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従者の手合わせ

フォルテとナトの手合わせです。

―――ループス城、中庭


2人の従者が向かい合っていた。

領主ロボに仕える黒馬ナトと、次期領主ヴェラに仕えるフォルテである。普段はこの2人は様々な業務連絡だけでなく、同僚としても仲の良さげな様子が見られる。


「さて、よろしくお願いします」


フォルテが上着のモーニングコートを畳んで置いた。


「……本当に本気でやれと?」


ナトもまた上着を脱いでおり、裾をはたいている。


「えぇ、本気で」


フォルテの目が普段の優しげな瞳から、鋭い黄色の瞳となった。ナトは、メガネを上着の上に置く。


「痛い目を見ても知らないからな」


ナトのその目は冷静で、フォルテを見据えていた。


「「……ハッ!」」


2人が同時に動く。共に非常に素早い動きであり、従者として、主の護衛として常に鍛えていることがよくわかる。


先制はナト。その長脚に雷を纏い、フォルテに蹴りを入れる。フォルテが纏っていた高性能の極薄の防御障壁が音を立てて割れた。


しかしフォルテは、近接線に持ち込んできたナトに対し怯むことなく獣化をし、さらに間合いを詰める。ナトは胴への噛み付きをすんでのところで躱し、瞬時に間合いを取ると体制を整える。共に、見ていて無駄のない動きだ。


「『霆よ、穿て』」


ナトが杖をフォルテに向けて魔法を放つ。彼の魔法属性は雷……光に次いで攻撃速度が速い種類である。放たれた雷撃はフォルテへと伸びるものの、フォルテは獣化を解いて、無詠唱で手を翳すと防御障壁を作り上げる。


「『風よ、吹き荒べ』」


杖を取り出して唱えるのは風の魔法。突風が吹き荒れ、ナトは腕で目を庇う。フォルテの魔法属性は風。扱いが難しいものの一つであり、宝の持ち腐れとなることも多い属性であるが、彼は使いこなしている。


杖を短剣に変化させると、ナトに向かうフォルテ。既に体にはまた高度な防御障壁が貼られている。ナトはレイピアを袖から取り出し、フォルテの攻撃を受け止める。


「……ッ」


力の差はあまり無いように見える。そしてよく見れば両者共に身体強化術を使っている。しかし、ナトが少し押され気味である。やはり、肉食獣の力は強い。


「まさかまだ序の口でしょう?」


フォルテが少し挑戦的な笑みを浮かべて言った。普段は人を煽ることなど決してしない彼だが、ナトであるからこそ手合わせを本気でやろうとしているのであろう。そんな彼を見て、ナトはやれやれと首を振る。


「戦闘狂でも何でも無いあなたが何故そんなことを言っているんだ……」


レイピアで力比べをしていた体勢を剣先を弾いて崩した。一瞬焦った顔をしたフォルテだったが、すぐに距離を取る。ナトはレイピアをフォルテに向けると目指して突っ走る。


「……ありがとうございます、ナト。しっかりと本気を見せてくれて」


「……ッ!」


フォルテの黄色の瞳がギラリと光った。肉食獣の瞳となっていることにナトは息を呑みつつ、尚もレイピアを振るう。瞬時に獣化をすると、そのしなやかな体躯を躍動させてナトのレイピアによる突きを軽やかに躱す。


ナトは雷魔法を練り始める。蹴りをつけるつもりなのだろうか。フォルテが体勢を整えるために距離をとった後、ナトまであと3メートルというところでナトが詠唱した。


「『雷鳴よ轟け』」


瞬間、極大の雷が2人の間に落ちた。しかし、音はない。フォルテは一瞬痺れたようなそぶりをしたものの、ナトは強力な魔法を放った影響で魔力切れを起こしたようで、ふらついていた。フォルテはそのままナトを押し倒し、喉笛を噛む寸前で止まる。


「……大丈夫ですか、ナト」


獣化を解いて、倒れ込んだナトに手を差し伸べる。


「大丈夫、と言ったらあなたは怒るんだろうな」


苦笑して差し伸べられた手を取るナト。


「えぇ、いま明らかに魔力切れを起こしているんですから」


そう言うと、フォルテはナトに手をかざす。彼の手から光が溢れ、ナトに魔力が移る。フォルテは焦り気味になりながらも答える。


「応急処置で申し訳ありません。私が本気でなどと言ったせいで……っ」


ナトはフォルテを見て首を振った。そして、彼を安心させようと不器用に笑う。


「すまない、久々に本気を出して魔法を使ったせいで魔力を使い果たしてしまった……消音魔法も案外魔力を消費するんだな」


ナトは雷魔法を使う際に、消音の魔法も併用している。そのため、高度な魔法展開となっており、魔力を消費しやすい。


「魔法の同時展開……ナト、あなたはかなり高度な併用展開をしているのではありませんか?同時展開することはかなり高度なスキルが必要だと思うのですが……」


フォルテが黙考に耽り始めると、ナトが立ち上がった。


「誰だ」


警戒心剥き出しの鋭い声。

それは中庭の見える廊下で彼らの手合わせを観戦していた私に向けられていた。


「……エリカさん?」


未だ警戒心の残る声で、彼は私の名を呼んだ。

エリカ・アンティール。

それが私の名だ。

新キャラエリカさんです。


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