第98話
皆様、お久しぶりです。
先日はクリスマスでしたね、いかがお過ごしでしたか?
私はひたすらfgoで柱を折っていました。
それから宣伝です(唐突)。
年明け1月25日、本作の4巻とコミカライズ版の一巻が同時に発売となります!
4巻の刀さんのイラストは言わずもがな、コミカライズのトモヒサさんの絵も素晴らしいの是非、この機会に読んでみて下さい!
では、改めて本編です。
「それでは明日の昼過ぎにお迎えに上がります」
「はい、よろしくお願いします」
アイレ運輸の精霊師と明日の予定を確認して別れた俺たちは視線を故郷、アルズスへと向ける。
「ここがロークの故郷か……」
「思ったより普通」
「普通で悪かったな」
アルズスの町を見て拍子抜けだと言わんばかりの表情を浮かべるリリーに俺は苛立ちながら言い返す。
「まぁまぁ。僕はこの長閑な雰囲気、嫌いじゃないよ」
「そりゃどうも」
まぁ、自然が豊かな点を除けば特にこれといって特色もない普通の田舎町だ。リリーの普通という発言は的を得ているだろう。
「それでどうする、ローク?」
「まぁ、とりあえず普通に家に行くつもりだ」
知り合いに関しては後で挨拶すれば良いだろう。
「案内せよ」
「はいはい、姫様の仰せの通りに……」
謎に態度の大きいリリーに呆れながらもそう言って話に乗ってあげると途端に上機嫌な様子を見せる。
「………」
「ガレス、どうかしたか?」
何故か周囲を警戒した様子で見回しているガレスに気付いた俺はそう声を掛ける。
「いや、何でもないよ」
「そうか? ならいいけど」
俺が声を掛けるとガレスはそう言って何事も無かったのような様子を見せるが、アイツが何かを警戒していたのは確かだ。
とはいえ、ここら辺は野生の精霊も低位の精霊ばかりで高位精霊が現れることは滅多にない。特に警戒する必要は無いと思うが……。
「って、おい待て、リリーッ! そっちじゃないッ!」
ガレスと話していると勝手に見当違いの方向に歩き出したリリーに制止の声を掛ける。
なんでアイツは案内しろって言っておきながら自分で勝手に進んでるんだッ!?
******
「あれ、もしかしてローク君かい!? 大きくなったねぇ~」
「はい、お久しぶりです。おばさん」
「ローク、戻ってきてたのか!? ちょっとウチ寄ってけよッ!」
「すみません、先に家に戻るんで後で行きますよ」
町を歩いていると次々に話し掛けてくる知り合いたちに挨拶をしながら家へと急ぐ。
本当はみんなとゆっくり話したいところだが、今回はあまり時間が無い。さっさと親父にあって話をしなければ………。
「随分と人気じゃないか」
「まぁ、みんな応援してくれていたからな」
揶揄うようなガレスの言葉に俺はそう答える。当時の俺はその高い霊力も相まって町のみんなの期待を一身に背負っていた。
「あら、ローク! こっちに戻ってきたのね! それなら………って、待って隣にいるそのイケメンって、もしかしてオーロット様ッ!?」
「は、はい。確かに僕はガレス・オーロットですが……」
そんな俺を見送ってくれた町の人々の中の一人、サラ姉ちゃんが声を掛けてくれるも次の瞬間にはその視線は俺の隣のイケメンへと向けられる。
「きゃぁあああッ! 大精霊演武祭での活躍見ていましたッ!! 良ければサイン頂けないですか!?」
「サインですか。別に構いませんけど……」
「あ、ありがとうございますッ!! す、少しだけ待ってて下さいッ!」
既に俺の姿は消え去ったらしいサラ姉ちゃんは興奮した様子でガレスにサインを頼み込み、それが許されると感謝しながら猛ダッシュで紙とペンを探しに走って行ってしまう。
「元気な人だね」
「面食いなんだよ、あの人……。って、あれ? リリーどこ行った?」
アイツ、また消えやがったと思いながら周囲を見回していると老夫婦と会話しているリリーの姿が目に入る。
「おやおや、可愛らしい子だねぇ。クッキー食べるかい?」
「食べる」
どうやらリリーは爺さんに餌付けされているらしく、手渡されたクッキーを美味しそうに食べている。
「えっと、これで大丈夫かな」
「ありがとうございますッ! 家宝にさせていただきますッ!!」
「いや、そこまで大事にしなくても……」
「良い食べっぷりだねぇ~。こっちのお菓子もお食べ」
「いただく」
「………」
サインを書き終えてサラ姉ちゃんから大袈裟に感謝されるガレスと今度は婆ちゃんからお菓子を貰ってもぐもぐと食べているリリー。
コイツら、一体、何をしにきたんだ……。
******
「はぁ、やっと着いた」
俺は深いため息を漏らしながらようやく辿り着いた実家に視線を向ける。
あの後も町の人々に絡まれ続けたことにより、当初の予定よりもたいぶ時間をかけての到着となってしまった。
「町の隅にあるんだね」
「けど、おっきいね」
俺の家を見ながら口々に感想を漏らす二人組に適当に言葉を返しながら我が家の扉をノックする。
「………」
「………」
「……反応ない」
暫くしてもう一度、ノックをしてみるがやはり家から反応が無い。
もしかして出掛けているのだろうか。
「いないみたいだね、どうする?」
「多分、少しすれば帰ってくるとは———」
「俺の家の前で一体、何をやっているんだ?」
俺の言葉を遮り、背後から聞き覚えるある声が耳に入る。
確信を抱きながら振り替えると記憶の中よりも少しだけ老けた印象を覚える筋骨隆々の男、俺の父親であるロイ・アレアスだった。
「ん? お前たち、その服装よく見たらユートレア学院の……って、ロークかッ!?」
最初は家の前にたむろしている三人組を見て警戒心を抱いていたが、やがて俺の顔を見て息子ということに気付いた親父は驚いた表情を浮かべる。
「お前、いつの間に帰って来たんだッ! 元気にしてたかッ!? っていうか後ろの二人はお友だちかッ!?」
「親父、ちょっと落ち着け。一気に質問するな」
テンションが上がり、矢継ぎ早に質問をしてくる親父を宥めていると二人が前に出てくる。
「初めまして。ロークの友人をさせて頂いているガレス・オーロットです。よろしくお願いします」
「リリー・オラリアです。よろしくお願いします」
そう言って頭を下げる友人たちに親父は「そうかそうか!」と嬉しそうに笑う。
「こんなイケメンと美少女の友だちを作るとはお前もなかなかやるじゃないか、ローク!」
「うるさいな、それより家に上がらせてくれよ」
肩で小突きながら揶揄ってくる親父をうぜぇと思いながら家に入れるように頼み込む。
「確かにそうだな。お二人さん立ち話もなんだ、どうぞ中に入ってくれ」
そう言って玄関の扉を開けて家に招き入れる親父にガレスとリリーは頭を下げながら入っていく。
「変わらないなぁ」
二人に続いて家の中へと入った記憶の中に残る光景と変わることのない玄関の様子に内心で安堵を覚えながら呟く。
その間にも二人は親父に続いて廊下を進み、そのままリビングへと辿り着く。
「何だか落ち着くね」
「立派な家」
「ハハハ、そう言って貰えると嬉しいな」
リビングをぐるりと見回しながら二人が零した感想を聞いて嬉しそうな親父を横目に俺もリビングへと足を踏み入れる。
リビングの様子は玄関と同じく幼い頃の記憶と変わらないが、それよりも部屋全体の整理整頓が行き届いていることに驚かされる。
そんなまめな性格では無かったと思うが、流石に一人暮らしということもあって気を付けているのだろうか。
「さて、俺の自己紹介がまだだったね。俺はそこのロークの父親であるロイ・アレアスだ。二人ともよろしくね」
そう言って二人と握手を交わす親父を他所に俺は台所へと足を運んでいた。
とりあえずお茶でも出そうかなと来てみたは良いが、どの棚に何が入っているんだかさっぱり分からない。
「親父、茶葉どこ~?」
「ああ、俺が出すからいいよ」
リビングからそんな返事が聞こえてきたと思うと台所に来た親父は慣れた手付きでカップと茶葉を用意していく。
「それで、いきなり何の用だ?」
「え?」
「ただホームシックになって帰って来た訳じゃないんだろ?」
「……俺自身のことについて聞きたいんだ」
そう言って視線を向けくる親父の顔を見て下手な隠し事はできないなと察した俺は頷くと来た理由についての説明を行う。
「お前自身のことって……俺の息子って情報以外に何が知りたいんだ?」
「俺の身体についてって言えば良いのかな。ちょっと気になることがあるんだよ」
「気になること?」
「親父は知らないと思うけど……俺、精霊と契約が結べないんだよ」
「ほう、精霊と契約が結べない……えっ?」
「だから精霊と契約が結べないんだって」
「はぁあああぁあああああああああああッ!?」
「だ、大丈夫ですか?」
「親父がお湯を零しただけだ! 平気だッ!」
親父の声を聞いて驚いたガレスがリビングから声を掛けてきた為、俺は大丈夫と言葉を返す。
「声がデカいよ」
「いや、だってお前………精霊と契約できないってどういうこと? お前、今精霊と契約してないの?」
「してないよ」
だって契約できないし。
「マジか……」
俺がそう言うと親父は信じられないと言わんばかりの表情を浮かべる。
「えっ、じゃあお前、今まで精霊いない状態でユートレア学院に通ってたの?」
「そうだよ」
「ヤバ」
ヤバ、じゃねぇよ。
ぶん殴るぞ。
「冗談だ。けれど…………そうか、精霊と契約ができない……か」
そう呟く親父の様子は何か心当たりがある様子だった。
「やっぱり何か知ってるのか?」
「…………」
俺の言葉に親父は返事をせず、カップの水面に反射する自分の顔を見つめながら何かを考えている様子だった。
やはり、親父は何かを知っているのは間違いない。
「おい、おや———」
「———分かってる」
故に追及を続けようとした俺は直後に親父から漏れた静かな声とその真面目な表情に思わず口を噤んでしまう。そして今更ながら思う。もしかしてこの話は俺が思っている以上に何か重要な秘密が隠しているのだろうか……と。
怖気づく俺に対して親父は「後で話そう」と先にガレスたちに出すお茶菓子を棚から取り出しながら俺にリビングに戻るように促される。
「なんだか騒がしかったけど、大丈夫だったかい?」
「ああ、親父がドジッただけだよ」
促されるままにリビングに戻るとことこちらに気付いたガレスから先程の親父の大声のことを尋ねられたので俺は適当に誤魔化す。
「それで君の聞きたかった話は聞けそうかい?」
「恐らくな」
どんな内容かは分からないが、親父の反応からして何か隠しごとがあるのは確実だ。
「粗茶だけど、どうぞ」
「ありがとうございます」
「いただきます」
お茶とお菓子が乗ったお盆がテーブルに置かれるやリリーは素早く手に取って口に含む。
別に気にしちゃいないが、遠慮ってものがないなコイツ……。
「おい、リリー」
「ハハハ、良いよ。ガレス君も遠慮せずに食べてくれ」
「もぐもぐ」
流石に遠慮が無さ過ぎだと思ったガレスが窘めようとするも、親父から先んじて気にしなくて良いと言われてしまった為、溜息を漏らすだけに留めた。
「そう言えば二人に少し尋ねたいことがあるんだけど、いいかい?」
「はい、何でしょうか?」
「モグッ!? んぐッ」
「お菓子を飲み込んでから喋りなさい」
お菓子を食べながら返事をしようとして咽るリリーにお茶を渡す。
「学院でのコイツの様子が知りたいんだけど、教えて貰えないかな?」
「おい、親父ッ!?」
「はい、構いませんよ」
「よせ、ガレスッ!」
「ロークは———」
「リリー、喋らなくていいッ!!」
親父の要求に応じて学院での俺の様子を語ろうとする二人を制止するが、彼らはガン無視して俺のことを語り始めるのだった。




