してはいない可能性が高いため少し安心はしているが。

一部の在り方を変える事など、創造神には容易い。


心配していても、事が動く事はない。

アテシーは、記憶を頼りに一匹でダンジョンを目指した。

そして、ニアは目覚めぬまま巨人に担がれて

彼の住処へと連れて行かれるのであったーー。



* * * * * * * * * * * *


現刻、朝五つーー。

つまり、朝8時頃を指す。


巨人にニアと交換条件で、金品を差し出すためにその在処を目指してダンジョンへ赴く。


森から走る事、約1時間ーー。

山脈地帯のとあるダンジョンへとアテシーは辿り着いた。


「確か、ここの何処かの階層に金品財宝があった筈だ……」


けれど、魔物一匹でダンジョン攻略など到底叶うは筈もない。

そして、巨人から言い渡された時刻までに間に合わせねばならず、さらに成功率が下がる一方だ。


しかし、簡単に諦められる訳もなく

アテシーは熟慮に熟慮を重ねてとある決断を下すーー。


「ッコレしかない!!」



ダンジョンの洞窟入り口にアテシーが到着して、30分程経過した時だった。

そこに、二人組の男女が正にダンジョンへ入場しようとしていた。


アテシーは、計画を実行へ移した。


外套がいとうに身を包んだ男が、アテシーを発見するまでそう時間は要しなかった。

それはそれは目立ち、なおかつアピールせねばならない立場の魔物はそれこそ何でもやるのだ。


外套を着ている男が、アテシーの首に吊る下げられた木板の書かれた文字を読み上げた。


「んーと、いのちをねらわれてます。

たすけてください……?!だと」


そして、もう1人の女性は素通りしようとしていた。

男は、待てよとその足取りを止めて哀れな魔物をじっと見つめた。

それはそれは、もう可愛らしいうるうるとした大きな瞳で精一杯の憐れみを醸し出した。


「……うっ、こんな風に見られたら流石のお兄ちゃんも見放す事など出来ない!何せ、俺はこう見えても医者の端くれだからな!救うのが医者の仕事ダァァア!」


「……ハァ、バカ兄貴。

魔物は置いてく、ウチらが出来ることはない。

ウチらには、ウチらがしなくちゃならないことをやるの」


「そうは言うがな……。

全くカイルは、冷徹だ。

まあ、そんな所もお兄ちゃんは好きだけどなっ!」



アテシーは、引き当てた。

いや、運命がそうなるように世界がそれを自然と手繰り寄せた可能性も拭いきれない。


アレンとカイル。

彼らならきっと、ニアの助け舟になる筈だ。

そう確信したアテシーは、必死な剣幕で兄の方のアレンの足元に縋り寄った。


「お願いしますぅ…!!!

仲間の1人の命が懸っているんですッ……!!」


魔物が喋るなど思いもしなかった2人は、目をまん丸くして互いの顔を見合わせた。


興味を抱いただろう所を、離さないために

彼らが一番欲しい物を言い当てる。


「ワタシは、このダンジョンに詳しいのですっ!

お2人さえ良ければ、ご案内致します!

例えば、宝の在処や特定の魔物の階層もお手のものです」


最初はまるで興味なかった妹のカイルも、

アレンも2人して興味津々で食いついてきたーー。


「ふーん。いいね、ウチらはギルドからの要請で石化する蛇頭の人型魔物。難易度、SSSトリプルエスメデューサの討伐をしたいの。

どの階層に潜伏しているかわかる?」


「もっちろん!ワタシの記憶が間違いでなければ、第52層の最奥にいる筈です!」


アレンが顎に手を添えて、値踏みするようにアテシーを見据える。


「なるほど、仮にお前を信じるとして……。

それが間違い、または俺たちを陥れる為だった場合どうする?」


「仲間諸共殺してくれ、仲間の居場所を先に伝えよう。

3メートルある巨人族、自らを賊と名乗る。

ここから走って1時間。森の外れに大河が流れていてその付近の住処で捕まっている」



「仲間の居場所に、巨人族ときたか。

はぁ、嫌な事に俺にもその巨人に心当たりがある。

何故なら、俺も多分同じ奴に拉致られたからな…だいぶ昔だが」


まさか、同じような状況を経験した人物に会えるとはなんたる奇跡ラッキー

アテシーは、その嬉しさに思わずアレンに抱きついた。


「うああ!奇跡だ!

どうか、お願いだ…………。ワタシは何でもする、だから残り8時間で仲間を救って欲しい」


かなりの無茶振りだろう。

無礼も承知で、アテシーは真剣な面持ちでアレンから離れるとすかさず地面に額を擦り付けた。


今の自分に出来る最大限の敬意を持って、

残り猶予のない中、1人の人間を救うために必死に魔物はそのこうべを何度も打ち付けて擦り付けたーー。

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