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第24話 一筋の兆しは吉か凶か

ニアが小さい魔物に聖刀を構えれば、その小さな体はみるみる震えていく。

ハッとして、刀を持つ手が緩んで

そのまま鞘に収める仕草さえ手慣れた手つきで驚きが隠せない。



この世界に来てから、刀などまともに振るってはいないし、誰かに習った訳でも無し。



いや、今は一旦置いておこう。

何せ、この魔物が自らを元創造神アテシーと名乗ったのだから。

そちらの方が重要である。



「………アテシーと名乗ったな。

本人なら、聞きたいことがある。

………なんで、私のためにこの世界を繰り返すだなんてことしたんだ」



魔物は、愛くるしい瞳をパチパチと瞬かす。

そしてさも、当たり前かのように告げるのだ。



「……信じてもらえないかもしれないけど、君を幸せにしたかったから。

歴代、救世主はこの世界に来てしまえば 必ず同じ末路を辿る。

厄災をその身に封じ、自決するしか未来を掴めない」



「エルフの長が話してくれた一万年前の話が、繰り返されてきたってことなの?

…だとしても、私はそんなこと望んでない!!」



魔物はやるせなさに悲しげな表情をして、私に背中を向けた。



「そう、かもしれない。

それでも、あの時のワタシは悪魔でありながらも君の死ぬ未来を何とか阻止したかったんだ。

それが、こんな結果を招いた事は………死んでも償いきれないけど」



「………………………」



「君にこの命を捧げることで役に立てるならまだ良かった。ワタシは取り返しのつかないことをしてしまった。

………本当に、申し訳なかった」



「…………ふー。

もう良いよ。本当に悪気はないみたいだし。

でも、許してはあげない。

もし、どうしても許して欲しいなら今度はちゃんと私に協力して」



魔物はこちらを振り返る。

その瞳は、涙で溢れており今にも鼻水は地に着きそうな程だった。


(なんだ、そんなに思ってくれていたのか。

なら、出来れば拒絶なんてしないで欲しかったな………)


「ごっ、ごみぇんなしゃぁあ…!ぅうううう!」



つい私はアテシーを抱きしめて、その小さな背中を優しく撫でていた。

落ち着くまでアテシーの話を聞くことにしよう。

責めたのは自分だが、

分かり合うには話し合う以外ないのだから。



それから、アテシーと夜が明けるまで

彼女から事の経緯を話してもらった。



元々悪魔人である彼女のことを、私が助けた事。

救世主の責任を負うべく、私が独りで自決した後

アテシーは創造神の権能を奪って私を救おうとした事。

私を愛していた事。

私を何とかして救いたかった事。



全部ーー。

もちろん語りきれないだろう。



「ワタシは、約90回程この異世界を繰り返してしまったから。

それで本来あらねばならない歴史に歪みが生じたのかも……強制力か。はたまた神の差金か。ついにエリスが現れたんだろうね」



「……きゅ、90回!!!!?

そんな繰り返してたら、普通は理性も保てなくならないの?

てか、以外と他の神様って見逃してくるんだ」



「今は時間に干渉できる神が居ないからねー。

ワタシは苦ではなかった!だって、少なくとも君が笑っていたからね!」



寝ずに、いつの間にかアテシーが炊いた火を囲んで日が昇る頃まで駄弁っていた。

こんなに、誰かと話したのも初めてであった。



壮絶極まりないアテシーの話は、私への愛に溢れている。

きっと、私の事を本当に助けようと自分なりに必死だったのだろう。

それが正解不正解はあったとしても、

愛した人を救いたい一心での行動とその覚悟は尊敬できると一旦は思えた。



「アテシー」


「なっ、何だい?!

もしかしてワタシを火炙りにする?!」


「そんな物騒な事しない!

………正直さ、もう戦いたくないんだ。

でも、エリスは私を憎んでるみたいだった。

嫌でも立ち向かって、解決しないとその前に私が壊れてしまう」


手を握りしめて、揺れる炎を瞳に映す。

そして、一呼吸、もう一呼吸する。

戸惑いながらも、しっかりとその決意を、覚悟を、示すためにーー。


「アテシー。私と一緒に、この世界を終わらせて欲しい。この悪夢を断ち切るんだ。

そのために、協力してくれ」



やっぱり、アテシーは悲しそうにまた泣きそうな顔をする。

そりゃそうだよな、だってそれは自分の今までの行いを否定されている様なものだから。

でも、いずれ落とし前を付けなければ

後にも先にも待っているのは絶望だけだ。



「ワタシは、この過ちを君が望まないと言うなら喜んで終わらせよう。

ワタシが招いた種だ。

それでも、君が幸せになれる未来が訪れる様に君と共に最善を尽くすと誓おう」



アテシーは、小さな体で忠誠を誓うように跪く。



「ありがとう、そう言ってくれると思ってた!

ちなみに、この世界の仕組み(ループ)を止めるにはどうすれば良いかアテシーは心当たりある?」



そう、問題はどうやってループを止めるか。

エリスを止めるかだ。


ややこしいことに、エリスは恐らく

創造神の権能で自らを救世主と位置付けたのだ。

そんな相手に敵うのか定かではない。


不安な私の心を払拭する様に自信に満ちた顔付きでアテシーは声高に放ったーー。



「あるよ!まずは、エリスを打倒するために君が力を付けなければならない。

今の君は、村人A程の実力で救世主の力もないし、ループが効いて祝福も、厄災もデバフも無い」



「え?!やっぱり、普通の人間くらいには戻ってたんだ?」



なるほど、だから魔物であるアテシーに刀を向けても一応は攻撃が通りそうな感覚があったのか。

一度目は、攻撃がそもそも通らないとか絶望だったからな。


「……結局振り出しに戻ってきただけか………」



しかし、そんな私の置かれている状況を理解しているにも関わらずアテシーは意気揚々だ。



「んーん!エリスは致命的なミスを犯した。

それは、自分を救世主に位置付けたこと。

それを、上手く利用しない手はない!」



「………?な、なるほど」



「うん。つまりゾディアスと同じ事をするんだよ。君を、何としてでも神へ昇華させる。

君の寛大な器と、無条件の愛を持ってすれば

きっとその道は拓けるだろう!………たぶん!」

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