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第10話 父なる神竜、余命一年


シーザは抜刀した、刀身を構え

静かに瞳を閉じた。

集中し、ただただ己の心を無心に徹する。


風が、通るように人々の思いも

日々繋がりと消失を繰り返している。

救世主とのえにしを手繰り寄せた。

共に戦い抜いた友の存在、繋がり、側にいてくれた温かみを、思い出させてくれたニアへ恩を返すための太刀筋。


その剣筋は、ただ力任せではなく

軽やかに俊敏に、そして確実に。

火花が散り刀鳴りが夜気を裂き、ナイトクイーンを追い詰めていく。


「……ぐっ!!!竜の力も使えない状態でっ!

ッ!この素早さは、感心するさね?

無駄の!…ない動きッ!!ワシますます好きになってしまうの。」


その剣技を受け流せずに積み重なった衝撃が、ナイトクイーンのきびすを土にめり込ませた。

その切先が、彼女の肌を滑る度鉄の匂いが鼻を通じ、反動で膝に痺れがきたす。


ナイトクイーンが魔法を繰り出すよりも早いその剣筋は、彼女のローブを切り裂いたーーー。


「フッ、こう見えても、我が最も尊敬している剣士を間近で観てきたものでな。見様見真似ではある。

この力、もう二度と、大切な者を無くさぬために、我はそのためなら人となる事も、もういとわぬ。さぁ、貴様はどうするのだ?」


刀の切先はナイトクイーンの喉元に狙いを定めている。

レシウス、スフィア達も彼女の背後に回り込み仕留めるためそれぞれが武器を構えた。


「フフッ、ウフフフフフフッ!!!

こんな、ワクワクしたの久しぶりだの〜♡

でもー!量は少ないが、竜血は十分♪

鍵は3つ…今日はその内の一つ目。

次は心臓が欲しいなぁ…なんてね!ワシちゃん撤退〜!

今度あったらミ・ナ・コ・ロ・シ!バイバイ♪」


血液が入った小瓶を舌で舐めながら、見せびらかしたかと思えば

魔法で火花を散らしながら煙幕を焚いて姿をくらませた。


カランと刀剣がその手から落ち、

神竜シーザは力尽きるようにその場に伏せた。

しかし、すぐに立ち上がりよろけながらも

ニアの元へと向かった。


「お主の……ッその痛みの分くらいは、

あのアバズレに、食らわせられた……だろう。」


「神竜、貴方も無理をしない方がイイだろう。

少しそこに居てくれ、2人に回復魔法を施すからね。」


レシウスが、詠唱を唱えた後

シーザと、ニアの傷や怪我が癒えていった。


「魔術師、エルフ達、そしてニア、礼を言う。

我は今日から、この娘の父になろうと思う。

望みあらば、出来る限り手伝おう。」


「絶句。」


「シーザ殿!!それは助かる!

僕らは仲間の1人を癒すために必要な、輝万草キバンソウの入手を手伝ってくれるかな?」


「娘の仲間の願いとあらば、尽力しよう。

着いてくるといい。ニア、もう折れた部分は大丈夫なのか……?父に何でも申せ。」


「絶句」


「アハハハハハ!

ニアはまーた、変なのに気に入られてしまったねッ!」


「急だなッ!

もう、誰も突っ込まないから自分でツッコむよ!!何でいつの間に私娘になってんの?

竜の腹から生まれた覚えないっつーの!」


「まあ、良いじゃないか。

血の繋がりよりも、心の繋がりが大切だと私は思うぞ!ニアの父上よ、それと高値で売れる鉱石の在りかも教えてもらえると助かる。」


「スフィアまで?!!

どの流れで親子関係築けたのか不思議だよ!嬉しいけども!!」



「我の救世主に何処どことなく似ているのでな。

ローブもお揃いだ。」


「完全に他人の空似だよっ!ローブは、本人の物だから!」




そうして、月下美人ナイトクイーンは撤退した。

彼女の目的はまだ、闇の中だ。

一体、神竜の血を何に使用するのか。

末恐ろしさを感じながらも、

無事にスフィアを治すための霊薬に必要な輝万草キバンソウの入手。

そして、エルフ族の生活に必要な鉱石などを採掘し終えた一行は和気藹々(わきあいあい)と集落へと帰還するのであった。


その笑い声が響く刹那、冷えた夜風がその首筋を過ぎた。

帰路の道を歩みながら見上げた夜空には、

雲は流れず、ただ月だけがこちらを見下ろしていたーー。




* * * * * * * * *



長老が早速、入手した輝万草キバンソウを使い霊薬を作り出すも、完成まで時間が要るようだ。


その間、ニアの代償デッドデバフ、そして祝福とは何か。

その真実を知るために、一行はシーザに尋ねるのであった。


「シーザ。

私のこの体質について、そして祝福とは一体何なのか。貴方の知っていることを教えてくれないかな?」


「ふむ。我が娘の頼み、断る父親はいない。

……厄災か、その首飾りのお陰か、効力は触れた者、特にニアよりも下手したてでない限りは発揮せぬだろう。例えば、子供でもない限り。」



少し安堵し、そっと肩を撫で下ろす。

得意げに誇るレシウスは、そのにやけ面が隠せていなかった。

いや、隠そうともしてはいないだろうが。


次は、そう、寿命のデバフだ。

これは、誰もが究明できず、また干渉も出来なかった。

まさか、いきなり生命力が奪われて

余命数年です、なんてことは無いだろう。

ニア本人含め、楽観的に捉えていたのだ。


今は、まだ元気に見えるーーだからこそ。



「……寿命が、縮んでいるな………ってあと………、1年………だと?!

おい、魔術師!!!!これは一体どう言うことだ!!

本来、何人なんぴとたりとも干渉できぬはずの救世主の特性は、皆無。

………そうか……あの時、既に干渉されていたのか!!!

………その特性と、本来あるべきはずの強さを、全て"いじられておる"。」


蝋燭ろうそくの火の揺れが、

危うく消え入りそうな程風にさらされる。

ここにいる誰もが呼吸を忘れ表情が凍てついたーーー。



スフィアは、口を手で覆い美しい顔を悲痛に歪ませた。

レシウスは、ただただ何も発する事ができず

悲しみとやるせなさを誰にも悟られぬよう伏せ目がちにうつむく。


ニアは、悲しいような表情をするも

皆に心配かけまいと必死に、笑顔を貼り付けたーーー。


「父が、必ず治してやる!!

我の力全てを使ってでも!必ずや!!

もう二度と、失わぬッ。」


早急にシーザが何者かの干渉を上書きするため、ニアへ手をかざし、

2人の生命力を繋ぎ合わせ寿命の短さを変動させようと試みる。



「僕も手伝おう。

これはかなり古い呪術の類………。

人類の到達できない領域のわざだ。

……こんな、身体の神経一つ一つに直接影響を与える魔法があるのか……?

届かない……のか。クソッ。」



けれど、生命力の強いはずのシーザの干渉すら、いとも容易く跳ね返されてしまう。

とても古く、巧妙かつ複雑な魔法がニアの身体中に刻まれているようだった。



「誰なのだッ、生命の神秘をおかす真似をできる者はッ!!!

神でなければ…………出来ぬわざなのだぞ……。

…………あるいは、まことこのせかいが、拒絶しているというのか。」




「……そうよ。

救世主は、拒絶されているわ……。

この世界から、創造神から。

……祝福は、神罰に抗うための人の【願い】の結晶。

そしてニアを活かす唯一の策なのだから。」



長老の住まう主屋から、その麗しく凛とした声音を放ったのは、完全に回復しないままの魔女ルフェリアだった。


まだ本調子でない、ルフェリアを追うように長老や世話係のエルフが駆け寄ってその身を支えた。


「魔女のお嬢さんや、急に起き上がったかと思えば……突然外へ出るものだからのぉ。

あまり、無理をするで無い、ほっほっ。」


「……ごめんなさい。

ニアが、ニアが心配だったの……。

でも、でもね。ずっと感じていたわ。

貴女の思いを、偉いわ。ニア。」


「………う、うん!!!

本当に目が覚めてよかったよ!!

その、私の身体の状態は……あんまりよく無さそうだけど………、あはは。」


「………いいえ。

まだ手段はあるのよ、厄災から人々を救うの。

それは、いずれ大きな祝福となるのだから。

そして、一万年前の大厄災は、自然発生のものでは決して無い。

厄災は、人々の悲しみ苦しみと怨念の具現化。

人の持つ力を恐れた、創造神からの神罰そのもの。…………機は、熟したわ。」



災厄の影の魔の手は、もう彼らに迫っていたーー。


猶予は、残り十二ヶ月。


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