表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

第12章 風の分かれ道

朝の光は森の奥へと差し込み、土の匂いを濃くした。

レオンは背に小さな荷を負い、子狼を連れて歩き出す。


まだ歩き出したばかりの道。

その一歩ごとに問いが浮かぶ。


(本当に、俺は旅をする意味があるのか?

 ただ生き延びるだけなら、村に残ればいい。

 それでも、剣を失った俺は……あそこに居てもいいのだろうか?)


振り返れば、リリカの「帰ってくるんでしょ?」という言葉が残っている。

答えられなかったその問いが、まだ胸の奥で疼いていた。


──子狼が足元で立ち止まった。

前足を川辺の水に浸け、振り返る。

その仕草に、レオンは小さく笑った。


「お前は迷わないんだな。

 俺は、どうしてこんなに迷うんだろうな……」


川のせせらぎに紛れて、答えは返ってこない。

けれど狼の子の瞳はまっすぐで、それだけが不思議に心を落ち着けた。


──◇──


昼下がり。

二人は分かれ道に立っていた。

右は街道へと続く道。人が多く、交易も盛んだろう。

左は森の奥へと続く小道。地図にも載らない、行き先すら分からない。


レオンは立ち尽くし、空を仰いだ。


(剣を振る理由を探すなら、人のいる場所に行くべきか?

 それとも、誰も知らない景色にこそ答えがあるのか?)


子狼は小道の方へと歩き出し、鼻を鳴らした。

振り返ると、まるで「お前はどうする?」と問うているようだった。


レオンは笑い、肩の力を抜いた。

「そうだな。剣のときは、選ぶ理由なんて考えたこともなかった。

 ただ、殿下を守るために前へ進むだけだった……」


(じゃあ、今の俺は?

 誰を守るわけでもない俺は、何を選ぶ?)


長い沈黙の後、レオンは左の道へと歩を進めた。

理由は、まだ見つからない。

けれどその曖昧さこそが、旅の始まりなのかもしれなかった。


──風が分かれ道を通り抜け、森の奥へと誘うように吹き抜けていった。

この章では「レオン自身が何度も問いかける」ことを重視しました。

答えは出ないままでもいい。むしろ出ないからこそ、読者と一緒に歩いている感覚を作れます。

次章では、さらに深い森の中で「不意に訪れる出会い」を描いてみます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ