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神を殺した世界にて  作者: ほてぽて林檎
第1部:正義に注ぐは聖なる犠牲
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目覚め


リネットはびくりと体を震わせ、目を覚ました。

 部屋は静かで、うっすらと朝の光が差し込んでいた。冷たいシーツが汗で湿っている。


「……また……」


 そう、小さく呟いた。


 この夢は、初めてではない。

 思い出せないはずの記憶——知らないはずの空と大地、血と、叫びと、絶望。

 それが、何度も、何度も、形を変えてリネットの眠りに現れる。


 たとえ昼間に笑っていても。のんびりしていても。何も考えていないように見えても。

 夜になり目を閉じれば、あの“空”が彼女を迎えに来るのだ。


 手を見下ろす。夢の中で誰かに握られた感触が、未だに残っている気がする。

 それが誰なのか、なぜその場にいたのか、何一つわからない。



ただ、あの手だけが、唯一温もりを持っていた。


 でも、夢だ。現実じゃない。

 そう、思い込まなければ眠ることすら怖くなる。


 だからリネットは、この夢を誰にも話さない。

 話してはいけない。口に出した瞬間、なにかが壊れてしまう気がする。

 それに……もしこの夢が“記憶”なのだとしたら、

 自分はどこから来て、何を見ていたのだろう?


 答えはない。

 ただ、また夜になれば、あの赤い空が、きっと自分を呼ぶのだ。

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