3話
「え?!」
「助かった?」
パーティーの皆が固まって、何が起きたのか把握できていなかった。
「あのー、大丈夫ですか?」
戒は再度、安否を確認する。すると、リーダーらしき男性が戒の両手を握り感謝する。
「助けてくれてありがとう!完全に諦めかけてたよ、それにしてもあのモンスターを倒すなんてスゴイね。他のお仲間さんは?」
個人で倒したと思われていないなぁ。説明も面倒だな、さてどうしたものか…。
「貴方、その仮面て日本フィールド1位の"蒼翼"!!」
ランキング上位50名に入ると、二つ名が与えられ身バレが嫌なプレイヤーはマスクや仮面で正体?を隠しているのだった。ただし、其々のマスクや仮面には特徴があるので何位のランカーか二つ名までは全プレイヤーに知れ渡っている。
「あー、どうも。いやたまたまログインした近くで貴方達が襲われていたのでね。」
「あれ?って事は、ガーディアンは蒼翼さんの単体撃破!?」
「そういうことになるよね?、だって蒼翼さんってソロで活動してるって聞いてるし。」
何やらパーティー内での、要らぬ詮索が始まろうとしていた。これは早めの撤退が必要と判断した戒は
"じゃあ"と一言言って脱兎の如くその場をあとにした。
本来の目的も忘れて思い出せないし、一旦街に戻るかな。
戒は拠点にしている街へ戻って行った。
さてこのゲーム内のフィールドは地球と同じ地形らしく、ゲームスタート時も始めたゲームセンターの場所から始まる。しかし、地形は一緒なのだが雰囲気は違う、現代に近いは近いのだが何処となく中世時代のような建物や街並みなのだ。だからか、都会の高層ビルなどは全くなく、高い建物でも城のようなものくらいしかない。
戒は拠点としている、個人保有のギルドホームに帰ってきた。
「あれ、素材って何が必要だったかな。アレ作るのにはっと、あー、だからあそこに居たんだ。まぁガーディアン討伐のドロップで上手いこと手に入れてたし結果的にはイイよね!」
次はと考えて地図を広げて考えている。すると大元のギルドでクエストを受けたほうが楽かと思い、ギルド会館に向かう。
…ギルド会館・支部
戒が仮面を付けたまま扉を開けて中に入って行くと周りが騒つく。そう、戒は日本フィールドのランク1位である。ここ最近は自分でクエストを通さずに素材を採取していた。しかし、今回は必要素材のモンスターが生息位置を移動している為か、特定出来ずギルドのクエストを頼りにやって来ていた。
「おい、アレって?」
「あぁ、"蒼翼"だ。」
「最近見かけなくなったから、引退したんだろなんて噂があったが。」
姿を見せていなかったからか、引退説が広まっていた。
「スイマセン、クエストを受けたいのですが。"雷獣"のクエストは出ていますか?」
「ようこそ蒼翼様、早速確認いたしますので少々お待ちください。」
受付嬢がそう言って、カウンター奥でクエストの検索を始める。すると、後ろから仮面をした男が戒に近づく。
「久しぶりやな、蒼翼さん。」
「あぁ、どうもです。こんな所で珍しいでしね"漆黒"さん。」
そうこの前身の装備から仮面まで黒尽くめの男はランク3位の男であった。
「なんや、自分かて暫く姿みせんかったやないか。まぁ、ワイのほうも素材見つからんくてギルドきたんやけどな。」
「もしかして"雷獣"ですか?」
「なんやお前もか。」
「えぇ、奴は単独では見つけにくいんでね。クエストに有れば手っ取り早いかと。」
「それはラッキーやった!どや、久しぶりにパーティー組めへん?」
「クエスト内容次第ですかね、複数討伐なら良いですよ。」
2人が話していると受付嬢がクエストの内容を提示してきた。
「難易度はSSS、"雷獣"の3体討伐です。場所は沖縄の西表島です。受注致しますか?」
「はい、お願いします。パーティーは2人で。」
「承りました。」
「"漆黒"さんあとプレイ時間は?」
「1時間ってとこやな。」
「じゃあ、問題無さそうですね。すぐ行けますか?僕は大丈夫ですが。」
「あぁ、平気や。じゃ、行こか。」
「では、早速トランスポートへ。」
そう言って2人はその場をあとにする。周りでは観戦しに行こうか話し合っていた。そう言う話が出てもおかしくはないだろう。有名ランカーが手を組んでのクエスト攻略、内容はSSS、こんな事は滅多にない。誰しも2人の戦いを見たがる。ただし、戦闘に巻き込まれれば死亡は必死、このゲームのデメリットとして死亡後のアカウント扱いが酷なのである。
通常のゲームでは生き返って終わり、クエスト中なら失敗で報酬が貰えないだけだが。一定時間のアカウント停止とゲーム内の金で全財産の5分の1の支払いとなる。おいそれと人のクエスト観戦などできようもない。さらに難易度SSSを観戦など命懸けになる。故に皆戸惑うのであった。