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神を殺した世界にて  作者: ほてぽて林檎
第1部:正義に注ぐは聖なる犠牲
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閉ざされた空と少女たちの願い

 

 澄んだ鐘の音が礼拝堂に響く。

 この小さな空間はいつものように静寂に包まれ、神への祈りを捧げる少女たちの息遣いだけが微かに聞こえる。


 セリアはゆっくりと目を閉じ、両手を胸の前で組んだ。



「今日も私たちに恵みを与えてくださり、ありがとうございます——」


 決まりきった祈りの言葉を口にする。


 それは毎日の習慣であり、ここで暮らす彼女たちにとって当然のことだった。



 ——隣ではリネットが目を閉じたまま、ゆるりとした呼吸を繰り返している。



 時折小さく揺れる身体からして、おそらく彼女は祈りながら眠っているのだろう。



 ——エルナはと言えば、目を閉じてはいるものの、時折キョロキョロと周囲を見回し、じっとしていられない様子だった。



「……ねぇ、セリア」


 エルナが小声で囁く。

 セリアは目を開け、彼女のほうをそっと見た。


「ん?」


「やっぱりさ、ここを出てみたいな」


 セリアは困ったように微笑む。

 この話は何度目になるだろう。


「でも、ここで暮らしてる限り、外には出られないんだよ……?」


「そうなのはわかってる! でも、なんで? なんでダメなの?」


 エルナは声を潜めつつも、熱を帯びた口調で言う。

 セリアは言葉を選びながら答えた。


「……外は危ない、って聞いたよ」


「誰が?」


「白衣の人たちが……」


「でも、それって本当なのかな?」



 エルナは少し考え込んだ後、小さく拳を握る。


「ねぇ、私たちがお願いしたら、外に行けるかもしれないよ!」


「えっ?」


「二人でお願いすれば、もしかしたら叶うかもしれない! 」


「うーん……」


 セリアは視線を泳がせた。


「リネットも一緒にお願いしようよ!」


「……ん?」


 不意に名前を呼ばれたリネットは、ゆっくりと目を開けた。

 彼女はほんのわずかに首を傾げ、ぼんやりとした瞳でエルナを見つめる。


「……何の話?」


「外に出たいってお願いするんだよ!」


「……それ、いいことなの?」


「いいことだよ! だって、外を見たことないんだよ? 変じゃない?」


 リネットはふわぁ、と小さなあくびをしてから、静かに頷いた。


「……まぁ、いいんじゃない?」


 エルナは勢いよく立ち上がり、セリアの手を取った。


「決まり! これで三人だね!」


「え、えぇ……?」


 セリアは戸惑いながらも、エルナの笑顔を見て、断れなくなってしまうのだった。

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