表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/65

【閑話】アサヒからの手紙〜リオ編〜

『リオへ


 お元気ですか。

 ランディからリオの王都での活躍を聞き、嬉しく思っています。

 ランディは、リオは仕事となると頑張りすぎてしまうところがあるとも言っていました。無理はせず、体も大切にしてください。


 早いもので、私がこの屋敷へ来て一年が経とうとしています。

 最近は、庭の菜園で育てる薬草の種類を増やして、ポーション作りを始めました。

 ヤヨイ様が、光魔法と回復系のポーション作りについて力説してましたが、細かな魔法操作はマーサさんが教えてくれます。ヤヨイ様曰く、これは適材適所だと言っていました。マーサさんの魔法操作はヤヨイ様を凌ぐのだと。マーサさんは一体何者なのでしょうか。


 話が逸れてしまいましたが、私の作るポーションは他とは効能が少し違うそうで、市場には出さず、ヤヨイ様のツテで騎士団へ卸しています。

 私のポーションが、リオの助けになれば嬉しいです。


 薬草といえば、冒険者ギルドのクエストもコツコツこなしています。

 ハナとタロがいつの間にかレベルを上げたのもあって、魔物の討伐などのクエストも達成できるようになりました。先日冒険者ギルドで最年少のBランクに昇格したのは、ちょっとした自慢です。

 冒険者の知り合いも増えて、冒険者複数人で行う規模の大きいクエストでは、私とハナとタロは最強パーティだと褒めてもらえました。


 これまで、手紙を出すのが遅れてごめんなさい。

 話したいことがたくさんあったはずなのに、いざ筆を取ると何を書いていいのか考えてしまいました。

 これからは、リオに聞いてほしいことを忘れないように、些細なことも書き留めておこうと思います。

 気が向いたら、返事をくれると嬉しいです。


 追伸

 魔法学校の入学が決まるまでリオには会えないと思っていたけど、もしAランク冒険者になれたら、いっしょにお祝いしてくれませんか?ヤヨイ様がご褒美があったほうが、頑張れるって言っていたので…

 リオに会いたいです。


 アサヒより』


 リオはアサヒからの手紙を元通りに折り直し、そうっと封筒に戻した。

 しばらく封筒の自分への宛名を見て、「リオへ…」と手紙の冒頭を口にすると、もう一度封筒から手紙を出し、始めから読み返した。


「リオへ。お元気ですか。ランディから…」


 ここでリオは眉をしかめた。

 まず最初にランディの名前が上がるのは、少し気に食わない。ランディには、後で小言の一つでも言ってしまいそうだ。

 しかし、アサヒがそう書かざるを得なかったのも分かっている。これまで何度もアサヒに手紙を出そうとしたが、何を書いてよいのか分からないまま今に至ってしまったのは同じなわけで、今筆を取れば同じように、お祖母様から聞きましただの、人伝てに聞いてきた話を書くに違いない。


(それにしても、成長が著しいな。ポーションまで作れるようになったのか。きっと、驚くほど質の高いポーションなんだろうな。

 それにすでにBランク冒険者とは、大したものだ。魔法学校へ行く頃には学ぶことなど無くなってしまうかもしれないな)


 リオはアサヒを誇らしく思った。

 それにしても、アサヒの活躍を考えれば王都にその名前が上がってもよさそうなものだが、今のところその気配はない。これも、お祖母様やロン大叔父様が手を回してくださっているのだろう。


「ハナとタロも頑張っているんだな」


 ホワイトタイガーは元々Aランクの魔獣ではあるが、猫又の成長は未知数だ。

 精神に干渉する魔法を使うなら、闇魔法に適性があるのかもしれない。もしそうならば、ハナはアサヒと同様に希少な魔法の使い手だ。


 そんなことを考えながら、ハナが幾たびも自分やランディにニャーッ!!と言いながら抗議していた姿を思い出し、

「あの猫に深刻な事態は似合わないな」

 とも思うのであった。


「追伸…」


 リオはこの『追伸』を何度も繰り返し読み返した。

 そして、何度目かの追伸を読み始めたその時、コンコンコンとドアをノックする音がして「俺だ。入ってもいいか?」とランディの声がした。


「どうぞ」


 ガチャ…


「悪いな!」


 ランディは悪びれる様子もなく部屋へ入ると、リオが座る正面の椅子にドカッと座った。


「リオ、次の任務を聞いたか!」

「確か、新たに出現したダンジョンの調査だったか?まだ事前調査中で騎士団が参戦するのはしばらく先だと聞いていたが」

「どうやら、ダンジョンの階層が幾重にも分かれていて、単純に調査員の数が足りないらしい。次回の調査から、冒険者にクエストを出すそうだ。対象はBランク以上」


 リオは眉をぴくりと動かした。

 ランディが得意げに話す様子を見るに、おそらく。


「おい、なんでアサヒがBランクになったのを知っているんだ。前々から思っていたが、アサヒに手紙を送りすぎじゃないか?」


 ランディはリオの無意識からくるヤキモチという名のお小言をスルーし、話を続けた。


「それでだな、この話を聞きつけたヤヨイ様が、『索敵のスキルも磨けるちょうどいいクエストを見つけたのよ』とアサヒに提案してくださったらしい」


 リオは自分の胸が高鳴るのを感じた。


「リオ、アサヒに会えるぞ…!!!」


 アサヒには申し訳ないが、どうやら自分へのご褒美が先になってしまいそうだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ