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代償
翌朝、礼拝堂の後、少女たちは特別な部屋へと案内された。
「今日は、いつもより少しだけ長くなりますよ」
白衣の女性が優しく言う。
エルナは少し眉をひそめたが、「外に出るためなら仕方ない」と自分に言い聞かせるように笑った。
「うん、早く終わらせて外に行こう!」
腕に細い針が刺さる。
チューブの先で、鮮やかな赤が脈打つように吸い上げられていく。
セリアは、ほんの少しだけ目をそらした。
採血自体は痛くない。それでも、血が流れていく感覚は、少しだけ怖かった。
——エルナが不意に小さく呻く。
「……なんか、ちょっとフラフラする……」
「横になっていてくださいね」
研究員が穏やかに言う。
リネットはすでに目を閉じて、眠るように静かだった。
「……終わりました。お疲れさまです」
手際よく処置を終えると、研究員はセリアたちに水を渡した。
「少し休んでから、移動しましょう」
セリアは水を飲みながら、胸に奇妙な違和感を覚えていた。
——なんだか、身体が重い。
それでも、エルナが楽しみにしている「外」に行けるのなら、それは我慢すべきことなのだろう。