急展開
エドワードは椅子の背にもたれ、議会の終わった会場を見渡す。
その顔に焦燥はない。すべてが予定された通りの結末――そう語るような瞳。
「……人間は、自分で手を汚さないものには容赦がない」
彼は独り言のように呟いた。
「見ない。聞かない。知らない。
そうして“ただの資源”だと、己を騙す。
そうすれば罪悪感からも、思考からも解放される。便利な魔法だ……」
聖女を知る者はあまりに少ない。
いや、知ることを最初から放棄している。
あの無機質な白い部屋の奥で、幾度も針を刺され、血が抜かれること。
上層部の誰も、その顔を知らない。声を聞いたこともない。
エドワードにとっては、“知らない”ということそのものが、最も深い“暴力”に見えた。
───
また別の日、議会での重圧の中、エドワードは最後に一つの「妥協案」を提示した。
それが――エリック・バーナードの復帰だ。
彼ならば、まだ「罪悪感」と「理性」を天秤にかける人間だと信じていた。
エドワードは言った。
「……少なくとも、彼は“人間”を管理する視点を持っている。
もう一度、聖女の監督官として現場に戻してほしい。
その代わり、私には何をしてもいい」
ライナーはその条件を面白がった。
「望み通りにしてやるよ。貴様はもう、終わった男だ。あとは“見届ける”だけでいい。
……貴様の失敗をな」




