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ループス四大貴族

前々から名前だけ出てきていたループス四大貴族の登場です。個性派揃いな重要人物達です。

―――ループス城下町、来賓館


ヴェラは会合の為にループスに集まる四大貴族の宿泊地である来賓館を訪れていた。ループス領で最も格式の高い来賓館であり、四大貴族および、他領からの使者や領主などの宿泊もこの館である。そんな館にはいくつかの特殊な部屋およびループス領主親族しか知らぬ隠し通路隠し部屋などが多く存在する。また、ループス四大貴族同様四季を冠する部屋が四部屋ある。四大貴族が宿泊するのは自身の四季の名を冠する部屋である。


―――春霞の間……


ヴェラはハルツゲ家当主のいる春霞の間の扉を軽く叩く。


「失礼、ヴェラ・A・ループスよ」


「……ヴェラ様?少々お待ちください」


少し驚いたような若い男性の声が中から聞こえ、ヴェラが少し待っていると、ドアがガチャリと開く。当主は1人しかいない侍従を横に彼女を迎える。


「イオリ君、久しぶりね!」


「ヴェラ様もお元気そうでなによりです」

ヴェラはその男の顔を見て、嬉しそうに声をかける。そんな彼女を見て、イオリと呼ばれた男もまた顔を綻ばせる。


イオリ・ハルツゲ……それが彼の名である。ヴェラとは4歳ほど歳が離れており、まだ彼も若い統治者である。春告の通り、春の訪れを心待ちし、春の恵みを最も活用している地域、リュコスを統治している。リュコスは緑豊かな自然を満喫できるある種の観光地として発展しつつも、ループスの農業を支える非常にのどかな地域なのである。そんな地域故に、ハルツゲ家は決して経済的に豊かではないが、住民達からの信頼や親愛を一番受けている。


「ところで今日はどうしたのですか?会合にはまだ日付がありますが……、何か私達に頼るような別件でも?」


フォルテより少し小柄なものの、しっかりとした体格にふわっとしたアッシュゴールドの髪を持つ青年である。彼は小さく首を傾げ、ヴェラに疑問を投げかける。


「えぇ、ピェスカーネ学院で魔法の授業をするのに植物魔法の特別講師として出席して欲しいの。イオリ君ならきっと教えるのも上手でしょう?頼めないかしら?」


ヴェラが微笑むとイオリは一瞬表情を曇らせ、困ったように苦笑した。彼の表情の変化を見逃すヴェラではない。心配そうにイオリに声をかける。


「イオリ君、どうかしたの?」


ヴェラに問われ、イオリは目を泳がせる。逃げ場のない視線と部屋の中というこの状態でヴェラの追及は免れない。力なく微苦笑を浮かべながら彼は話す。


「僕は……とても最高峰と呼べるような実力ではありませんよ、ヴェラ様。四大貴族のうちで最も弱いだろうし、同じ講義に立つのはとてもとても……」


視線を落とすイオリを見てヴェラはふぅ、と小さなため息をついた。そして……


「イオリ!!自信を持ちなさい!」


普段の2倍の声量でヴェラに激励され、ビクッと肩が跳ねるイオリ。普段から穏やかな性格かつ、自己肯定感の低い男なのである。ヴェラの喝にシャンと姿勢を正す。


「は……はい。ヴェラ様」


随分と昔からこのようなやり取りをしていた……、そうヴェラはふと思いながら成長したイオリの姿を見る。

光を秘める黄金色の瞳、くせっ毛の髪、自信の無さげな表情。昔から変わらないようでいて、成長していた彼を見て小さく微笑む。


「……ねぇ、授業の日の夜食事にでも行かない?」


人懐っこい可愛らしい笑みを浮かべるヴェラ。イオリは目を丸くして驚く。


「それは……プライベートで、ということですか?」


イオリが少し不思議そうにヴェラに問い返す。ヴェラは面白そうに笑って答える。


「えぇ、そうよ。いいかしら?」


ヴェラの様子を見てイオリは咳払いをして緩む口元を誤魔化した。


「は、はい。光栄です」


ヴェラはイオリのその反応にニッコリと笑うと手をヒラヒラとさせ春霞の間を後にした。


―――炎夏の間……


「……失礼、ヴェラ・A・ループスよ」


「ん?……あぁ、白のヴェラ嬢か」


ノックと同時に低くくぐもった声が部屋の中から聞こえる。近づく足音と共にガチャリと戸が開く。中から顔を出したのは赤茶の髪の男が顔を出す。その男の目元にはハッキリとクマが浮かんでおり、少し不健康そうな印象を与えている。


「うおっ、そんな近くにいるとは思わないじゃねーか」


開けた扉の目と鼻の先でヴェラは男をジト目で見ていた。後ろに見えるは侍らせている侍女達。ヴェラを見ていそいそと部屋の片付けを始めている。


「カザンさん……もう少し部屋を綺麗に使っていただけませんか?」


床に転がる酒瓶、積み上がる本、脱ぎ捨てられた服……。そしてこれだけの侍女がいたという事は……と考えて、頭が痛くなってくるヴェラ。どう考えてもここ数日でこれほど汚れるのはおかしい、と吐息をつく。


「ヴェラ嬢、何なんだ要件は。俺になんかあってきたんだろ?早いとこ要件済まそうぜ」


自堕落な事この上ない……と、ヴェラが呆れると、カザンと呼ばれた男はやれやれと手を挙げた。


「おい、お前らちょっと退いてろ」


命令口調で侍女達を散らすと、彼は袖から黒く丈夫そうな杖を取り出し、部屋に向けて呪文を唱えた。


「『在るべき場所へ戻れ』」


ものの数秒で散らかった部屋は元の綺麗な状態へと戻った。ため息を吐きながら頭を掻く男だが、侍女をどかしたままヴェラだけを部屋に入れて鍵を閉めた。


「……ハァ、何の用だよ、ヴェラ嬢。侍女達がビビるからあんま魔法使いたくねぇんだよ、俺は」


カザン・ナツオイ……それがこの男の名である。ナツオイ家の当主であり、普段は怠惰な生活を送っている。彼は実に無気力かつ自堕落であり、あまり表舞台に立ちたがらない。実力こそあるものの、他当主達と年齢が少し離れていることもあり、あまり会合そのものを好んでいない。

ナツオイ家が統治するループス領南部のラルフは、夏の避暑地として観光地も兼ねており、渓流など美しい自然がみられる。なかなか姿を見せない彼は住民達からはものぐさな当主と思われているが、その実力はごく稀に起きる荒事を瞬時に対処する姿で折り紙付きだと言うことを証明するうちに、当主の館にいることが平和という認識に変わっていった。


侍女が全員退出し、ヴェラが部屋に入るとバタンと音を立てて扉を閉める。そして、ゆったりとした歩調でヴェラに詰め寄っていく。ヴェラは視線を揺らがせることなくカザンを少し睨みながら一歩ずつ後ずさる。部屋の角に追いやられたヴェラが彼から逃れようと動こうとした瞬間、ドンと強めの衝撃がヴェラが背にしている壁を駆け抜けた。腕で逃げ道を塞がれ、ヴェラは何かを言おうと口を開きかける。しかし、その口にそっと指を当てられ鋭い目でカザンを睨み続ける他ない。


「何が望みだ?わざわざこんな俺に頼むようなことか?何を報酬にしてくれる?」


囁くような吐息たっぷりの声でヴェラの耳元で告げる。目元のクマさえ、この影のあるカザンという男を引き立てる艶めかしい要素の一つとなる。


「カザンさん、あなた何がしたいのよ」


自身に覆うように寄りかかりかけていたカザンを引き剥がすとヴェラは彼を睨みつける。


「……やれやれ、ヴェラ嬢はちっとも揺らがねぇ。大体俺はフォルテとかの方が歳近いおっさんだよ。アンタに恋愛感情なんて抱けないっつーの」


手をヒラヒラとさせて先程の雰囲気は微塵もなく、皮肉げな笑みを浮かべてヴェラから距離を取る。


「……ハァ。カザンさん、ピェスカーネ学院の講義に特別講師として闇の魔法の使い手として授業してください」


ピクッと肩が跳ねるカザン。その一瞬、ヘラヘラとした皮肉げな笑みが引っ込んだかと思うと酷く哀しげな表情をしていた。その後、再び皮肉っぽく笑うとヴェラを見て吐息をついた。


「相手はアンタか、光のヴェラ嬢。

 愛され、尊敬され、祝福されし光の魔法使い」


「それに比べて俺は?

 嫌われ、畏れられ、呪詛を吐く闇の魔法使い」


ナツオイ家は代々炎魔法の使い手であり、ヴェラの母ルーはナツオイ家出身である。そんなナツオイ家で素晴らしい魔力保有量を持った者が生まれた。……それがカザンである。炎の扱いは勿論のこと、彼にはもう一つの魔法が使えた。


それが、闇魔法。


「……あぁ、悪いな。受けてやるよ、その件」


視線を落としつつ悲痛な笑みを浮かべていたカザンだったが、ヴェラの視線に気づき、フッと再び皮肉げな笑みに戻る。ヴェラは何も言わずに彼の元へと歩み寄った。


「んぁ?何だ何だ、何がした……っンだよ」

「あなたは、素晴らしい魔法使いです」


ぐいっと、カザンのネクタイを掴むとヴェラはカザンの泳ぐ目を自分の目に合わせた。先程とは違い、カザンに余裕は一欠片もない。小さく揺れる瞳と、ダランと垂れた赤茶の尻尾が彼の感情を表している。

「怯えないで。あなたが、闇魔法の才を見せることで小さな子達がこれから先偏見を無くしていける」

小さく彼の耳が動く。ヴェラは真剣な眼差しで続ける。


「カザンさん、あなたの本当の願いは、魔法の偏見を無くしていくことでしょう?」


カザンは目を閉じて顔を逸らし、吐息をつく。


「ヴェラ嬢よォ、そう簡単に言うけどなぁ、そう上手くいかないのがこの世の中だっつーの」


諦めたような口ぶりで、目を伏せながら言った後、彼女に背を向けるカザン。ヴェラは少し怒ったような口調で彼を追及する。


「またそうやって逃げるんですか」


カザンはダン、と足を踏み鳴らすと同時に振り向いた。ヴェラの煽りが思いの外堪えたらしい。


「煩い。もう逃げるかよ」


彼の言葉を聞いて、ヴェラは満足気な笑みを浮かべると炎夏の間を後にした。



―――秋麗の間……


「失礼、ヴェラ……ってあぁ、もう」

「あぁ、麗しのヴェラ様!」


先に声をかけた2人とは違い、ヴェラという名を聞いた途端、扉が開いた。出迎えるのは白髪の容姿端麗な眼鏡をかけた男。そんな男とは対照的にヴェラは顔を顰める。その様子を従者2人が微笑ましく見ていたが、そそくさとその場を後にした。


「このシュウ・アキバレ、ヴェラ様にお会いできる日を心待ちにしておりましたとも!」


秋麗の間に引っ張られるような形でヴェラが中に入ると、ニッコニコで彼女に問う。


「いかがなさったのですか、ヴェラ様から直々に私に御用命とあらば何でも承りますとも!」


シュウ・アキバレ……扉が開いて以降、常にヴェラを褒め称える言葉を吐き続けるこの男の名である。アキバレ家当主として北東部のウォルンを統治している。ウォルンはマステーラ領やバケガ領へと通じる外交の要所として栄えており、彼は魔法も外交もできる優秀な当主として知られている。本人もその眉目秀麗さを理解しており、様々な行事にて顔を出すことで女性市民達から黄色い声を浴びている。見た目だけでなく、彼の魔法属性である風魔法は扱いが難しく極めることが困難とされる中、天才的な才能と隠れた努力により稀代の風使いとして名を馳せている。そのような経歴故か、だいぶナルシストである。口が非常に上手く、歯の浮くようなセリフも、地域の小さないざこざも、隣領との外交にも一役買う非常に優秀な男である。


「……ピェスカーネ学院の講義に風魔法の特別講師として出席して欲しいのですが、可能ですか?」


そう問われたシュウは、ヴェラに向き直り、胸に手を当てると美しい所作で一礼をする。


「勿論でございます。この風魔法の素晴らしさを余すところなく講義してみせましょう」


ヴェラはそんなシュウの様子をジッと見つめる。その視線に気づいた彼がヴェラに声をかける。


「……ヴェラ様?いかがなされましたか?私のことをご覧になっていたようですが、貴女さまの熱視線を頂戴することができて非常に光栄です」


未だよく回る口を閉ざさないシュウの様子を見てヴェラは吐息をついて小さく呟く。


「……一体どうしてそんなに私を気に入っているのよ」


呆れたような苦笑を浮かべながらヴェラはシュウに問う。


「ヴェラ様、あなたは美しいお方だ」

「この私シュウが仕えるのにこれほど相応しい人はおりません。それにあなたは美しさだけでなく、芯の強さも、賢い頭も、しなやかな体躯もお持ちだ。私はあなたの隣にこそ立ちたいのです」


全くブレないその言動にヴェラはむしろ笑いが込み上げ、クスクスと笑う。その様子を見てシュウはヴェラに向き直って手を取る。


「やはりヴェラ様、私のこのような言動すらも笑い飛ばすとは器が違う。天才である私を仮にも笑い飛ばせる実力と心意気を持つのはやはりあなたしかおられない!」


恍惚とした表情でヴェラを見つめるシュウを見てヴェラは眉を顰める。


「……これでいて本当に実力者なのが恐ろしいわ」


やれやれと額に手を当てて首を振るヴェラ。シュウはヴェラにも自身の実力に言及されより一層得意顔となる。


「ヴェラ様、ぜひ私が統治する美しい街、ウォルンにおいてくださいませ」


気をよくしたシュウは胸に手を当て、一礼をしながらヴェラに声をかける。


「そうね……、きっとそのうち赴くわ」


ヴェラは苦笑してその挨拶を受け入れると、そそくさと逃げるように秋麗の間を後にした。




―――冬帝の間……


「失礼、ヴェラ・A・ループスよ」


「ヴェラ?どうぞ入って」


中から聞こえるのは凛とした女性の声。ガチャリとドアを開けられた。声の主は、窓辺の椅子に腰掛ける美しい銀髪の女性である。


「レイ!久しぶり!体調は大丈夫?」

「久しぶり、ヴェラ。会合には問題なく出られるわ」


レイ・フユガミ……、それが彼女の名である。現在の四大貴族の中で唯一の女性当主であり、ヴェラの親友である。かつて不仲とされていたナツオイ家の当主の弟と結婚し、現在はその身に新しい命を宿している。長髪の銀髪が美しいクールビューティーな女性であり、常に冷静沈着に物事を対処し、決して動揺することはない。天真爛漫なヴェラとは対照的ではあるものの、彼女の心の氷を解いたヴェラには非常に感謝しており、ヴェラのことを心配している。そして、フユガミ家当主たるレイの操る氷魔法は非常に強力で、炎さえも凍てつかせる。

フユガミ家が統治するスリガラはフェリシア領と接する地であり、様々な品が交易で流れてくる為、自ずと交易の街として発展しており、その取り締まりに手を焼くこともある。また、山岳地にはランス山が聳え立っている。雪山としてスノースポーツなどのレジャーができるようななだらかなフェリシア側と、登山家が登るようなループス側を持つ二面性のある雄大な山であり、オオカミ達の信仰対象にもなっている。


「よかったぁ……スリガラはヘルさんに任せたの?」


安心したとばかりに吐息をついてヴェラがレイに訊ねると、レイは微笑み、静かに頷いた。

「えぇ、スリガラを守ってくれるわ、あの人なら」

自身の夫を信頼した様子で目を細めるその様子にヴェラもまた頬を緩める。


「レイ、あなたとっても幸せそう……」


かつて冷酷とも言えるような表情の無さだった彼女を知るヴェラは今の様子を見てニマニマと笑う。


「フフ……昔の私ならすぐ否定しただろうけど、今は本当に幸せだから否定しないわ」


口に手を当てて上品に笑うその様は非常に美しい。そんな親友を見ていたヴェラだったが、要件を思い出して問う。


「ねぇ、本当はレイに頼みたかったんだけど……。ピェスカーネ学院で魔法の講義をして欲しいと頼まれてね、でも万が一を考えたらレイに無理はさせたくないわ……」


ふむ……と考え込むヴェラを見て声をかける者がいた。


「その件、姉に代わって僕が引き受けてもよろしいでしょうか」


レイの隣に凛と立つ並ぶ青年が名乗りを上げた。ヴェラは目を丸くしてその青年を凝視する。


「ミオ……、あなた愛想良くできる?」


レイはヴェラとは対象的に顔色ひとつ変えずに自身の弟に訊ねる。


「はい、このミオ・フユガミに……姉に代わって氷魔法の講師をさせてください」


姉の冷たい態度にも動じず提案を繰り返すミオにヴェラは少し驚きながら、ぎこちなく頷く。


「え、えぇ……やってくれるのはとても嬉しいのだけれど。ミオさんて……あんな小さかったミオ君?」


ヴェラは驚きのあまり素っ頓狂な声を上げる。


「……えぇ、えぇ。そうでしょうね、ヴェラ様にお会いした時はもっと背が低かったことでしょう。でも、僕はもうすぐ成人を迎える。魔法の扱いだって成長したんです、レイ姉様の代役として十分に役目を果たせます」


少し詰め寄り、ヴェラにグイと顔を近づける形で告げる。


「ミオ、行儀が悪いわよ。もっと冷静でいなさい」


レイの声にピタリと止まるミオ。ヴェラがホッとするのも束の間、ミオはレイの元へ歩を進めると少し不服そうな幼い表情を浮かべて言う。


「それに!ヘルなどに任せずとも父や母が……ッ!」


感情的にレイに詰め寄ったミオに威嚇として氷魔法が向けられる。彼はようやく姉の逆鱗に触れたことに気づき、本能的な恐怖に襲われる。しかし白い息を吐きながら、眼前に迫る氷柱から目を離せない。その様子をレイは氷よりも冷たい眼差しで見下ろしていた。その瞳の奥に烈火の如く怒りを秘めながら。


「『凍てつけ、無礼者』」

「『走れ、火蜥蜴』」


氷魔法を遮る形でヴェラが炎魔法の呪文を唱えた。レイの杖から具現化した巨大な氷牙が噛みつこうとしたその瞬間、その牙を這いずるようにヴェラが作りだした小さな火蜥蜴が駆け抜けた。非常に整った顔が怒りに染まることはなく、呆れに近いその表情は酷く恐ろしい。


「……ハァ。ヴェラ、甘やかし過ぎじゃない?」


レイが少し冷静になった後、不機嫌な声で呟く。しかし、ヴェラに向ける顔は先程とは異なり、だいぶ柔らかい。


「レイ、ここでの攻撃魔法は基本的に禁止よ?それにミオ君が傷ついて後で悲しむのはあなたなんだから」


ヴェラに諭され、レイはそっぽを向いてから俯く。


「ミオ君、例えレイの為を思っていたとしても、レイの想いを踏み躙るよるな発言はしてはいけないわ」


ミオは不服そうな顔をしながらも自覚はあるようで無言で肯定する。


「レイ、ミオ君……ちゃんと仲直りしてね?」


相変わらず他者への態度が氷のようなフユガミ家の二人にそう告げるとヴェラは冬帝の間を後にした。

またもや増える登場人物達…。


面白い、続きが読みたいと思った方はブックマーク、高評価etc…よろしくお願いします。


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