① 人間個体識別法 - 疲弊、負傷、迷子のサイン
人間は本来、群れを形成し、協力して生存する種族である。しかし、個体の中には何らかの理由で群れから脱落し、独りになった者もいる。人外にとって、それらは最も捕獲しやすく、かつ管理しやすい個体であり、積極的に発見・確保すべき対象となる。本節では、そうした「弱き人間」を判別するための主要なサインについて解説する。
1. 疲弊のサイン
人間は体力の限界が近づくと、以下のような特徴を示す。
・歩行速度の低下:通常の人間は一定の速度で移動するが、疲弊した個体は足取りが重く、歩幅も狭くなる。
・姿勢の崩れ:背筋が曲がり、肩が落ちる。座り込んだり、壁にもたれたりする頻度が増える。
・呼吸の乱れ:息が荒く、時折うめき声をあげることがある。特に坂道や階段を上る際に顕著。
・注意力の低下:周囲の変化に鈍感になり、不意の接触に対する反応が鈍くなる。
このような状態の個体は、長時間の追跡をせずとも容易に確保が可能であり、また抵抗力も低いため、捕獲後の管理が比較的容易である。
2. 負傷のサイン
負傷した人間は、移動能力や判断力が大きく低下し、逃走や反抗のリスクが低い。以下の点に注目すると、負傷の有無を判別しやすい。
・動作の不自然さ:通常の歩行が困難で、足を引きずったり、特定の部位をかばう仕草をする。
・服の汚れや血痕:傷を負った個体は衣服に血の染みや破れがあることが多い。
・顔色の変化:出血量が多い場合、顔色が青白くなり、意識がもうろうとすることがある。
・痛みの表出:しきりに特定の部位を触ったり、苦痛の表情を浮かべたりする。
負傷した個体は回復に時間を要するが、その間に精神的な支配が容易になるため、懐柔の観点からも有用な対象である。
3. 迷子のサイン
群れから逸れた人間は、極めて脆弱な状態にある。以下のような特徴を示す個体は、単独行動の可能性が高く、捕獲の好機となる。
・周囲を頻繁に見回す:目線が定まらず、不安げに周囲を確認する行動を繰り返す。
・移動の不規則性:特定の目的地へ向かうのではなく、方向を変えたり、同じ場所を行ったり来たりする。
・無防備な状態:人通りの少ない場所で立ち止まる、座り込む、涙を流すなどの行動が見られる。
・周囲との交流の欠如:話しかける相手がいない、呼びかけても応じる存在がいない。
迷子の個体は精神的な不安が強く、適切な方法で接触すれば速やかに信頼を得ることができる。特に幼い個体や高齢個体は依存心が強いため、懐柔しやすい。