科学技術棟:エドワードの訪問
軍本部のすぐ隣に構えられた巨大な建造物、それが科学技術棟である。
表向きは「軍事技術研究施設」。
その実態は、武装、エネルギー、神代兵器の量産技術まで多岐にわたる開発拠点。
徹底的なセキュリティのもと、軍直属の機関として運営されている。
だが、ここにいる者たち全てが、軍の裏側を知っているわけではない。
——聖女の存在。
それを知るのは、特に高い権限を与えられた技術研究員の中でもごく一部だけ。
外部に漏れればどうなるかは、誰よりもこの私がよく知っている。
故に、「聖女の血」とは、決してここで口にするものではない。
ここで扱われているのは、ただの「次世代型人工エネルギー」——そういうことになっている。
実際、そう伝えられ、そう信じている者たちは、その“原料”がどこから来るかなど知る由もない。
彼らにとって重要なのは結果と成果。
それが“精製されてしまえば”——夢のようなエネルギー源として、疑う余地すらない。
……彼女たちの命を代価にしているなどとは、想像もしないだろう。
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棟へ続く外通路を渡ると、技術部門の制服を着た者たちが目に入る。
軍の制服よりも簡素で動きやすさを優先した灰青色の作業着。
走る者、立ち話に興じる者、何かの図面に没頭する者——。
その中には、私に気づき「大佐」と軽く頭を下げてくる者もいれば、皮肉めいた口調で軽口を叩いてくる者もいた。
「おや、こんなところまで足を運ばれるとは珍しい」
「査問の前に視察ですか? それとも……心の準備を?」
「ほら、あれがクラウス大佐だよ。最近、上と揉めてるって噂の」
——口は軽い。だが、だからといって無防備ではない。
ここにいる者たちも、馬鹿ではないのだ。
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目的の技術部門を探しながら、私は通路を歩く。
量産型神代兵器のエンジン制御と武装統合の研究を行っている部署だ。
ガラス越しに中の様子を見る分には問題ないが、部屋への立ち入りは厳重に制限されている。
ここの入出は、軍上層部であっても許可がなければ通れない。
——もちろん、私は事前にアポイントを取ってある。
入り口の前で待っていたのは、まだ若い女性研究員だった。
浅い金色の髪を後ろで束ね、白衣の下に技術棟の制服を着ている。
神経質そうな眼鏡が、真面目さを物語っていた。
名前は——「リーネ・クラウザー」。
祖父が軍人だったらしいが、彼女自身は軍属の研究員。聡明で融通が利く、だが情には流されないタイプだ。
「お待ちしておりました、大佐。どうぞ、こちらへ」
「堅苦しいのは抜きでいい。私は客だ、楽にしてくれ」
「はい……いえ、その……承知しました」
言葉遣いと態度のギャップに、一瞬戸惑った様子を見せるリーネ。だがすぐに表情を引き締めた。
彼女は扉の認証端末に自分のIDカードを通す。
ピッと短い電子音が鳴り、扉が静かに開いた。
「……それでは、内部へどうぞ」
背後で扉が閉まる音を聞きながら、私は足を踏み入れた。
彼女たちは知らない。知ることもないだろう。
今、自分たちの足元に敷かれているのが、少女たちの命の上であるということなど——。
先のことを考えると楽しくなってくるんだけど、先のことばかり考えると次の内容とかが疎かになって話が行き詰まりかける!!!!!バカがよ!!!熱量があるうちにぶちまけて駆け抜けろ!と鼓舞をするなど




