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春風
春の風が吹き抜ける。桜の花弁が舞っていた。
私は目の前にいる少女に向かって叫ぶ。
「優花‼︎」
長い髪を結えた少女は振り向く。
セーラー服が靡き、どこか儚い表情を浮かべて優花は呟いた。
「ごめん、」
踏切へと飛び出すその背中を追う。しかしその刹那、遮断機が降りてサイレンの音が聞こえだす。
つい、弱い私は踏み止まってしまう。
優花は1人笑みを浮かべる。電車は近付く。目の前が歪んで見える。同時に聞こえるブレーキ音。
鈍い音が聞こえ、思わず目を逸らしてしまう。
弱いな、と思った。
自分の現実から目を背けて「いじめ」とかいう地獄から逃げ出そうとしたんだ。
自分の悪い所にも気付かず、改善の余地もない。
それでいて逃げ出したんだから、もうどうでもいいな、なんて。
クラスカースト如きに惑わされている可哀想な少女は自分にとっては何でもない。
なんでそんな事で人生を終わらせたのか。
馬鹿なのか。
私、姉である優希は鼻で笑った。