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炎の魔法

ここから魔法の紹介となります。

今まであまり出番のなかったヴェラの母、ルー様の出番です。

―――ピェスカーネ学院、大講堂


「さぁ、最初は美しき炎魔法の女王、ルー・A・ループス様!ループス領の領主夫人にしてこの学院の卒業生!」


マシューが声を張り上げてルーを紹介する。その謳い文句に呼応するかのように教壇が紫の業火に包まれた。小さく悲鳴を上げる新入生達。一方で、上級生は突如現れた業火の美しさと練度に圧倒される。


「あらあら……小さな魔法使い達を驚かせてしまったみたいね。でもその反応は正しいわ」


ルーの未だ見えぬ姿を探してキョロキョロと辺りを見回す新入生が小さく声を上げる。


「フフフ、見つかってしまったわ」


ユラ……と陽炎が揺らめいた後真紅のアフタヌーンドレスを着たルーが姿を現した。最初から壇上にいたのである。彼女が杖を掲げると紫炎は全てその杖先に集まった。


「さぁ、皆さんこんにちは。炎使いのルーよ。今日は魔法士の1人としてこの場に立つわ」


既に拍手喝采を受けつつもルーはおっとりとした笑みを浮かべると無詠唱で炎の蝶を生み出した。蝶はヒラヒラと空中を飛んだ後、激しく燃え上がり消えてしまった。


「あなた達は今の蝶を綺麗と思うかしら?消えてしまって悲しい?」


ルーは顔を見合わせて感想を言い合う生徒達の様子を見渡すと小さく呪文を唱える。


「『不死鳥よ、飛翔せよ』」


杖の先から2メートルはあろうかという巨大な炎の鳥が出現し、講堂の上空を火の粉を撒き散らしながら飛び回る。


「これはどう?同じ炎から作った精霊召喚よ」


巨大な炎の鳥に怯える新入生と、発現の難しい紫炎の魔法や最上位の炎精霊をいとも簡単に作り出すルーの力量に驚愕する上級生で講堂は騒つく。


「怖い、と思うのは当然の感覚よ」


ルーが杖を掲げると、その先につくり出した不死鳥が止まった。あくびをして生徒達を不思議そうに見ている。


「有史以前……私達は火と近づく機会がなかった。そもそも山火事や大火災を引き起こす原因なのだから本来必要な危機管理能力だわ。今も火の危険性は変わらない。近づき過ぎれば、燃え尽きてしまうわ」


先程マシューが投げた紙屑に不死鳥の羽根が落ち、静かに燃え尽きた。


「でも……どうしようもなく炎は美しいと思ってしまう」


ルーの瞳が煌々と揺らめきながら燃える不死鳥を捉えて離さない。不死鳥は嬉しそうに鳴いた後、静かに燃え尽きて灰に変わった。


「さて、今のは高位精霊の召喚よ。いきなりこんなことが出来る人は誰もいないわ。さぁ、基本の炎を灯す魔法をやってみましょう」


ルーがニッコリと微笑む。そして杖を掲げるとその杖先に小さな炎が付く。その様子を見て学生達も皆一様に炎を灯す。揺らめく者、火力の強い者、様々である。


「今、あなた達は炎を思い浮かべて、そのイメージに集中させて魔力を込めたからこうして炎が灯ったのよ。

今少しでもイメージが揺らげば炎は異なる形となるわ」


そう話すとルーは杖先から火柱を作り出し、生徒達を驚かせる。


「魔法のコントロールが完璧になれば無詠唱でこのように自分の好きなように制御できるわ。

でも、今のあなた達はそういったことはできないだろうし、普段から無詠唱でやろうとするといくら魔法のエキスパートであろうと、無駄に魔力を消費してしまうわ。だから余裕がある時無理せず詠唱をするのよ。

それに、詠唱することでより精度の高い魔法を相手に放つことができるから、難しい魔法は敢えて詠唱する魔法士が多いわ」


「『炎よ、我が行く道を焼き払え』」


教壇の端から端までを、業火が覆った。燃え盛るステージを見て怯える生徒がいた為か、ステージの炎は一瞬で消えてしまった。


「あらあら……怯えさせちゃってごめんなさいね。

でもそれこそが炎魔法のダメージの基本なの。誰しも火への恐怖は持っている。

その恐怖が魔法火を本物にするのよ」


妖しく、美しくルーは微笑む。まさに魔女そのものといったところだろうか。


「炎の魔法属性を持っている魔法士なら、実体のある火も操れるわ。魔法火と違って、魔法障壁やイメージの取り消しも意味をなさない。

でも、使用者本人も触れれば火傷してしまうし、近づき過ぎて燃え移ろうものなら簡単に命を落とすわ。だから決して油断しないこと」


真剣な眼差しで生徒達に告げるルー。生徒達は大きく頷き、誰もがキラキラとした目で彼女を見ている。


「炎の魔法士はどうしてか炎に惹かれてしまうの。

最上位魔法……というかもはや天変地異で、御伽話のようなお話なのだけれど。あまりに雨が降り続けた地があった。その地にいた偉大な炎の魔法士がその魔力の全てを賭けて……その大雨を止めた……

そう、最上位の魔法は天候変更」


物語調に語り終えると、息を呑む生徒達。


「それは決して使えない、使ってはいけない禁忌の術」


重々しい口調でルーは告げる。その言葉には確かな重みと恐ろしさがあった。


「これにて炎魔法の講義は終わりよ。最後までしっかり聞いてくれてありがとう、楽しかったわ♪」


そう言うと万雷の拍手がルーに向けられる。最後まで炎魔法の使い手らしく、陽炎に包まれて姿を消してみせた。


「さぁ、炎の魔法士よ。炎の女王の講義を心に留め、これからも素晴らしい魔法士を目指して日夜勉強に励め!」


マシューが再び声を張り上げると生徒達は元気よく返事をするのであった。

魔法の表現で難しいですよね。ルーさんは炎魔法に魅入られた優秀な魔法士なので、より威力が増しています。


面白い、続きが読みたいと思った方はブックマーク、高評価etc…よろしくお願いします。


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