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静かな恐怖
セリアは何も知らずにいた。
「これくらい、平気なのに……」
指に巻かれたガーゼを見つめながら、ぽつりと呟く。
白衣の職員たちが、どこかピリピリとした空気を纏っていたことが、妙に気になった。
エルナとリネットも、少し気まずそうに視線を交わす。
「……なあに、セリア?」
リネットがのんびりとした口調で言った。
「ん……なんでもない……」
セリアはそう言って、小さく微笑んだ。
何かが引っかかる。
でも、それが何なのかは、わからなかった。
ただ——
ふと、指を押さえたガーゼの下で、微かな痛みを感じた。
それは、小さな傷。
けれど、その傷が引き起こした波紋は、思いのほか大きなものだった。




