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神を殺した世界にて  作者: ほてぽて林檎
第1部:正義に注ぐは聖なる犠牲
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代償

 


 翌朝、礼拝堂の後、少女たちは特別な部屋へと案内された。


「今日は、いつもより少しだけ長くなりますよ」


 白衣の女性が優しく言う。


 エルナは少し眉をひそめたが、「外に出るためなら仕方ない」と自分に言い聞かせるように笑った。


「うん、早く終わらせて外に行こう!」


 腕に細い針が刺さる。


 チューブの先で、鮮やかな赤が脈打つように吸い上げられていく。


 セリアは、ほんの少しだけ目をそらした。

 採血自体は痛くない。それでも、血が流れていく感覚は、少しだけ怖かった。


 ——エルナが不意に小さく呻く。


「……なんか、ちょっとフラフラする……」


「横になっていてくださいね」



 研究員が穏やかに言う。


 リネットはすでに目を閉じて、眠るように静かだった。


「……終わりました。お疲れさまです」


 手際よく処置を終えると、研究員はセリアたちに水を渡した。


「少し休んでから、移動しましょう」


 セリアは水を飲みながら、胸に奇妙な違和感を覚えていた。

 ——なんだか、身体が重い。


 それでも、エルナが楽しみにしている「外」に行けるのなら、それは我慢すべきことなのだろう。


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