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34.No.008 トラブルメーカー系ヒロイン×ソフィアの中の人②


 ノエルを救うため、洞窟の迷宮に向かう流れになったので、私はここでアンジェリカを始末することにした。 


 この洞窟は、ゲーム内でも、各キャラのルートで訪れるから、地の利は私にある。


 アンジェリカを誘導し、さっさと赤い扉に押し込めた。

 馬鹿め。

 赤い扉の穴を落ちた先は、巨大迷路の入り口に繋がっている。 


 自分の背丈ほどの大きな岩を押して、落とし穴を塞いで、道を作るなんていう重労働が待ってるんだから。


 落下しながら、迷路に辿りつくから、もと来た道に戻ることもできない。


 力尽きるか、迷路内の穴に落ちるか、はたまたモンスターに襲われるかで、すぐに動けなくなるのがオチ。

 ここでアンジェリカを事故として処理できるのは大きい。


 青い扉をくぐった私は、安全に最深部にたどり着いた。


 そこで目にしたのは、なぜか生きているアンジェリカと、彼女を気に入った様子の吸血鬼。


「そこの彼女〜! アンジェリカちゃんの代わりに、あそこで伸びてる彼に、この薬草を届けてあげて〜」

 

 吸血鬼は私の気配に気づいていたのか、声をかけて来た。

 ここでアンジェリカを生け贄に捧げて、私がノエルを救えば良いのね。

 ナイスアシストだ。


「ノエル殿下のことは、わたくしに、どーんと、お任せください! アンジェリカ様は、ごゆっくり! お先で〜す!」


 そそくさと立ち去り、ノエルに薬を飲ませた。

 目が覚めた時に、私を一番に見るように、ポジションも抜かりなく。


「ここは⋯⋯いったい何が起きたんだろうか?」


「ノエル殿下! 突然倒れられて心配しました! わたくしが危険な迷宮をくぐり抜け、持ち帰った薬で目覚められたのですよ?」


 自分の手柄であることも、しっかりとアピールする。


「そうだったんだね。ありがとう、ソフィア嬢」


 ノエル殿下は私に頭を下げた。



「ところで、アンジェリカ様は⋯⋯?」

「一緒に入られたのですよね?」


 クグロフとトルテが騒ぎ出した。


「アンジェリカ様は、最深部にいた獣人⋯⋯美しい吸血鬼のお兄様と、すっかりよろしくやっておられたので、お声だけかけて、帰って参りました。今ごろもう、お二人は盛り上がって、目も当てられない状態になっているかもしれませんわ」


 わざとらしく口を塞ぎ、男たちから目を背ける。

 残念ながらアンジェリカは、もう、遠い存在になってしまったのよ。

 早く忘れることね。


 しかし、男たちは立ち上がった。

 

「ノエル殿下? この扉は男性がノブに触れると、電流が流れますのよ? 大の大人がうずくまるほどですよ? 中の迷宮も危険な仕掛けが沢山ありますから」


「そんなの構わないよ。どんな危険が待ち受けていようとも、僕はアンジェリカを助けに行かないと」


「自分も行きます。アンジェリカ様だけで送り出してしまったことを、死ぬほど後悔しています」


「私もお供致します。この命に代えても、ノエル殿下とアンジェリカ様をお守りする所存です」


 男たちは迷いなくドアノブに触れ、中に入って行った。


 あれ? 普通に開いたみたい。


 それから程なくして、ノエルにお姫様抱っこされたアンジェリカが出て来た。

 トルテ、クグロフは吸血鬼を背負って運んでいる。

 

 三人は共闘が上手く行ったのか、達成感に満ち溢れた表情で、笑い合っている。

 

 いいな。

 私もこんな風に助け出されたいな⋯⋯



 そこからは、ヒロインらしく、さらわれようとしたけど、そう上手くも行かないので、誘拐を自作自演した。


「ソフィア嬢! 大丈夫でしょうか?」

「おケガは!」

「ご無事で何よりです!」


 助けに来てくれるのは、いつものモブキャラだけ。

 ノエル、クグロフ、トルテの三人は一向に現れなかった。


 そしてとうとう、大事件が起きた。

 夜、いつものように街を一人でうろついていると、薬を嗅がされ、馬車に押し込められた。


 目が覚めると、そこは倉庫だった。


「噂通り、随分とあっさり捕まったな。フロランタン伯爵家のお嬢さん。あんた、しょっちゅう拐われてんだってな」


 犯人の男は下衆な笑みを浮かべた。

 嘘から出たまこと。

 あぁ、私は今日死ぬんだ。


 ゲームの中でも、怖いものは怖い。

 恐怖から逃れるために、私は最低な取引を持ちかけてしまった。


「私なら、王太子の婚約者のアンジェリカ=コンフィズリーを、ここに連れて来ることが出来ます」



 その後、アンジェリカを犯人グループに引き渡すことに成功した。

 しかし、ノエルたちによって制圧された、彼らの証言により、私は投獄されることになった。


「ねぇ、メープル。ノエルはどうして、私に惚れなかったの?」


「ノエルは薬を飲んだ直後、ソフィアの顔をみる前に、ノートの裏表紙に貼られたアンジェリカの写真を見ていたのニャ。ノエルのアンジェリカ好きは、筋金入りなのニャ」


「え⋯⋯ノエルも案外、オタクっぽいところがあるのね⋯⋯」


「ソフィアは、モブ男たちを大切にした方が、幸せになれたように思うのニャ。ソフィアの行動は、自分で火をつけて回った後、消して回る自作自演。いくら消火しても、燃えて失ったものは戻って来ないのニャ。それに加えて、息をするようにアンジェリカを葬り去ろうとする様は、まさしく悪役に相応しいのニャ。続編の悪役令嬢は、ソフィアに決まりなのニャ〜」


「ちょっと。それってもしかして、ここに残って、悪役を演じ続けないといけないってこと? いやよ! 元の世界に帰してよ! ねぇ!」


「ここからが最大の山場なのニャ。今のアンジェリカなら、乗り越えられるのニャ」

 

 メープルは私の言葉を無視して、真剣な表情でつぶやいたのだった。

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