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ペン回し部は廃部です!  作者: 中二病でも小説が書きたい!
第三章 遊仁或波の野望
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6.1 遊仁或波VSオメガマン①

 

 宿泊先に向かうバスに揺られながら考えていたのは、班行動で一緒になる女子は実は俺のこと好きなんじゃないだろうかというありもしない妄想だった。泊まりが嫌すぎてつい現実逃避してしまった。


「……はぁ」


 前から後ろに流れていく窓の外の景色に目をくれながらため息なんかをついていると、隣の座席のユニ助が旅行のしおりから顔を上げた。


「なんだよシロー? ゲロでも吐くのか?」


「愚痴とか文句のエチケット袋があるなら遠慮なくそうさせてもらうがな」


「ふん! なんだよなんだよ! お前も根古屋も、このお泊まり会の何が気に入らねーんだよ!?」


 当然ながら根古屋は研修に来ていない。それはユニ助が亀掛川先生に確認済みだ。俺はこの宿泊研修が気乗りしない。ユニ助みたいに他人の前で自然体でいられないので、一日中他人といるのは息が詰まる。根古屋ならこの憂鬱に少しは共感してくれるだろう。


 クラス全員を詰めたバスは宿泊先のなんとかいう自然豊かなところに向かっている。ガタガタいう山道にさしかかり、窓にもたれた頭が振動して窓にゴツゴツとぶつかる。


「いいかシロー! これは超ビッグチャンスなんだぜ!? ペン回し部部員ゲットの!」


「チャンス?」


 ユニ助に言われてスケジュールを思い出す。初日は班行動でお遊びのハイキング、2日目は進路指導のセミナーや勉強会でホテルに缶詰だ。3日目はなんとかいう工場を見学して昼過ぎに帰ってくる。


「オイオイ頼むぜ相棒! 2日目だよ! ほら、学年全体でホテルのデカい宴会場で勉強会やんだろ!?」


「……他のクラスか」


 ユニ助は大きく頷いた。他のクラスのまだ見ぬ猛者を直々にスカウトするつもりか。この数週間でいろんなことがあったが、ペン回し部の部員はまだ3人しかいない。ポスターも風紀委員の連中に潰されたし。


「絶対部員ゲットするぞ! そしたらそいつと根古屋合わせて5人だ! 亀掛川先生が顧問やってくれんならオニヅカのヤローも認めざるをえないだろ!?」


 オニヅカこと大塚先生と言えば、生活指導のいかついおっさんだ。見た目は上下黒ジャージを着た赤鬼をイメージしてもらえばいい。ペン回し部を正式な部活にするには、その心身ともに鬼みたいな先生に申請を許可されなきゃならない。まあ、まともな顧問さえ見繕えば大塚先生も文句はないだろう。


「お前も色々考えてんだな」


「当たり前だろ! まずは今日のハイキングだな! 頑張ろうぜ!」


「何を頑張るんだよハイキングで」


 ふっと息をついて意識をバスの車内に戻す。車内は談笑する弾んだ声やわざとらしい笑い声など、弛緩と緊張の入り混じった雰囲気に満ちていた。期待と不安、野望と憂鬱が渦巻くバスはその混沌を抱えて目的地へと向かっていた。




 * * *




 1日目のメインイベントは行動班でのハイキング。山沿いの広い公園的な施設を舞台に、場所を伏せられたいくつかのチェックポイントを探す。写真のみを頼りにそれを見つけたら同じような写真を撮る。制限時間内に見つけた数が一番多い班は表彰されるとのことで、ユニ助は大いに張り切っていた。


「……で、ホントにこの道で合ってんのか?」


「だーいじょぶだよシロー! 俺に任せてついて来い!」


 ユニ助はズンズンと森の奥に進んでいく。四方を木々に囲まれているせいで太陽光が届かなくて薄暗い。俺たちはチェックポイントのひとつである小さな鳥居を探していた。他のチェックポイントは池とか花畑とか地蔵とかで、写真に写り込んだ情報を頼りにその場所を特定する。


 自信満々で先頭を行くユニ助に遅れて俺が続き、その三歩後ろを女子2人がついてくる。


「なんだっけ遊仁くんって」


「ペン回し部の」


「ああ、あのやばい人ね」


 行動班で一緒になった女子は、小川とか池田とかいう2人組だった。学校指定のジャージを同じように着こなしている。世間一般のユニ助への評価はこんなものだ。


 ほとんど獣道のような道をしばらく進むと、十字の分かれ道にさしかかった。引き続き真ん中の道を進むか、それとも左右どちらかに折れるか。


 本日何度目かも分からない選択を、やつはどう決定しているのかというと。


「分かれ道だぞシロー! どっちに進めばいいんだ!? 考えたってわかんねえよな! そこでこいつの出番だ! 行くぜっ! ペン回しルーレェェェェット!」


 ユニ助は砂利すら敷かれていない土剥き出しの地べたに腰を下ろすと、ノーマルを回す要領でペンを弾いた。普通のノーマルはそのまま親指に巻きつくように一回転するが、ユニ助はカギ状に曲げた親指の第一関節の上に回転するペンを乗せ、さながらルーレットの針のようにぐるぐると何回転もさせている。


 やがて回転力が落ちてペンがバランスを崩すと、ユニ助はペンが落ちるギリギリでそれを器用に掴み取った。そのときのペンの先が示す方向が神様のお告げってわけ。


「右だ!」


 ユニ助は立ち上がって俺と女子2人の方を振り返り、満足げな表情で右の道を進んでいった。なぜか女子2人の方は俺にも呆れたような目を向けてくる。一緒にされては困るのだが。


 辺りを見回すと人の気配が全くない。どこからか聞こえる鳥の鳴き声が大きくなってくる。自然強めなエリアに迷い込んだらしい。スマホの地図を開くと、現在地を示す青い丸がほとんど公園の隅にあった。コイツのまじないをアテにしすぎたようだ。さすがに一声かけるかと思ったら、ユニ助はくるりとこちらを振り返った。


「ここどこだよ?」


「知らねーよ!」


 思わず大きな声を出してしまった。後ろの女子2人の視線が気になり、せきばらいをひとつ。ったく、なんて無責任なヤローなんだ。


「とりあえず来た道戻るぞ」


「はあ!? お前まだいっこもチェックポイント見つけてねーんだぞ!? 一位になってペン回し部の宣伝する俺の計画は!?」


「だったら真面目にやれ! 何がペン回しルーレットだ!」


「ペン回し部がペン回しの可能性信じないでどうすんだよ!? 見てろ! そこの茂みの向こうに鳥居あったらなあ! もうすごいぞ!?」


「何がだよ。んな都合よく行くか――」


 ユニ助と同時に茂みの向こうをのぞくと、そこには鳥居ではなく小さな地蔵があった。この後制限時間が来たので俺たちが見つけたのはこの一箇所だけだったが、この地蔵を見つけたのは学年中で俺たちの班だけだったので微妙に注目された。


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