ただ一人の魔物プレイヤー
元の視点に戻ります。
「あっ!起きたね。久しぶり。剣姫の姫さま。」
私が彼女に挨拶をすると彼女は驚いたような顔をした。
「ミツミェール!?」
彼女は口を魚のようにパクパクさせている。
懐かしい。
βの頃もよく驚いた彼女は口をパクパクさせていた。
懐かしい思い出を思い出しながら、今の状況を整理する。
住処に帰った私は住処に一人のプレイヤーを見つけた。
それがアリエルだ。
長身ポニテ銀髪エルフ剣士などあまり見ない。
エルフは魔法特化で、彼女のような剣士のエルフなどほとんどいないからだ。
彼女はそれはもうひどい有様だった。
装備はボロボロになり、HPは残り少ない。
見た感じ武器の耐久力もなくなりかけている。
トッププレイヤーである彼女がなぜこんなボロボロでこんなところにいるのか疑問に思ったが、まずは治療をすることにした。
回復薬は飲んでいるようだが、やはりあのポタージュモドキは回復が遅い。
βの頃飲んだ回復薬を思い出し、苦笑いしながら私は自然魔法で薬草を生成する。
装備は私にはどうにもできないが、ひとまずこれでいいだろう。私は彼女の隣に座りながら彼女が目覚めるのを待った。
「おーい!ミツミェール?」
目の前で手を振られて我に返る。
「あ!ごめんごめん。どうしたの?」
「いや、いたんだなーって。ほら、今まで姿を見なかったからさ、いないのかなーって思ってたんだ。」
「そうだったんだ。」
「でもβの時と種族が違うね。何の種族?リザードマン?それとも竜人?」
「えーと普通に魔物で今人化した状態。」
彼女は笑顔のまま固まった。
「ん?姫さま?」
「魔物プレイヤーなんていたんだ。」
アリエルがぽつりとつぶやく。
「あれ、ほかにはいないの?」
「いるわけないじゃん。聞いたことないよ。難易度が高すぎて誰一人として前に進めない魔物になるなんて。」
「えーとつまり魔物プレイヤーは現状私だけってこと?」
彼女は首を縦に振る。
魔物の難易度が高いことも知っていたし、人気がないのも知っていた。
だが私一人だけとは思わなかった。
「てかどうやって攻略したの?」
「なんか捕食っていうスキルがあってそれで自分よりランクが上の魔物の肉を食べると経験値が得られて、一定以上のレベルになると進化してランクが高くなる。これを繰り返すんだよ。掲示板とかに情報ないの?」
彼女は首を横に振る。
「初耳だよ…。難易度はどうだったの?」
「難易度か。多分運がよくないと数か月はリスキル生活かな。」
「嘘でしょ!?」
嘘ではない。
実際に私もあそこで鹿(死骸)に出会わなければ今もリスキルにおびえる生活をしていたと思う。
「ちなみに今の種族は?」
「雷光龍帝!ランク20!」
私が胸を張って言うと彼女は口をぽかんと開けたまま気絶した。
ちなみに魔物プレイヤーはマジで彼女一人です。
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