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ペン回し部は廃部です!  作者: 中二病でも小説が書きたい!
第二章 兎澤文乃の日常
20/29

4.7 ××限定ベリーベリーストロベリーハートシュークリームプリン事件⑦


 三度、目的のシュークリーム売り場にて。若い女の店員さんにカフェを出た後に撮ったプリクラを見せた。


「おめでとうございます! カップル認定試験、合格です!」


 ようやく俺たちは目当てのプリンとティーカップをゲットできたわけだ。恥ずかしい思いをして髪の毛を揃いのシュシュで縛った甲斐があるというものだ。


 厚紙の箱に入ったそれらを持って店を後にすると、こちらに近づいてくる人があった。とても背が低いのに私服が半袖短パンだと、いよいよ小学生と見分けがつかない。


「よぉー! 遅くなってスマン! 買えたみたいだな!」


 ユニ助がアホ面をさらしてこちらに片手を上げた。


「ちっ、おせーよアホ」


「アホ!」


 俺の後ろでパーコも同調した。ユニ助は、わりーわりーと大して悪びれもせずに謝り、それよりさ、と話題を変える。


「さっき知ったんだけどさ、これってカップル限定らしいな! おそろいのシュシュなんか付けちゃって! だははっ、よかったじゃねーかシロー!」


「はあ!? 冗談も休み休み言わねーと俺だって手ぇ出るぞ?」


「でも、ホントによかった。なんか、仲良くなってるよ、お前ら」


 ユニ助はしみじみとした様子で言った。その声色には慈しみさえ感じる。けっ、クソチビの分際で偉そうに。俺はシュシュをほどいてジャケットのポケットにしまった。パーコに髪を結んでもらったときから続いていた頭皮の引っ張りが消える。はらりと、後ろ髪が普段通り肩にかかる。


「……もともとこんなだよ」


「あれだろ? 書いてあったぜ、カップル試験! ペアアイテムとか、プリクラとかさ! パフェあーんとか! それで絆深まったんじゃね?」


「それはまあ……って」


 尻尾を出したなこのタヌキめ。疑いの視線をもってユニ助を見ると、やつはびくりとした。今の俺は相当キレてると思う。


「なんでお前がパフェのことを知ってるんだ……?」


「え!? ああっ!! ……い、いやー」


「出てくるタイミングよすぎるんだよテメー。いつからひそんでやがった?」


「えーと……いつだったカナー」


「もしかして、最初からいたんじゃねーか? こうなることがわかってて、わざと俺たちをふたりっきりにさせたのか?」


 ユニ助はわかりやすく狼狽えていたが、まるで責任転嫁するように俺の顔を指さして言った。


「お前が悪いんだぞ! お前がパーコに勝手に壁作ってっから気ぃきかせてやったんじゃねーかよ! なんだよ、あの最初のプリクラの写真撮るやつ! とんちやってんじゃねーよ!」


「てめーやっぱ最初っからいたんじゃねーか!」


「ぎゃあああ!」


 ユニ助の頭を両拳でグリグリする。横で、あははっ、という笑い声がした。見ると、パーコがこちらを見て笑っていた。それが照れ臭かったが、ユニ助への制裁をやめる理由にはならなかった。




 * * *




 翌日、月曜日の昼休み。そのプリンとティーカップを土産に、俺たちは亀掛川先生のいる地学準備室を訪れた。昼休みになるまでは、クーラーボックスにありったけの保冷剤を詰めて保管していた。


「えっ!? ど……どうして?」


 私物化された地学準備室の中に小さな冷蔵庫があることは確認済みだ。亀掛川先生は普段の気だるげな表情を崩して驚いていた。


「食べたそうだったんで買ってきました!」


「あらぁ〜、ありがと〜。助かります〜……」


 亀掛川先生は財布から二千円を抜いて、何も言わずにパーコに握らせた。


「あはは、どういたしまして……あのっ」


「顧問、でしたっけ〜……? えーと……」


すかさずユニ助が前に出る。


「ペン回し部っす! 部長の遊仁ゆに 或波あるはです!」


「ふむ……」


 亀掛川先生は腕組みをして目の前の俺たちを眺めた。腕組みを解くと、先生はユニ助を指さした。


「ペン回し部新設を目論む問題児」


「えぇ!?」


 次に、パーコを指した。


「校則を無視する問題児」


「あはは!」


 最後に、俺を指さす。


「ロン毛」


「……」


「つまり、既存の部活になじめないはみ出し者の集まり、ということですね〜……」


 亀掛川先生は値踏みするような目を向けてくる。俺だけ弱くない? あと、俺は別になじめてないわけじゃない。この2人と一緒にしないでいただきたい。


「いいでしょう。シュークリームに免じて、先生がチャンスを差し上げましょう〜……」


「ホントですか! ありがとうございます!」


 喜色満面、パーコは頭を下げた。亀掛川先生の手を取ってブンブンと上下に振っている。そこらを飛び跳ねて踊り出しそうな勢いだ。


「まだ引き受けるとは言ってませんよ〜……活動内容はさておき、活動を通して、同世代の仲間と健全な人間関係を構築することや、社会性を育むことも、部活動の大切な意義のひとつです……そこで」


 乾の手をやんわりと剥がして、亀掛川先生は人差し指を立てた。


「なんですか?」


 ユニ助が訊くと、亀掛川先生はにっこり笑った。美しい笑顔だが、ドライアイスのような冷たさを同時に感じさせた。俺はやっぱり、ユニ助ほどこの先生を信用できない。


「存在意義を証明できたら、顧問を担当してあげます〜……つまり、私が指定する1人の生徒をペン回し部に入部させてください〜……」


「そんなことですか! メンバー募集中なんで、誰でも歓迎ですよ!」


 亀掛川先生はドライアイスのような笑みを崩さずに言った。


「心強いですねぇ〜……」




 第4話 ××限定ベリーベリーストロベリーハートシュークリームプリン事件 完


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