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神を殺した世界にて  作者: ほてぽて林檎
第2部:その手はまだ繋がって
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静寂

 


 意識が戻った瞬間、アイリスは目を強く閉じた。


 何かが夢だったのかと願うように、まぶたの裏に残された光景を追いかける。



 しかし、頬に触れたのは、白く乾いたシーツの感触。

 そして耳に届いたのは、機械の静かな稼働音。



 ――夢じゃない。



 ふと寝返りを打つと、足に痛みがなかった。



 あの時、確かに骨が折れていたはずなのに。包帯もギプスもない。



 膝を立ててみる。するりと動く足。



 違和感を覚えながら、身体を起こす。


 身にまとっているのは、見覚えのないぶかぶかの病院服。


 首元が余り、袖が手を隠すほど長い。



 それでもなんとか床に足をつけ、ふらつきながらも立ち上がった。



 ――ここはどこ?



 部屋には窓がなかった。


 壁はどこも無機質で白く、塗りつぶされたように閉鎖的。


 唯一あるのは、真っ直ぐな蛍光灯の白い光と、電子音のような低い機械の唸りだけ。


 酸素すら管理されているような静けさ。

「……リリィ……」


 声を出してみたが、反響する音もなかった。


 ここに音は必要とされていない――まるで、生き物の存在すら前提にないような空間だった。




 気づけば、ベッドの端に一枚のステッカーが貼られていた。



 そこには、**「015」**という数字が記されている。


「……番号……?」


 ただの識別番号。


「私、どれくらい……ここに……」


 時計はない。

 窓もなく、外の時間すら分からない。

 自分が眠っていた時間すら、不確かだった。


 目覚めと同時に、アイリスは過去と現在の境目を見失っていた。

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