なんでもない話
ぁぁいとしい人、どうしてあなたはそんなにいとしいの。
ぁぁいとしい人、どうしてあなたはそんなにいとしいの。
ぁぁいとしい人、どうしてあなたはそんなにいとしいの。
ぁぁいとしい人、どうしてあなたはそんなにいとしいの。
そんな言葉とともに彼は目を閉じた。ああ、ああ、ああ目を閉じ、まるで生きているかも分からぬ様相でいながらもそんな言葉がナイブからもれでるように漏れる。
外は程よく湿気り、雨降り、快晴であった。
まるでそこに感情があるかのように振る舞う空気は微かに揺れ、また揺れない。
その中に佇む三色のめまいが道すがら、通る人々にぢもとを与え安定と停滞の間で揺らぐ土路をまるで46億年前からあるように、みせる。
ある男はいう、これがあれか、あのー、なんだ、まああれだ、と意味の無い時間が悠久の空間にただ純粋に積み上がる。こうして悠久は悠久たる。
人は空間にあふれ空間は空間たる。
動物は空間にあふれ空間は空間たる。
物は空間にあふれ空間は空間たる。
空は空間にあふれ空間は空間たる。
「至極、わかりやすいじゃあないか」苦学生然としたメガネの友人はその言葉にまるで様々な考えが在るように言った。私はそれがチェックアウト済みの貝殻のようになんの意味も含まないことを知っていた。何せ私達は苦学生でなくただの学生であるから、苦労による重厚な経験もなければ、全てにおいて優越に過ごしてきた薔薇色の経験もない。そんな我々が今どこで何をしているかと言えば、紛れもない、六畳一間の彼のアパートで時間が過ぎるのをただ待っているのだ、ただ待っているのだ。教授に叱られ部屋を追い出されたあの時から既に36時間が経とうとしているが、頑なに謝ろうとしない彼に抜けがけは悪いと思い付き合い待っているのだ。だがどうだろう彼の思いは変わらないようだ、中間管理職と未来では呼びそうな立ち位置にいるがなかなか辛いものだ。このままでは私の卒業が怪しいのではないかと思い焦る気持ちも生まれてきている。ここはひとつやってみるか。私は彼に飯でも行こうあの近くの中華屋にでも、彼はいいなあいくら持てばいいか、いいよ今日は俺の奢りだ。ほんとか、そりゃいいラーメンにチャーハンもつけていいのか?。まあ…いいだろう。そうして中華屋に行った我々は飯を食う訳だが、私はここで賭けに出た。「あのな、俺もお前に付き合って30幾時がたったわけだが、そろそろ俺の方が不安になってきた。ここはどうだひとつ俺のために教授のところへ行き俺のために謝ってはくれないだろうか。」どうやら賭けは成立していなかったらしい。「そうしよう。」彼はそう言った。どうやら引くに引けなくなっていたらしい。飯を食い終わったあとすぐに教授のところへ行き平謝りをし…気づくと中華屋にいた。目の前で教授が説法をたれており、どうやら許されたらしい。普段なら説法を聞くのが辛いが今は運ばれてくる料理を平らげるのが辛い。食べさせたがる教授はもはや親戚の禿げあがったメガネのオヤジと同じであると思う。そう思ったのだ。彼は安堵からか酒を飲み飯が進んでいるが、どうも私はそうでは無いらしい。満腹がとうの昔に過ぎた頃ようやくそれが止み。気付けば朝である。どうやらまた今日が来たらしい。前の今日とは違い眩しい。
「人は意外と我慢をしている。気付くか気付かないかは本人次第だが。我慢は悪では無く悪く、また善ではなく良い。どちらでもないがどちらでもあるのだ。嘘と我慢は使いようとよく言うが、はたしていつ使えばいいのか、使ったとしてそれがもっともマシな選択であったのかを判断する手立ては無いのであろうと思う。」そう思い私はこれを終わろうと思う。