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ペン回し部は廃部です!  作者: 中二病でも小説が書きたい!
第三章 遊仁或波の野望
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5.4 札付きの猫柳④

 

 根古屋とのコンタクトに成功した翌日の放課後。空き教室に3人集まったところで、パーコが得意顔をして言った。


「ねこやなちゃんのこと、友達にいろいろ聞いてみたよ!」


 俺が無意味に散歩している間に、パーコは自分の能力を活用して現状打破のための貢献をしていたらしい。


「ねこやなちゃん、軽音部だったんだって」


「へえーっ! 部活入ってたのか!」


 ユニ助は感心したようなリアクションをする。それが過去形であることには驚かない。なんなら、元軽音部というのも想像通りだ。入学当初は、部活に参加する程度の社会性は持っていたわけだな。


「なんかね、軽音部入った日にバンド組んで、その日のうちに解散したんだって」


 なんだそれ。破天荒っつーか、社会性のかけらもないな。


「楽器は?」


 なんとなく気になって質問する。自我強そうだから、どうせギターかボーカルだろう。別に、会話に混ざりたかったわけじゃない。


「ギターだよ! 一曲しか聴いてないけどめちゃくちゃ上手いって言ってた。まあその子楽器未経験だけど」


「つまり何のあてにもならないってことだな」


 少し意地悪な物言いをすると、パーコはムッとした顔をする。


「そんな言い方しなくていいじゃん! それならねこやなちゃんのトップシークレット教えてあげる! シローもきっとびっくりするよ!?」


 教室には俺たちの他に誰もいないのに、パーコは周囲を警戒するジェスチャーをしてから俺たちをそばに呼び寄せた。ふわふわとした金髪のショートボブが目の前で揺れる。なんらかの化粧品の甘い香りがかすかに漂う。内緒話をするテンションで、パーコはこっそりと話し始めた。


「なんと、ねこやなちゃんの家はね……」


 家庭環境とは、なかなか突っ込んだ情報を手に入れたもんだ。根古屋の家族構成は普通に気になる。身内にミュージシャンとかいるんだろうか。


「家は?」


 ユニ助が聞き返す。


「猫飼ってるんだって!」


「ええええ!? 苗字根古屋だから!? ええええええ!!」


 ……アホか。


 パーコのアホ面を呆れ顔で眺めると、やつは慌てたように両手を振った。


「ちょっ、シロー冗談じゃん! ホントのトップシークレットはここから!」


 取り直すようにせきばらいをひとつ。再びパーコは真剣な顔をして俺たちを呼び寄せ、人差し指を立てる。


「その猫はね……」


「猫は?」


 またユニ助が聞き返す。


「猫なのに、名前がウナギイヌ!」


「だはははははっ!!」


「帰る」


「だーから冗談じゃん! そんな怒ってっとハゲるよ!?」


 洒落の通じない奴だな、みたいな目でパーコはこちらを見てくる。全く無駄としか思えないくだらないやり取りだ。


「本番はここから。友達からその話聞いて、『ウナギイヌ』でエックス調べてみたらね……」


 パーコが検索結果のスマホ画面を見せる。赤塚不二夫の生み出したポピュラーな名詞なので、同名のアカウントが何件もある。アイコンを猫にする程度の誰でも思いつく逆張りも数件見られた。スクロールしていく中で、ひときわ目を引くアカウントがあった。


「うなぎいぬP……」


 俺はその名前をつぶやいた。ハッとしてパーコの方を見ると、やつはすさまじいほどのドヤ顔をしていた。


「そう! 調べてみたんだけど、ここ数年で出始めた新人ボカロPみたいで、自分で弾いたギター録音して曲に使ってるのが人気なんだって! 何曲か聞いたんだけど、歌詞が尖ってていかにもねこやなちゃんっぽいなーって感じ!」


「すげええええ!! さっすがパーコだぜ!!」


 すると、ガタンという物音が聞こえた。それは教室前方のドア付近から発せられたもので、いつの間にかドアが薄く開かれている。誰からともなく沈黙してその隙間に注目すると、ドアの隙間から何かが床に転がり出た。それは手のひらサイズの円盤状のもので、スーツケースのキャスターみたいに床をコロコロと転がっていく。巻き付けられた蛍光グリーンのストリングが床に軌道を描く。言ってしまうとそれはヨーヨーだった。そんなものを学校に持ち込む知り合いは一人しか心当たりがいない。


「……先輩?」


 いつまでもドアの向こうから姿を現さないので俺が声をかけると、兎澤先輩がおずおずと出てきた。流れるようなステップでヨーヨーに近づくと、俊敏な動作でそれを拾い上げる。野生動物並みに隙を見せない。


「……うなぎいぬPと聞いて」


 床に垂れたストリングを元通り巻きながら、先輩は言い訳のようにつぶやいた。


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