〜僕とおじさんと思い出と〜
近所のおじさんが死んだ。いや、正確に言うと殺された。
45歳という若さだった。お父さんの後輩の友達だった。
だから、お父さんと仲が良かった。僕もそうだった。
血が繋がっている訳じゃなかった。なのに、僕が産まれたばかりの時、ベビーシッターの様に毎日家に来て、毎日僕の世話をしてくれていた。
おじさんには色々教わった。お父さんも、僕も。
僕は今、17歳だ。今から言う話は、昔のこと。
大体13歳くらいの時のこと。
自惚れていた。調子に乗っていた。
度が過ぎた。過ちを犯した。万引きをした。
カッコイイと思った。友達と一緒に、計画を立てた。
それを実行した。近くのコンビニで。夏頃だったはず。
ゲーム用の1万円のカード。それを2枚。
僕の分と、友達の分だった。
こっそり棚から盗って、なんともない顔で店を出た。
すぐに店員が困り顔で店から出てきた。
頭が真っ白になった。
「取り敢えず警察呼ぶから」
警察はすぐに来た。警察署まで連れていかれた。
お母さんと、友達のお母さんを呼ばれた。
警察にも、お母さんにも、お家に帰ると
お父さんにもギタギタになるまで怒られた。
僕たちが万引きした噂は、学校中のみならず
町中に広まった。勿論、おじさんもその話を聞いていた。
万引きをした1週間後、たまたま学校からの帰り道で
おじさんと会った。僕のお家の前で会った。
見せる顔が無かった。
おじさんは目一杯タバコを吸い、ふぅと吐いた。
そうしたら地面に擦り、それを排水溝に捨てた。
怒られるかと思ったが、それは諭しているようにも取れた。
「俺もなあ、ヤンチャしてる時期があったんだ」
「犯罪というより、ケンカ番長みたいだった」
「すごく調子に乗っていたよ。今のお前みたいに。」
「ただ、強いヤツにギタギタにされた。」
おじさんは遠くを見ていた。
ただ、顔の向きはしっかり僕の方を見ていた。
「その時思ったよ。俺ってなんて馬鹿馬鹿しいことしてるんだ、ってね。」
僕は涙が流れていた。
おじさんの諭す声の優しさと、怒られなかった安心感が混ざった。
「お前は今、人生という道を踏み外している。」
「ただそれはな、踏み外すものじゃなくてよ、」
「踏み締めるもんなんだよ。生きてるーって。」
「ミスもたまにはある。それは別にいいんだ」
「踏み外したら道にまた戻ればいいんだ」
「ただ、踏み外したまま真っ直ぐ歩いたらよ、」
「そのうち、もう道に戻れなくなるからさ。」
夕日がおじさんを照らして、おじさんもまた、僕の心を照らしていた。