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真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます  作者: アラサム


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第100話

遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。

今年も本作共々、よろしくお願いいたします。


また今月は本作の最新刊とコミカライズが発売する予定ですので是非、ご購入して頂けると嬉しいです。


では本編です。

「君の実家って思ったより部屋の空きがあるね」


「まぁな」


 戻って来た二人は親父の勧めもあって今日はウチに泊まることになり、ガレスに関しては残っていた俺の部屋で共に寝ることになった。


 ちなみにリリーはもう一つあった空き室で寝ることになっている。親父は明言こそしていないが恐らくリリスの部屋だろう。


「何だか浮かない顔をしているけれど、お目当ての情報は手に入らなかったのかい?」


「いや、そういう訳じゃ無いけど……」


 確かに知りたい情報を手に入れることはできた。

 ただそれが俺の望んでいた情報と言われると決してそんなことはない。何なら聞いた今となっては寧ろ知りたくなかったまである。


「ふむ、なら余程悪い結果だったということかな?」


「…………」 



 完全に図星を突かれた俺が無言を貫いていると「……みたいだね」と苦笑を浮かべるガレスに察されてしまう。


「ちなみに内容は聞いても?」


「……あ~」 


 言っても良いのだろうか?

 いや、そもそも事実を話したこところで「俺、実は悪魔の子なんだッ!」なんて信じて貰えるのだろうか?


「…………」


「言えない感じか」


「いや……まぁ、いいか」


 流石に内容が内容なので躊躇いはしたが、ガレスなら話しても問題無いだろう。


「実はさ」


「ああ」


「俺って悪魔と人間のハーフらしいんだ」


「へぇ、君がハーフねぇ。しかも悪魔と人間の」


 ふーんと言った様子で納得しているガレスの姿に想定していたよりリアクションが薄いな、なんて考えていると「ん?」と訝しげな声が耳に入る。



「悪魔? 今、悪魔って言ったかいッ!?」


「うん」


「はぁああッ!?」


 お、珍しいリアクション。

 普段のガレスからは想像もできないような驚き方に関心を抱いていると思いっきり肩を掴まれる。


「お、おい……」


「あ、悪魔って、あの悪魔かッ!?」


「た、多分その悪魔で合ってるから落ち着こう」


「落ち着けるかッ!」



 まぁ、そりゃそうか。

 俺も同じカミングアウトをされたらガレスと全く同じ反応をする自信がある。


「えっ、待ってくれ。ってことは君は悪魔なのか?」


「いや、親父が言うには人間だってさ。妹は悪魔らしいけど」


「そういえば妹がいるとか言ってたね……。けど、それが悪魔って……」


 ガレスは疲れ切った表情で呟く。

 どうやらもう驚く気力も無くなったらしく、ガレスは頭を抑えながら深いため息を漏らす。


「はぁ……。その話、本当なんだろうね? 俄かに信じ難いけれど」


「俺だってまだよく分かってねぇんだよ……」


 俺だって今日初めて聞いたことだ。まだ理解が追い付いてないんだ。


「そもそも悪魔って実在するのかい? 僕は邪霊と同一視されているものだと思っていたけれど……」



「実在するらしいぞ、知らんけど」


「君の家族だろ? なんで知らないんだ」


「何故かは分からないけど、母さんと妹に関しての記憶が封じられているんだよ。他でもない母さんのせいで」


「なんでさ……」


 訳が分からないよと言わんばかりにガレスは呟くが、俺だって分からないんだ。


 そう疑問を抱かれても何も答えられない。


「……まぁ、けれど君が人と悪魔のハーフなら邪霊と簡易契約が結べたり精霊と契約ができなかったりと納得できる部分があるのも確かだ。それに君はこんな意味不明な嘘を言うような人間でもないし……」


 そこまで話したところでガレスは突然、ハッとした表情のまま硬直する。


「ん? どうしたガレス?」


「…………」


「えっ、マジで何? どうしたもの?」


 黙り込んだままガレスに声を掛けるが、何かを考えているらしく呼び掛けてもまるで反応が無い。


 なんだなんだ、一体どうしたっていうんだ?


「そういえば、あの時……」


「なんだって?」


 ガレスは俯きながらぼそぼそと喋っている為、なんて言っているのか聞き取り辛い。

 故に何を喋っているのか俺が耳を寄せようとした瞬間、ガレスは狙ったかのように勢いよく顔を上げ、互いの頭が衝突する。



「ぐッ!?」


「ぐぉおおお」



 お互いに頭を抑えながら痛みに苦しむ中、ガレスは何かに気付いた様子で俺に話し掛けてくる。


「なんだよ、いきなり」


「思い出したんだ。君がクロとの契約に失敗して暴れた時のことを」


「ジュデッカの森でのことか……」


 そういえばクロとの契約に失敗して意識を失った時、そのまま師匠やガレスに襲い掛かってしまったことがあったな。


 無論、意識を失っているので何も覚えていないが目覚めたら全身傷だらけな上にガレスもボロボロだった辺り、相当暴れたようだが……。



「あの時のことで何かあるのか?」


 俺の記憶ではバカ高い飯屋に行ってその代金を払わされそうになったことが一番記憶に残っているが……あの代金払わなくても大丈夫だよな?


「ああ、あの時のロークは普段の君と比べておかしなところが幾つもあったんだ」


「おかしいところ?」


「そうだ。纏う雰囲気や戦い方、それに一人称まで変化していた」


「…………」


「それに戦いの最中、君は確かに『人間如きがッ!』と言っていたんだ」


「俺、そんなこと言ってたの?」


 人間如きがッ! って、人間じゃないなら俺は何なんだよ……。



「もしかしたらアレは君の中に宿っている悪魔の血が反応したんじゃないか?」


「俺の中の悪魔の血が……」



 自分の手を見つめながら考える。

 まさか邪霊と契約を結ぼうとしたことで俺の悪魔の血が反応したっていうのか?



「勿論、ただの憶測だ。けれど、あの時の君の異常さを考えるとあながち間違えとも思えないんだ」


「……悪魔について調べる必要があるな」


 悪魔についての知識がほとんどない以上、ガレスの考えを肯定することも否定することもできない。

 できれば親父に話を聞きに行きたいが、あの感じではどこまで話してくれるか分かったものでは無い。


 諦めて自分で調べた方が良いだろう。



「僕も協力するよ」


「ああ、助かる」


 協力を申し出てくれたガレスに感謝しながら、やっぱり話しておいて良かったと思う。

 俺一人では恐らく現実を受け入れることに精一杯でここまで考えることができなかっただろう。


 やはり持つべきものは友か。



「ところで聞きたいんだけどさ」


「もし君が人と悪魔のハーフであることを話した方が良いかを聞いているなら隠しておいた方が良いよ。絶対に」 


 俺の質問を先読みしたガレスの返答に、だよねーと思いながら頷く。

 精霊と契約できないだけならただの才能無いヤツで済むが、悪魔の血が流れているとなると話が変わってくる。 下手をすると邪霊と同じ扱いを受けて危険人物として処刑される可能性まである。


「僕もこの件は墓場まで持っていく覚悟だ」


「精霊と契約していないことも墓場まで持っていく覚悟で聞いて欲しかったけどな」



 まぁ、とはいえそれだけガレスも契約精霊がいないことと悪魔の血が流れていることでは天と地ほどの差があると思っているのだろう。



「とにかくこの件は一旦、僕ら二人だけで調査しよう」


「ああ、分かった」


「合点承知」


「…………」


「…………」




 ———気のせいだろうか。

 今、ここにいる筈のない人物の声を聞いたような気がするんだが。



 横目でガレスを見るとあっちも俺を見ていたらしく視線がぶつかる。

 どうやらお互いに同じことを思ったらしい。 俺はガレスとアイコンタクトを交わすと恐る恐る視線を声が聞こえた方へ向ける。



「…………」



 案の定と言うべきか、それとも当然というべきか、可愛らしいパジャマに身を包み、枕を片手に抱えたリリーの姿がそこにはあった。




「……リリー、いつからいた?」



「ふっふっふっ」


「不敵な笑みを浮かべてないで教えてくれない?」



 無駄に強者感を放ちながら笑うリリーに凄く嫌な予感を覚えながら質問する。



「『もし君が人と悪魔のハーフであることを話した方が良いかを聞いているなら隠しておいた方が良いよ。絶対に』ってところから」


「終わったか」


「タイミング完璧過ぎない?」



 俺が天を仰ぐ横でガレスは諦観の表情を浮かべながらタイミングの悪さを嘆いている。



「それでロークって悪魔と人のハーフなの?」


「…………」


「…………」



 リリーのその質問に再び俺とガレスの視線が交わる。

 一瞬、言い訳を考えるが何も思い付かない上にそもそもリリーを誤魔化せるほどの上手い言い訳を考えられる気がしない。



「……言葉通りの意味だ。俺は人と悪魔のハーフなんだよ」



 暫く悩んだ末に俺は諦めて真実を暴露することにした。

 まぁ、暴露っていうか既に知られたことではあるが改めて認める形で俺はリリーにそう言うと下げる。



「リリーさん、このことはどうか黙っていて下さい」



「…………」



 俺の頼みを聞いたリリーは特に何も言わずにジッとこちらを見つめている。



「あの、リリーさん?」


 今、黙られると非常に怖いんだけど……。



「……ズルい」


「えっ?」


「ん?」



 今なんて言った? 俺とガレスが困惑した声を漏らしているとリリーが枕を床に叩き付けながら叫んだ。



「二人ともズルいッ!」


「へっ?」



 ズルいって何が?



「私だけ仲間外れは良くない」



「いや、そういう訳じゃ……」



 どうやら自分を除け者にして内緒話をしていたことが気に入らないらしい、 決してリリーを仲間外れにしようという意図は無いが、確かに彼女からすれば今の状況は仲間外れと思うのも無理は無いだろう。



「……悪かった、リリー。けどこれは———」



「なら、ちゃんと説明して」



「……はい」



 俺はリリーの圧に押し負けてガレスに話したように自分の家族について説明を行う。 

 リリーは黙ってこちらの話に耳を傾けるとやがて納得した表情で頷いた。



「なるほど」


「……え、それだけ?」


「……?」



 ガレスのようなリアクションを予想していただけにリリーの淡白なリアクションに俺は困惑してしまう。

 結構、衝撃的な話をしたつもりだったが興味が無いのか、はたまたあまりにも突拍子もない内容だと信じていないのだろうか?



「それにしても妹がいたんだ」



「ああ、それも悪魔のな……」


「可愛いの?」


「ん? まぁ、可愛くはあったな」



 そこ気になるの? と思いながらも俺は写真で見たリリスの姿を思い返しながら頷く。

 それこそ本当に血が繋がっているのかと疑わしくなるような可愛さをしていた。思い出せないのが残念で仕方ない。




「むーん」



「何だよ……っていうか、他に気になることないの?」



 妹のことを話すと何故か不満げな表情を浮かべるリリーを俺はそう尋ねる。

 悪魔のこととか気にならないんだろうか。




「別に」



「えぇ?」




 リリーの返答に俺が気の抜けた声を漏らしていると彼女は「だって」と枕を弄りながら口を開く。



「精霊と契約していなくても悪魔でも、ロークはロークでしょ?」


「リリー、お前」


「前にもそう言った。忘れた?」


「……いや、思いだしたよ」



 そうだ、大精霊演武祭を終えて落ち込んでいる時に俺をそう言って元気付けてくれたんだったな。



 ここ最近、色々なことがあったせいですっかり忘れていた。



「悪かった、リリー。確かにお前に隠しごとをするべきじゃなかった」



「うむ、分かればよろしい」



 俺がそう言って頭を下げるとリリーは腕を組みながら鷹揚に頷くと次にガレスへと視線を向ける。


「……悪かった、リリー。僕も君に相談するべきだった」


「うむ、よろしい」



 視線の意味を察したガレスが両手を上げながら謝罪の言葉を口にすると、リリーは満足げに頷いた。



「二人とももっと私の存在を大事にするように」


「「はい」」



 俺たちが同時に返事をするとリリーは「それじゃ……」と呟きながら俺の布団に入ろうとする。


 おい、ちょっと待て。



「お前、どこで寝ようとしてるんだ? 部屋に戻って自分の布団で眠りなさいよ」



「ローク、さっきの言葉もう忘れたの?」



「えっ、あっ!」



 そうだ、リリーを大事にするって約束したばかりじゃないか! 何をやってんだ俺は!



「すまなかった、リリー」


「分かってくれれば良い。それよりも今日は遅いからもう寝よう」


 言われて部屋の時計に目を向けると確かに既に時刻は十二時を回っている。そろそろ寝ないと明日に響くだろう。



「そうだな、寝るか」



「ほら、ローク」



 そう言って自分が潜っている布団をポンポン叩きながら誘導してくるリリーに従って俺も布団に潜り込もうとして———。



「いや、ダメだろ! お前、自分の布団に戻れよッ!」



「ローク、さっきの———」



「それとこれは違うだろッ!?」



 先程までリリーに負い目を覚えていたこともあり、流されていたがこれは大事にするとかしないという話ではない。倫理的な話である。



「私だけ仲間外れにする気?」



「違う! 男女なんだから普通、部屋は別にするだろッ!」



「私たちの絆ならいけるいける」



「いけないわ! ガレス、お前からも———」



「zzz」



 どこまでも能天気なリリーにそう叫びながら俺はガレスに視線を向けるがその頃には寝息を漏らしながら眠りについている彼の姿があった。



「こ、こいつ……」



「ほら、ローク」


 早くも夢の世界へ逃走を果たした親友に震えていると再びリリーから布団に入るように誘われる。 だから無理だってッ!



「……分かった、それじゃお前はその布団使っていいから。代わりに俺はお前の布団を使わせて貰うぞ」


 暫く悩んだ末に俺は自分の布団を諦め、リリーの布団がある部屋で寝ることを決意する。まぁ、ガレスとリリーを一緒にすることになるが流石に大丈夫だろう。


 アイツもう寝てるし。


 そんなことを思いながら部屋を出ようとした俺は部屋の出入り口を塞ぐように佇んでいる貝の精霊こと蜃によって足を止めることになる。



「リリー」


「…………」




 俺が名前を呼びながら抗議の視線を向けるとリリーは相変わらず自分の隣の空間をポンポンと叩き続けており、ジッとこちらを見つめる彼女の様子と相まって怖くなってきた。



「リリー、コイツを退かしなさい」


『シュコー』


「退きたくないって」


「絶対言って無いだ———グゴッ!」




 コイツ、霧を出してるだけじゃんと言おうとしたところで突然、呼吸が苦しくなる。

 何事かと思えばいつの間にか触手を伸ばして俺の首を絞めている上に幻術も掛けてきているようで急激に意識が遠のいていく。



「お、おい、り……」



「ナイス」


『シュコー』




 そのまま意識が遠のいていく中、俺が最後に聞いたのは自身の契約精霊を褒めるリリーの声だった。

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― 新着の感想 ―
いつも面白い話をありがとうございます。 ひとつ質問があるのですが、序盤のロークの妹がいることへのガレスの反応で60話での会話が繰り返されているのはわざとなのでしょうか? 過去の会話を伏線にするでもなく…
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