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神を殺した世界にて  作者: ほてぽて林檎
第2部:その手はまだ繋がって
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揺れるテーブル

 





「なんで……そんな、平気な顔してるのよ」





 トゥヴァの声が、震えていた。



 怒っているのか、悲しんでいるのか、言葉に乗せきれないほどの感情が滲み出ている。




 眉間には深い皺が刻まれ、胸の奥に蓄積した思いが今にも零れ落ちそうだった。



 至極真っ当な問いだった。




 だが、それを向けられたオルエはというと、首をかしげて、小さな笑みすら浮かべている。




「え?だって……みんな初めてでしょ〜?」




 口調はのんびりとしたものだった。





「私だって頑張ったんだからね? 反射測定はちょっと遅れてD、よろけて足場から落ちてD、怖い映像見て叫んじゃってD、射撃もね、いっぱい撃ったんだよ? 当たらなかったけど。でも頑張ったの、うん。なのにD……おかしいなぁ。私、頑張ったのに」





 そこに一片の悪意も、皮肉もなかった。




 ただ事実を並べ、疑問を口にしただけの、素直な“感想”だった。



 トゥヴァは唇をギリ、と噛みしめる。ぐらぐらと心が揺れているのが見て取れた。



 言いたいことが喉まで出てきて、でも言ったところで届かないと、無意識に理解してしまったのだろう。



 吐き出す代わりに、そっと、涙をにじませながら言った。


「……論外よ」




 その言葉には、敗北にも似た苦さが滲んでいた。



 スプーンを手に取り、無言で、ぱくぱくと食べはじめる。怒りや悔しさを押し込めるように、口に運んでいく。


 セリスはというと、隣のオルエをじっと見つめていた。

 その瞳には怒りも呆れもなく、ただただ純粋な「関心」が宿っている。


「どうやってそんな結果が出せるの……指の動き?体勢のとり方?思考の流れ……ふふっ、面白い子」




 まるで未知の研究対象を目の当たりにしたかのように、彼女はわずかに目を輝かせる。そこに悪気など一切ない。ただ、セリスは“理解したい”だけなのだ。




 そして、私はと言えば――この空気に、ただただ取り残されていた。





 ぐちゃぐちゃな感情、淡々とした事実、無邪気な関心。



 同じテーブルに並んだ四人の少女たちは、それぞれの「違い」を突きつけ合っているようだった。




 私はスプーンを動かしながら、ふと考える。





 ……学校、どうしてるかな。



 私とリリィが突然消えたんだから、何か問題になってもおかしくない。

 行方不明届とか、親が騒いでたりしないだろうか。




 だけど、本当のところを言えば……この生活、そんなに嫌いじゃない。

 家で食べるご飯よりもずっとおいしいし、寝心地のいいベッド、そして何よりリリィがそばにいる。



 悪くない。

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