レモン
喫茶店に入ったのが
あの時初めてだったなんて
今も君は信じてくれない
ミルクとシュガーに手をつけなかったのは
ずっと手が震えていたから
ブラックって、本当に苦い
なんとか笑顔をそのままにって
そんなことだけを考えてた
カップルで街を出歩く人って
こんなにいっぱい、いるもんなんだね
見慣れた都会の道すがら
二人だけの空気、感じてた
君のことが好きなんだなって
どこかで思い知らされてる
君が君であり続ける限り
この気持ちからは、逃げられそうにない
この前に行った水族館のこと
君が楽しそうに話してる
すっとぼけた顔をした
変な魚がいたんだよって
そんな話をうわの空で聞きながら
あったかい気持ちが胸に湧き上がって
僕は少しうつむきながら
それが消えないようにって願ってて
だから、君を抱き寄せた
すぐにパッと腕を離した
戸惑うような、恥じらうような顔してたけど
すぐに君は、いつもの調子
聞こえないように『ごめん』と謝って
僕も、いつもの調子に戻った
君のことが好きなんだなって
僕自身に思い知らされてる
僕が僕であり続ける限り
この気持ちからは、逃げられないんだね
街の明かりが消える頃
会話は自然と途絶えてた
無口な君の横顔は
じっと見てられないぐらい綺麗で
家まで送ると言った僕を
ちっとも不思議がらなかった
僕もそれが、不思議とは感じずに
君のことが好きなんだなって
いつも、どこかで思い知らされてた
君が君であり続ける限り
僕が僕であり続ける限り
この気持ちからは、逃げられないよ
どちらからともなく
なぜだか、そんな気がしてた
あんなに強く、君の肩を引き寄せてたのに
レモンの味って言っていた
誰かさんの気持ちがわかったよ
ほんの少しだけ
ほんの少しだけ、ね




