監視の開始
エドワードはホログラムスクリーン越しに聖女たちを見つめていた。
無邪気に笑いながら、区画E-03の草原を走り回る彼女たち。
(……さて、どう動く?)
彼女たちの行動を注意深く観察しながら、エドワードは考える。
その時――
「……今日はお暇そうですね。」
背後から、皮肉めいた声が聞こえた。
振り向くと、黒い軍服に身を包んだ女性士官が立っていた。
「これは失礼。"少尉殿"がわざわざ私に声をかけるとは、光栄なことだ。」
エドワードは軽く微笑みながら答える。
「まさか、大佐ともあろうお方が、少女たちの様子をこんなに熱心に見つめているとは思いませんでした。」
女性士官は冷笑を浮かべる。
「何かお飲みになりますか?」
「……では、ブラックコーヒーを。」
「ふふ、相変わらずですね。」
女性士官はくすりと笑いながら、部下にコーヒーを持ってこさせる。
「それにしても、クラウス大佐――」
「ん?」
「その熱心な眼差しを、恋愛にも向ける気はないのですか?」
「……ははっ。」
エドワードは喉を鳴らして笑う。
「私は女性のエスコートが苦手でね。」
「嘘でしょう?」
「本当さ。貴女のような聡明な女性を前にすると、どう扱えばいいかわからなくなる。」
「……お上手ですね。」
女性士官は肩をすくめた。
「ですが、私はまだ大佐の"本心"を知りません。」
「ならば、ぜひ知る努力をしてくれ。」
エドワードはコーヒーを受け取りながら、静かに微笑んだ。




