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神を殺した世界にて  作者: ほてぽて林檎
第1部:正義に注ぐは聖なる犠牲
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軍の思惑

 


 白衣の職員、研究員たちは、静かな廊下で低く話し合っていた。


「聖女たちの血は、貴重だ。一滴でも無駄に流していいものではない……」


「非常時を除いて、採血の時以外は絶対に外部に漏れてはならない。これがどれほどの問題か……」


「区画E-03でさえ、徹底した監視体制が敷かれている。それが事故とはいえ……」


「……セリアの担当は、お前だったな?」


「……運が悪かったな」


 冷たい声が響く。


 エリック・バーナードは、うつむき、頭を抱えていた。


「……なんで、こんな……」


 誰のせいでもない。

 ただ、皿が落ちただけのこと。

 たった、それだけのこと。


 それなのに——彼の肩には、とてつもない重圧がのしかかっていた。


「事故だとはいえ、運が悪いな……」


 隣にいた女性職員が、絞るような声で言った。


「……俺には、まだ学生の妹がいるんだ」


 エリックがぽつりと呟く。


 その言葉の裏にあるものを察したのか、もう一人の男性職員が小さく息をついた。


「……今は貧困徴兵が行われている」


「……」


「金のない者は、徴兵され、量産型の神代兵器の増産計画のために使われる……」


「……知ってる」


 エリックは拳を握りしめた。


 知っている。

 知っていた。


 聖女の血があれば、神代兵器は量産できる。



「……もし、問題になれば」


「お前の妹も、徴兵の対象になるかもしれないな」


 そう言われた瞬間、エリックは奥歯を噛み締めた。



「……くそっ」


 彼は頭を抱えたまま、苦悩に身を沈めるしかなかった。

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