エリックの決断
扉が静かに開く音が響く。
エドワード・クラウス大佐は書類の山を片手で整理しながら、コーヒーを口に運んでいた。ホログラムスクリーンには、スプーンを片手に食事をする聖女たちの映像が流れている。
彼は視線を上げずに、誰が入ってきたのかを察した。
「——さて、どっちにつく?」
まるで予想していたかのような問いかけだった。軍の駒となるか、それともエドワード側につくか。その選択を迫るようでいて、どちらに転んでも構わないといった余裕がある。
エリックは言葉を発さず、軍服のポケットから自身の権限キーとIDカードを取り出す。そして、それをエドワードの机の上に力強くも、ゆっくりと置いた。
「……これが、俺にあるものだ。」
男としての筋を通すように、静かにしかし確固たる意志を持って。
エドワードはようやく視線をスクリーンから外し、エリックの手元に置かれたIDカードを見た。そして、その手が微かに震えているのにも気づく。
「……なるほどな。」
彼はそれ以上は何も言わなかった。ただ、コーヒーを一口飲み、スクリーンに再び視線を戻す。
「言いたいことは、大体わかった。」




