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第15話 狂気の舞踏


重力が身体を揺らし、黒翼が空を裂いた。

煙と瓦礫が弾け、兵士たちが吹き飛ぶ。

ルフェリアは、反射的に結界を張った。

その刹那、ジルバーナの爪が彼女の光を裂くーー。


「オオオオオオ!!!」



ルフェリアの結界は破られるも、

ジルバーナの胴体にシーザが回し蹴りを一発食らわせた。


その衝撃から砂埃が立ち上がるーー。

悪魔人はシーザの足を掴んで離さない。

悪魔は、不気味に笑みを浮かべていた。



あろうことか、シーザの足を掴んだまま円を描くように回り出す。

勢いのついたベーゴマのように、砂埃を巻き上げ

シーザの身体を壁に叩き付けるーー。



「……ガハッ!!?」



その隙を利用し、ルフェリアは光魔法の光線を浴びせる。

背後には拘束魔法でジルバーナを捕らえたレシウスが遠方へ投げつけた。



「ニア!!!活路を開いた!

今のうちに城内へ行くんだ!!僕らも後で向かう!」


繋がれた光の拘束具は、投げつけた方向からレシウスの手元でピンと張り詰めた。

しかし、すぐにグラッと体勢が崩れそうになる。

まるで、ジルバーナ側に引き寄せられるように少しずつ引きずらていく。



「……っ、コイツはなんて、力だ!!

くっ、早く!!行くんだ!!」



ギリギリで耐えているレシウスに急かされ、

ニア、バアル、アレンは地下牢を目指し移動を開始した。


迫り来る兵士達を、

バアルが大剣で足止め。

勢いよく薙ぎ払えば、ドミノ倒しのように雪崩れる。

後方で、アレンの器用な槍捌きが兵を峰打ちにしていく。


先頭を行くバアルの後を追うように、地下への螺旋階段をただひたすら駆け降りる。

2人の間に居るニアは、バアルへ疑問を投げかけていた。


「…バアル、王様は一体何が目的なの?

神託議連団(マディス)っていう組織に、逆らえないから?」


「……そう、だな。王は、意味のない争いは好まないお人だ。冷酷ではあるが、慈悲を知らぬ方ではない。最初に戦った時も、世界を牛耳るあの神託議連団(マディス)の命令だった。逆らえないというよりは、逆らわない……があっているな。」


一体、何のために。

アレンが、閃いたと言いたげに

拳をポンと手の平で叩く。


「王都を守るため……の可能性もあるだろーな!

逆らって敵に回すより、味方の駒である方が動きやすい。

これならあえて、逆らう必要はないってもんだろ?」


「……うーん、そうなの、かな。

厄災の研究…古神竜の血液……。

何が目的で研究を、するんだろ……。」


降りついた先には

頑丈な木材で作られた大扉が行手を遮っていた。

その向こうからは、危険で嫌な寒気を感じる。


バアルが大扉を開ける前に、

ニアとアレンに向き直り神妙な面持ちで

ポツリと吐く。


「オレも、直接聞いたことねぇ。

ただ、王が民やオレら覇剣四従徒メタトロニオスを欺くような人ではないことは確かだと思うんだ。

きっと、何か事情があるに違いねぇ……。

…入るぞ。念の為、気いつけろ。」


ひらけた先は、一面の檻。

日が差し込まず、陰湿でポタポタと

天井から雨漏れしている音が心をざわつかせる。


異様な匂い、慣れない雰囲気に、ニアは嗚咽を一つ。

けれど、気分を害している暇はない。

頭を振って、深呼吸に徹する。



そう今、兵士達に囲まれれば袋の鼠だ。

仲間が時間を稼いでいる間に、何としてでも、救出しなければならない。


辺りを少し見渡していると、アレンのけたたましい声が鉄の格子棒に反射するように響く。


「カイル!!!お兄ちゃんが今助けてやるからなッ!……お前ら、少し離れていろよッッ!!」


アレンは、問答無用にかけられた施錠を拳で破壊したーー。

そこには、囚われた聖女リリーと彼女の側でうなされているエルフ族の双子が蹲っていた。


「うぅぅッ。」


ニアの身を案じてポーションをくれた、アウとイウの弱り果てた姿がそこにはあったーー。

2人の身体には、厄災の粒子が漂う。

ニアは、その光景に叫ばずにはいられなかった。


「ああ……、アウと、イウ!!

なんで、なんで。2人がここに……?!

……もしかして、ポーションを渡してくれた時に、私に抱きついたから……?」


呼吸が上手くできない。

ハッハッと短く酸素を吐く動作が繰り返され、過呼吸気味に陥る。


リリーが、アウとイウを優しく撫でて

それを否定する。


「ニア……。落ち着け!

仮にきっかけはそうだとして、

厄災の効力が強まったのは王都に来てからだ。

……気に病むなよ。

けど、時間の問題かもな。」



顔と腕や手に、厄災の侵食の跡が痛々しいアウとイウ。

2人に近づくも、触れることを躊躇する。

その侵食を深めてしまうことが、とても恐ろしかった。

心が痛いほど締め付けられる感覚に、

拳が震えた。


また何もできないのか。

自分を呪う言葉が、吐き出そうになる。

それを言って何になる、と。血が滲むほど、唇に噛みついた。


「…ッ」


バアルは、どうしてやることも出来ないが

それでも何かしないとニアがどこか遠くへ行ってしまいそうで、怖くて、でも何とかしたくて不器用にその背中を撫でた。



一方、アレンは姿が見当たらない、妹のカイルの名を叫ぶ。


焦っていた。

考えないように必死だった。

なぜ、聖女らと同じところに居ないのか。

なぜ、ニアと似ていた妹が囚われたのか。


ーー実は、もう。

そんな言葉が、情景が幾度となく頭によぎるも

何度も何度も否定した。


「カイルー!!!どこだ…!!

兄ちゃんが来たぞ!!居るなら返事してくれ!」


リリー達とは別の部屋の壁際。

光は、一切なく。

何かが滴る音が、耳と脳に底知れぬ恐怖を与える。

仄暗い、その奥へと進んだ。



アレンは、硬直したーー。

両腕を手枷で繋がれた妹の姿に。

カイルから精力を感じなかったことに。

怒りと悲しみが、込み上がる。

一体、妹が何をしたというのか。

秩序を重んじ、平和を望み、人を助ける事。

それが生き甲斐の、不器用で優しいカイルの姿と

沢山の思い出が浮かんでは消えていく。



ーーそれを、全て真っ黒に侵された。



全身に、切り刻まれたような痕。

身体は、黒く腐敗したように変色。

血鉛の匂いと痕は、一朝一夕のものではない。

何度も何度も、時間をかけた痕が

日を重ね拷問されたことを彷彿とさせた。



「…ぃ、……さ。」



急ぎ、妹の口元に耳を傾ける。

息が絶え絶えだ。

今にもその呼吸が無くなりそうだ。

混乱する頭を、必死に現実に戻す。



しかしカイルは、血に塗れたその瞳をゆっくりと兄へ移す。



「……カイル!!!!!!

兄ちゃんが助けてやる!!!絶対に!絶対にだ!!」



「……て。きゅう……せ、い……ゅ……。」



意識を完全に失ったカイル。

震える手で抱き寄せるアレン。



ガシャーン!!!


その静寂は1人の暴食人によって、壊されるーー。


死神のような、彼女の色の髪が

闇に誘うように揺れた。



カツカツと、静寂な牢の中にヒールを鳴らす。

包み紙から出した、残り少ないハンバーガーの破片を口に放り込む。


「…あむ。………ごくん。あぁ、最後の一口食べちゃった。

あれ?救世主が……2人?1人は、死んでる…。

まあ、全員殺せば……解決だよね?」



暴食人はその鎌を、高く掲げる。

音もなく、四方八方に振るわれた鎌の斬撃は

待てども、何も起こらず。



一番最初に異変に気づいたのは、アレンだ。

妹を離さぬよう抱きしめる腕にジワリとした感覚。


一つではない。

複数の傷が無数に、浮き出てきたのだ。

次にリリーが、その声を上げるーー。


「ッ防衛魔法展開!!!

神霊よりたまわりし、奇跡を!!

此処に繁栄と瑞光ずいこう在らんことを!

聖者の守護神ホーリーガーディアンディティ!」



キーンと、耳鳴りに似た反響音がつんざくーー。


その数秒後。

荒音を立てて、檻の形成を保っていた格子棒が全て切り刻まれていた。

その攻撃を、アレンは妹を守るために背中で受ける。

リリーの防衛魔法は、兄妹まで届かなかったーー。


背中は切り刻まれ、皮膚が開いた。

血が溢れでる。

怒りと悲しみまでもが、溢れるように。

たった1人の家族を独りにはしなかった。




暴食人は、何が面白いのか。

鎌を楽しげに振り回す。



「ふふふ、あ、これは、名乗らないと雰囲気的にだめ……だよね?

覇剣四従徒メタトロニオスが1人、暴食のユムリ。痛めつける事と、食べる事がユムリの趣味だよ。仲良く…してね。」


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