2.2 部員獲得大作戦!②
ギャル連中とはそこで別れて部室に向かう。
「じゃーどーするー?」
長い手をぶらつかせながらパー子が言った。視線をそちらに向けると、ふわふわとしたショートボブの向こうに生徒向けの掲示板が見えた。運動部や文化部の宣伝ポスターが所狭しとひしめき合っている。なんとなく、昨日の風景を思い出す。バレー部、陸上部に軽音部……入学してから何度も通った廊下なのにこうして意識して見たのは初めてだった。
「ポスターでも作ればいいだろ」
間を埋めるために適当に言ったら、パー子は目をキラリと輝かせた。
「それだ!」
「貼るには許可がいるらしいな」
目の前のポスターの右下を指さす。日付と、その下に生活指導部と書かれた丸いハンコが押されていた。生活指導部と言えば大塚先生だ。
部室に戻った俺たちはユニ助のノートパソコンでポスターを作った。一時間くらいかけて普通にちゃんとしたものを作った。
購買のプリンタで一部印刷し、それを手に再び職員室に繰り出す。
「却下だ」
もはや大塚先生はポスターを見もせずに言い捨てた。
「そりゃないんじゃないですか!?」
ユニ助が噛みつくも、大塚先生は何一つリアクションせずに続けた。
「どうせ宣伝のポスターだろ。この時期はどこの掲示板もいっぱいでな。……」
大塚先生は言葉を切った。少し考える素振りを見せると、こう言った。
「体育館裏の掲示板なら、自由に使っていいぞ」
「え、ハンコは?」
「必要ない。その代わり、古くなってるから綺麗にしろ」
大塚先生からの許可をもらった俺たちは急いで体育館裏に向かう。
「だはは! オニヅカのヤローもようやく俺の頑張りを認めたみたいだな!」
「ってか体育館裏に掲示板なんかあったっけ、シロー?」
「シローって呼ぶな。ちっ、嫌な予感がしてきたぜ……!」
俺たちは体育館裏に行き着く。そこには確かに、掲示板らしいものがあった。いや、見間違いかも知れない。それは粗大ゴミと呼んでも差し支えなかった。
A4用紙が8枚ほど貼れそうな横長の緑色の壁がアルミの外枠に囲まれ、二本足で自立している。雨避けの透明のアクリル板は長年紫外線に晒され、薄ぼんやりと濁っていた。そこにサッカーボールでもぶつけたのか、大破していて半分以上が失われている。
ポスターはほとんど野ざらしの状態で、雨風に晒されてインクがにじんだりシワシワになっていたり、紙が破れて画鋲から外れていた。かろうじてアクリルに守られた角の部分には蜘蛛の巣が張っていて、何の手入れもされていないことは明らかだった。一番劣化が少ない5年前の地域のイベントのチラシですら、所々文字が薄けて見えなくなっている。
「……」
ふと強い風が吹き、古いポスターの一枚が破れて飛んでいった。俺たちは無言でその場に立ち尽くした。ユニ助は怒りでわなわなと肩を震わせている。
「こんなとこに貼って誰が見るんだよ! オニヅカのヤローだましやがって!」
腕時計の針は午後の5時を差していた。最終下校時刻は6時だが、残ったところでやることもなかった。
「もうそのへんに貼っちまおうぜ!」
「怒られるじゃん」
ヤケになっているユニ助に、パー子がぐうの音も出ない正論を放った。
「それじゃあ、俺たちがやったってバレないように!」
「宣伝の意味がないぜ」
「ぐぬぬぬぬ……!」
言葉にならない鳴き声を発して悔しがるユニ助。バレないように、宣伝。矛盾している。
――すると、俺の頭脳がある天才的なアイデアを囁いた。
それを言葉にしてユニ助たちに伝えようとしたら、ユニ助たちに尊敬の眼差しを向けられる一秒後の未来を想像して脳みそが痺れた。意味のない吐息が歯の間から漏れる。心臓が強く高鳴っている。そうこうしている間に、他の誰かに先に言われてしまうんじゃないかというありもしない焦りにかられる。
「俺に」
声が震えた。これが上手くいったら、俺だって何者かになれるんじゃないか? そんな期待が胸を高鳴らせた。
「俺にアイデアがある」
それを明日見せる約束をしてその場は解散した。家に帰った俺は、風呂の中でも飯を食いながらでも、頭の中はそのアイデアでいっぱいだった。
翌日。ポスター作りに没頭して5時間しか寝ていない。ふらつく頭でぼんやりと授業を聞き流し、気が遠くなるほど長い時間を耐えた。
放課後、部室に集まったユニ助とパー子に俺はポスターを見せる。クリアファイルから取り出したのは、なんてこともないB5のルーズリーフ一枚。その真ん中に、24文字のドット入り罫線に合わせてこう書いただけだ。
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