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教え育てること

チャティーさん久々の再登場です。

祖母と孫娘の組み合わせっていいですよね。

―――ループス領、ルリユール邸


「ただいま戻りました、お祖母様!」


ルリユール邸に響く明るい声。その声を聞いて使用人のマルチーズが駆けつけてくる。


「アリスお嬢様!随分と遅く……あ」


ヴェラとフォルテの姿を見て使用人は口を閉じる。後ろからゆったりとチャティーがやってくる。


「あら、アリスだけじゃなくてヴェラちゃん、フォルテ君もいらっしゃるのね」


来客の二人を見てニコニコと穏やかに笑うチャティー。ヴェラとフォルテは一礼をする。


「先程、ナンパ師に絡まれて危ないところを助けていただいたんです。お会いしたいと思っていたのですが、まさかこんな形になるとは……」


アリスはクスッと笑うと持っていた書類を使用人に渡す。


「私の恩人のお2人をもてなしたいんです。お祖母様、よいでしょう?」


チャティーはヴェラの手を取りより嬉しそうに微笑む。


「勿論よ。ありがとう、ヴェラちゃん、フォルテ君。また良いハーブティーができたの、ぜひどうぞ」


ヴェラとフォルテは顔を見合わせ、玄関先から客間へと移動した。



―――ルリユール邸、客間


「……さて、先にお仕事を片してしまいましょうか」


静かにハーブティーをかき混ぜるチャティーの目は優しい口調とは裏腹に鋭い。アリスと共に庭の散策に出てしまったヴェラに代わり、フォルテは静かなオーラを放つチャティーを相手に向かい合っていた。


「今日の要件は?ヴェラちゃんには伝えていないだろうけどロボ様はもう決めているのでしょう?」


あまり気乗りはしない、といった様子でチャティーは冷めた茶を静かに呑む。


「……はい、フェリシア領との条約締結の話です」


フォルテは静かに目を伏せたまま告げた。その様子を見てチャティーは苦笑を浮かべる。


「もう、嫌よ。……大切な人を失うのは」


説明は不用、とばかりに視線を落として手をヒラヒラとさせるチャティー。それもそのはずだ、彼女は戦争で夫を亡くしている。


「あなたも嫌でしょう?ヴェラちゃんが他者を攻撃する指示を出すのも、彼女自身が戦うのも、そして……あなた自身が彼女を置いて死ぬのも」


老婦人の前にはどんなことも全て見透かされ、言語化される。フォルテは心を針で刺されたような痛みを感じる。


「……それでもあなたはヴェラちゃんに仕えるのね」


真っ直ぐな彼の目を見てチャティーは微苦笑して折れる。


「いいわ、条約締結でも何でもしなさい」


持っていたティーカップをコトン、と置く。そして強い眼差しと口調で彼に言った。


「何があろうと、あなたの大切な人を悲しませないで」

フォルテは目を閉じて一礼をした。



―――ルリユール邸、庭園


「アリスさんはなんの仕事をしてらっしゃるの?」


アリスと共に魔法花に水やりをしていたヴェラが問う。アリスは水やりの手を止めて微笑んだ。


「私、ピェスカーネ学院で教師をしているんです」


ヴェラは目を丸くして答える。


「ピェスカーネ学院……!私の母校なの、すごく懐かしいわ。とても素敵ね!」


かつての学び舎に想いを馳せると共に自然と顔が綻ぶヴェラ。アリスはそんな彼女を見て手を合わせる。


「そこでお願いなのですが……、ヴェラ様や四大貴族の皆様に毎年恒例の魔法の実演をしていただきたいのです」


ポカンと口を開けて停止するヴェラ。昔もそのようなものを見た記憶がほんのりあるが、今思えば随分と大掛かりなものだったのでは?と少々考え込む。しかし、この直近で四大貴族を含めた会合があることを思い出す。


「私はぜひ参加したいわ、ただ……他の四大貴族当主がOKしてくれるかはわからない……でも説得してみるわ!」


ヴェラが了承の意を伝えると、アリスは嬉しそうに微笑んで小さく尻尾を振る。そんな令嬢を見てヴェラは全員を納得させる各々の理由を考えるのであった。

在りし日に思いを馳せるチャティーさんとアリスさんからのお願いのお話。


面白い、続きが読みたいと思った方はブックマーク、高評価etc…よろしくお願いします。


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