聖女のデータチェック
エリックはモニターの横に表示される彼女たちのデータを確認した。
──セリア・ヴィンザー
・血液採取量:通常の1.5倍
・精神状態:安定
・ストレス値:低
・体調:良好
──エルナ・クラウゼン
・血液採取量:通常の1.5倍
・精神状態:活発
・ストレス値:低
・体調:良好
──リネット・S
・血液採取量:通常の1.5倍
・精神状態:やや低下
・ストレス値:低
・体調:異常なし(ただし軽度の疲労傾向)
「……なるほどな」
エリックは鼻を鳴らし、腕を組む。
外出許可や菓子作りがある日は、いつもより多く血液が採取されている。
だが、聖女たちはそれに対して何の不満も不安も持っていない。
それどころか、「お願いを聞いてもらえたから、提供するのは仕方がない」と納得しているようだった。
まるで、等価交換のように──
「あげた分だけ、もらえる」
その価値観が彼女たちの中に、自然と染みついているのをエリックは感じ取った。
「……そういや、俺は前にセリアの担当だったんだよな」
彼女たちがどれほど素直で、純粋なのかはよく知っている。
エリックの目の前のモニターには、ただ無邪気に水遊びをしている少女たちが映っていた。
彼女たちは何も知らない。
彼女たちは何も疑わない。
エリックの胸の奥に、なんとも言えない違和感がじわりと広がっていく。




