第18章「町の門の前で」
丘を越えた先に、白い壁が見えた。
初めての町。石造りの門は陽を受け、鈍く輝いている。
レオンは思わず足を止めた。
胸の奥がざわつく。ここまでは森と草原だけだった。
だが人の営みがある場所に入れば、もうただの旅人ではいられない。
足元で子狼が鼻を鳴らす。
「……お前も緊張してるのか?」
小さく鳴いた声が答えだった。
門前にはすでに行列ができていた。
商隊の荷車、農民の籠、旅人の背嚢。
誰もがそれぞれの目的を抱えて、この門を通ろうとしている。
レオンが列に並ぶと、すぐ後ろの老旅人が声をかけてきた。
「坊主、その獣……飼い犬か?」
「いや……狼だ」
「狼!? そりゃあ騒ぎになるぞ。町じゃ野獣は嫌われる」
老旅人の言葉に、レオンの胸がざわめく。
剣を振る理由を見失った今、自分はただの旅人だ。
けれど、この命を手放す気はない。
やがて順番が来た。
門番が槍を持ち、厳しい目を向けてくる。
「旅人か? 身分を示せ」
レオンは素直に答えた。
「ただの旅人だ。……通行証はない」
門番は一瞥し、次に子狼へと視線を落とす。
「その獣は?」
レオンは短く息を吸い込んだ。
言葉を選ぶ間もなく、子狼が尻尾を振りながら門番に近づく。
意外にも、門番は目を細めた。
「……まだ幼いな。害はなさそうだ」
同僚の兵士が渋い顔をする。
「だが規則では――」
「規則ばかりでは人も獣も生きられん」
そう言って門番は手を振った。
「気をつけろよ、若い旅人」
レオンは一礼し、門をくぐった。
視界が開ける。石畳の道、香辛料の匂い、商人の声、子どもの笑い声。
全てが生きて動いている。
子狼は驚いたように耳を立て、忙しなく視線を動かしていた。
レオンは小さく笑う。
「……ようこそ、俺たちの最初の町へ」
初めての町は、レオンにとって“剣以外の世界”との本格的な接触だった。
子狼を連れていることは、これから数々の問題を引き寄せるだろう。
だが同時に、それが新しい生きる意味を見つける道でもある。
──そして、ここからが本当の旅の始まりだァァ!
長かった……! やっと、本当に描きたかった“本編”に踏み込める!!(感動)
レオンと相棒の旅が、この先どんな景色を見せてくれるのか──一緒に見届けてもらえたら嬉しい!!