軍の上層部
静かな会議室。
無機質な白い壁に囲まれた部屋の中央には長いテーブルがあり、軍の関係者や研究員たちが並んで座っていた。
「……つまり、聖女たちが『外に出たい』と嘆願した、ということか?」
「はい。主導したのはエルナ。セリアとリネットも賛同しています」
報告を受けた年配の軍人は腕を組み、眉をひそめる。
「外に出ることは不可能だ。我々は彼女たちの安全を確保しなければならない」
「ですが、適度な自由を与えることは、精神的な安定につながります」
別の研究員がそう進言する。
「それに、聖女たちが外の世界を知らないことは、我々にとっても都合がいい。適切に管理された環境を『外』として認識させれば問題はないかと」
「ふむ……」
「ただし、外出を許可する代わりに、採血量を増やすのはどうでしょう?」
会議室が静まり返る。
「血液を多く採取すれば、しばらくは自由に動き回ることはできないだろう。それならば危険もない」
提案に対し、慎重な沈黙が続く。
やがて、軍の上層部の一人が口を開いた。
「……よし、その条件で許可しよう。ただし、徹底的に管理された環境で行うこと。彼女たちには、ここが『外』だと認識させろ」
「はっ」
こうして、聖女たちの嘆願は許可された。
しかし、それは彼女たちが願った本当の「外」ではない。
知らぬまま、少女たちは偽りの空へと連れ出されることになる。