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令嬢の災難

久々の更新となりましたことをお詫び申し上げます。

リアルの方が多忙につき更新頻度がまちまちである事をお許しくださいませ…。


新キャラ登場です。

―――ループス城下町、リャオルラン広場


とある場所に抜ける薄暗い裏路地を、透明感のある薄い銀色の髪を風になびかせながら歩く1人の令嬢がいた。纏うドレスはそれほど豪奢でなくとも、その気品が彼女の存在を引き立てていた。


「ねぇ、お嬢さ〜ん、俺達とお茶しな〜い?」


令嬢がチラ、と振り返るとそこにいるのは小柄なビションフリーゼの男と長身のボルゾイの男のチャラチャラとした2人組。顔こそ整っているものの、魂胆が丸見えで彼女には2人が酷く醜く見えた。


「……私、そんな時間ありませんの」


令嬢はメガネの位置を少し直すと、彼らを一瞥し、再び歩き出す。


「そんな冷たいこと言わないでくださいよ〜」


そう言ってボルゾイの男が彼女の前にヌッと立ち塞がる。大型犬の中でもかつては狩猟犬として名を馳せたボルゾイは長身痩躯、面長の特徴的な風貌をしている。そして、現在このナンパ師の目は獲物を見つけた狩人の目となりギラギラとしている。


令嬢は静かに怒っていた。小型犬である彼女は力では決して及ばない。しかし、魔法は一流である。苛立ちを募らせた彼女の周りに急激に魔素が集まり始める。ナンパ師2人は魔力量が少ないせいか、そのことに一切気づかない。そしてビションフリーゼの男が彼女の肩に手を置いた瞬間、小さな爆発が起きた。集めた魔素を視えぬ鎧のように纏った彼女に触れたことで、魔法耐性のない者には有効なカウンターである。目眩しと、相手に隙を作ることで一瞬の活路を見出すのである。男はもろに爆発をくらい、3、4メートルほど吹き飛んだ。彼女の魔法は水だったおかげで、霧散した魔素は霧のように周囲に漂っていた。


「……クソッ、追え!」


爆発の衝撃からやっと立ち直ると、ボルゾイに命令する。ボルゾイは獣化すると、霧など気にすることなく恐ろしいスピードで逃げ出した令嬢を追い始めた。その速さ実に時速50km。到底人の姿では逃げきれず、獣化をしたところでよほどのスピードを出せる種でなければ簡単に追いつかれてしまう。獣化をすれば嗅覚で全てを知ることができる。たとえ視界を遮ってもほぼ意味をなさないのだ。逃げればより一層追いかけられることを理解しつつも恐怖心から足を動かした。纏うドレスが仇となり、転倒する。起き上がり、迫るボルゾイの姿を見た。魔法を発動するには時間も集中力もあまりに足りない。彼女は、全てを諦めた。



「嫌ッ……!」


かろうじてあげた小さな悲鳴。彼女は襲われる、と覚悟して目を固く瞑っていたが衝撃はいつになっても訪れない。ゆっくりと目を開けると、目の前に立つのはオオカミの獣人。この街においてオオカミの獣人は役人か位ある人々が殆どである。助かった……と安堵した途端、足の力が不意に抜けた。


「大丈夫ですか……?!」


走り寄ってきたのは次期ループス領領主ヴェラ。令嬢はコクコクと頷く。


「グァッ……、フォルテ・ウルフレム!」


令嬢を守ったオオカミの獣人は防御障壁によってボルゾイを弾いていた。ボルゾイはその相手の顔を見て酷く動揺していた。


「……ハァ、またあなたですか。いつまでも放蕩息子なんてしていないでいい加減まともに働きなさい」


フォルテはボルゾイの腕に魔法が仕込まれている重い手錠をつけた。ヴッと呻いたボルゾイを確認すると、ヴェラが連れてきたビションフリーゼにも同様に手錠をかけると街の警察に引き渡した。


「お怪我はございませんか?少々荒っぽいやり方で申し訳ありません、何せ危急の場面でしたので……」


フォルテが一礼をして彼女に確認をとる。令嬢は座り込んだまま丁寧にお辞儀をした。そして言いづらそうに続ける。


「ありがとうございました……どうかお礼をさせてください、と言いたいところなんですが」


「助けていただいたら腰が抜けてしまって……」


恥ずかしそうに告げる令嬢にふと見覚えのある雰囲気を感じるフォルテ。


「気を悪くされないのなら、目的地までお送りします」


そう言うと、彼は微笑してヒョイと令嬢を抱えた。


「ひゃ、ひゃい!?」


そんな反応を見てヴェラとフォルテはクスクスと笑う。


「どちらまで?」


紳士的な対応をされ、令嬢はようやく我に返ったらしい。彼女は慌ててその名を告げた。


「わ、私の名前はアリス・ルリユールです」


2人の顔がパッと明るくなる。その様子を見てアリスは首を傾げる。

「えと、私はヴェラ様とお会いしたことありましたか?」


そう聞かれ、ヴェラはニッコリと笑って答える。


「チャティー様に大変お世話になっているんです」


ルリユール公爵家の令嬢……つまりはチャティーの孫にあたる彼女を見つけてヴェラは内心歓喜していた。


「お祖母様に?……あぁ!時折お話を伺っていたのはそういうことだったのですね!こちらこそ、ルリユール邸の大書庫を利用していただきありがとうございます」


ニコニコと笑うその様は、どことなくチャティーを彷彿とさせる。柔らかく暖かな雰囲気は彼女達特有の素敵なものなのだ、とヴェラも笑みを浮かべる。


「私達ルリユール邸に向かうところだったんです」


そう言うと、アリスはパァッと顔を輝かせた。


「そうだったのですね!実は……ヴェラ様達に、ご協力していただきたいことがあるんです!」


ヴェラとフォルテは顔を見合わせた。


「協力してもらいたいこと?」

これからも遅筆ですが趣味としてちまちまと更新していこうと思っています。


面白い、続きが読みたいと思った方はブックマーク、高評価etc…よろしくお願いします。

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