生き残り
ゼファーはハッと我に返ると、少し恥ずかしそうに首をすくめる。
「つい夢中になってしまって…反省してるよ。いや、全然してないな。むしろ次を見せたいくらいでね、これなんだけど――」
次の瞬間、ゼファーは手にしていた何の部品か分からないパーツを掲げて、
「見てくれ、この回転軸の滑りだが……ここの摩擦係数を調整すると、出力低下を防げて――」
と早口に解説を始めた。
エドワードは完全に付いていけずに眉をひそめていたが、その様子を見かねたように、後方からリーネの落ち着いた声が飛んできた。
「所長、大佐が困っております。」
「おっと……いやぁ、聞いてくれる人がいるとつい嬉しくなってね。」
ゼファーは申し訳なさそうというより、楽しそうに肩をすくめる。
その時だった。
「博士。」
低く冷めた声がゼファーの背後から響く。
振り返ると、そこには大きなヘッドギアを装着した少女が立っていた。まだ若いが、頬には古い創痕があり、どこか大人びた雰囲気を纏っている。
「運用テスト、早く始めた方がいいです。新規入隊生が装着してから欠陥が見つかったら遅い。誰でもいいですから。」
その瞳には諦めと冷静さが宿り、ゼファーに淡々と告げた。
リーネは彼女に視線をやると、一歩下がり無言で成り行きを見守る。
ゼファーは笑顔を浮かべて答えた。
「そうしたいのは山々だけどね。仮運用の対象者は今、適応中でね。もう少しだけ待ってくれ。私も、実戦データが楽しみなんだ。」
そして彼女のヘッドギアに目をやり、ふと思い出したように言う。
「ああ、そうだ、さっき説明しかけていた第2世代の特徴、まさに彼女がその体現者さ。」
エドワードが驚きに目を見開く。
「まさか……」
「そうとも、第2世代の唯一の生き残りだよ。」
ゼファーは自信満々に頷く。
「第2世代型は、第3世代に比べれば完全な下位互換さ。配線は滅茶苦茶、冷却機構は脆弱、エネルギー効率も悪い。でもね――」
彼は少し熱を帯びた口調で続ける。
「無骨で、直線的で、設計がとにかく分かりやすい。僕はあの粗削りな構造が大好きなんだ。しかもパーツはどれも汎用性が高く、すぐに換装できる。ある意味では"換装型"と呼べるかもしれないね。」
「……おっと、彼女はS2型-015で、名前は……なんだったかな?」
少女は一歩前に出て、小さく告げた。
「セラ。そう呼ばれています。」




