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第18話 聖女の祝福

大魔法

祝福の施し(ベネディクトィオ・エレモシィナ)。

王都を覆う聖母なる威光は、

全てを失った救世主へ

その精魂尽きるほどのチカラを注いでいく。


聖女リリーは、ニアのその手を強く握り締めた。


「己の全ての力を、祝福へ転じる。

享受者、ニアへ。

限り無く、代償を最小限へ。

………………完了クリア。……ぅぐっ」


途中、無理を強いていたリリーは

立っていられず膝を付いた。


しかし、すぐに自分の足で

立ち上がるのだ。

その瞳には揺るぎなき

決意の焔が、色濃く灯っている。


「……次、に!!

前術者、魔女ルフェリアの厄災と代償を打ち消す!!

………ッ完了クリア!!」


祝福が祝福で上書きされる時。

その代償デッド・デバフもまた、

新たな術者のものに上書きされるのだ。


確かに、ニアから厄災の粒子は消え去った。

しかし、リリーの顔色はとても悪い。



「は………。障害発生……!?

創造神干渉により、短命は継続………ッ。」



それでも、やり抜かねばならない状況は

変わらない。

苦し紛れに、聖女は唇を噛んだ。



「…………。

祝福付加に辺り、代償(デッドデバフ)の強制。

これを無効化する。

………失敗エラー

代償デッドデバフの強制付加、完了クリア

……享受者ニアに、夜の活動制限および

罪の清算の代償を付加。

これより、聖女リリー享受者ニアとの間に契約を交わし遂行します」



しかし、ニアに祝福がうつるあと一歩手前ーー。


鳴りを潜めていた、双蒼竜ゾディアスの喉元に氷柱が発生していく。

そして、竜が息を吸うと、大きく喉が膨れ上がるーー。


(これ、もしかして。

怪獣が映画で放つ、あれみたいじゃん……。

なんだっけ…………。こんなのどう対処すれば良いんだ……!)



「ッ今度こそ!!守る!!」


2人を守るために、バアルが盾となり前へ出る。



今まで守り抜いてきた王都。

信じ敬い、この剣と心を捧げた王へ。

これが本当の訣別の儀であるーー。


「もう間違わねぇ!!

オレは、オレの守りたい者のために。

戦うんだ……!」


バアルの背中には、迷いなど一つもなかった。

無条件の愛を、教えて貰えたから。

本当の意味で、生まれ変わる事が出来たから。

もう、恐るものは一つもないのだからーー。



「誰かを傷つけるためじゃなく、誰かを救うために!

…オレは、この大剣を振るう!!

王都の守護者として

ッこの身を捧げん……!!!」



膨張し過ぎた喉は、栓を切ったように

冷凍ブレスを放ったーー。


砂漠を超え、山脈をも巻き込み

地上を凍てつかせていく。

広範囲へ放たれたブレスは、バアルにも直撃する。


「ウオオオオオォォォォ!!!!!」


大剣と身一つで

背後にいる仲間を守護する。

ジワジワと彼の身体は凍てついていく。

しかし、一歩も引かず。

怯む事もなかった。



「…ッぐ!!

オレは、この大剣に全てを賭ける!!

赤雷よ導け(リード・ライトニング)!!!」



全身全霊をかけた

雷鳴は、竜を穿つーー。



「ギュァァァァァ!!!!!」



穿たれた赤雷は、竜の強靭な身体を

怯ませた。

ブレスが止み、隙が出来る。


その代償は、あまりに大きい。

バアルの身体は、二度と動くことはなかった。



リリーは、心の底で仲間の功績を賞賛する。

次は自分の番であると決意に変え、

熱意を胸に詠唱を紡いでいくーー。



「……聖女リリー、享受者ニアとの間に契約を交わし、聖女の祝福を遂行する…!!」



リリーは、誓いを立てるよにニアの頬へキスを落とす。


その瞬間ーー。


凍てつく大地に、天からの光が降り注ぐ。

光の粒子は、ニアを覆い隠す程に溢れた。

まるで、命をかけた仲間とニアを祝福するように。

温かく、優しく、心地良く。

ニアの心をも照らした。


(ありがとう……。リリーさん。

こんな自分に、全てを託してくれて。)



リリーもまた、その場で凍てつく。

しかし、その表情は少し安堵しているようだった。


きっと彼女は、最後の一瞬すらも

私達に希望を与えようと微笑んでくれたのだろう。

彼女は凍えそうだった、ニアの心に確かに火を灯してくれたのだ。



しかし気づけば、アウとイウも

逃げ惑っていた人々や兵士達も凍りついていた。

王都で唯一動けているのはニアとアレン。

そして、怯んでなお動けないでいるゾディアスのみだ。



ニアは、ゆっくりとその瞳を開いた。

輝き宿るは、リリーと同じ翠色すいしょく


「……ゾディアス。

私は、貴方を許せないよ。

皆を護れる力があって、何故それで傷つけるんだ!」



民も味方も関係なく、巻き込んだ王が許せない。

怒りは、力に変わり

聖女の祝福が、ニアの背中を押す。



絶望を切り裂くために、残されたシーザの刀を拾い上げた。


アレンは、妹を庇うため凍てつくままに動けずにいる。

しかし、彼も意を決しついに妹を手放した。


「……。

俺もようやく覚悟できたよ。

おい!ゾディアス、これで2対1だな?

……降参してもいいんだせ?」


ゾディアスは鋭い眼光を飛ばし、

まるで脳内に直接語りかけてくる。


「……フ。

それで、我に勝ったつもりか。

しかしだな。

このままだと、我が引き金で氷河期に入るだろう。

この冷却の吐息によってな」


「……なにを、言ってるんだ?」


「……噛み砕いて言わねば、わかるまいな。

つまり、我が大厄災の根源となり

一度、この世界を滅ぼすのだ。

……厄災をもって、厄災を打ち払うには

こうする他ないのだから。

多少の犠牲は、致し方ない」



(つまり、氷河期を強制的に発現させることが目的なら…。

後はただ、その時を待つだけということになるの?!)



そんな事、本当に叶うのか。

人類を、世界を巻き込んだ大犯罪じゃないか。

神でもない限り、そんな力

普通の人間が出来るわけ………。


いや、できるのか。

そのための古神竜の血だったのかもしれない。


例えば、

神竜の血を、体内に摂取し人の性質を変化させ

神に昇華出来るとすれば……。


ナイトクイーンは、既に神竜シーザを人にしてしまう薬を開発していた。

ならば、逆も然り…ということになるのか。



「……貴方が手に入れたのは、神になる力なのかッ!?」



ゾディアスは、口角を引き上げた。



「……ほお?

我の理想に気づくとはな……。

けれど、全ては理解できていぬようだ。

それも、そうであろうな。

……誰に理解される訳がないのだ。この苦しみも孤独もな。」


「ルフェリアという家族が居たじゃないか!!

ッなんで、どうして!!!!

ルフェリア(実の妹)までもこんな酷い仕打ちを。

仲間も民も、誰も彼もを……。

そんなもの、理解されっこないだろ!!!」



双蒼の瞳は、こちらを険しく睨みつけている。

一瞬、怒りを露わにしたゾディアスの

口から凍える程の冷気が放たれニアとアレンを襲う。


「ッ貴様に、何が理解わかる!!!!

……いや、駄弁るのはやめだ。

命を賭してまで与えられたその祝福で、

我に己が正しいのだと示してみるがいい。

……貴様の足掻きは、全て無駄であるがな。」



ニアは、双蒼竜を翠の瞳でゆっくり見据える。

そして、大厄災を断ち切るために刀の柄を両手でしっかりと握り締めた。

アレンは、槍を構え臨戦体勢を取る。


「……いつでも行けるぜ。

何としてでもゾディアスを止めるぞッ!!」


「うん。

……何としてでも、貴方をここで倒す。

行くぞ!ゾディアス!」



しかし、突如となく激しい頭痛がニアを襲うーー。

視界は歪み、耳鳴りが酷い。


「ッぐ、ぅぅあ」


頭を切り離したい衝動で、

頭皮に爪を立てるが、痛みからは逃れられない。


暫くして、ゾディアスではない別の何者かが脳内へ語りかけてきたーー。

それは、シーザのものとも違った。


【あー、あー。テステス】


【お!聞こえてるようだね!良かった良かった】


この状況に似つかわしくない明るい声で

ソレは、私に告げる。


【救世主、初めまして。

今回は特別に、ワタシが祝福の案内をするよ!】



言っている意味がわからず、1人でに混乱する。

アレンが、心配そうにこちらの顔を覗く。


しかしゾディアスだけは、その正体が理解出来ているようで

その瞳は、怒りだけを映していた。



【おー怖いねぇ!ゾディアス。

……あぁ、ワタシの自己紹介がまだだったよね!】



【ワタシ、この世界の創造神ことアテシーと言いまーす。よろしくねっ!】


ソレは、名乗った。

自らをこの世界の創造神アテシーであると。


これは、何かの前触れか。それとも吉兆か。

ニアが世界から拒絶されている、全ての原因。

私が、弱い理由そのモノ。


ニアが唯一理解出来たのは

それとのファーストコンタクトが、自分の人生で最も最悪な状況下であるーー。

ただ、それだけだった。

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