森で猫とまったり暮らします①
(うぅ…苦しい…)
「アサちゃん、朝だニャ!!」
「アサちゃん、起きるです!!」
ハナとタロが顔や体の上で、あんよのフミフミ攻撃である。
「わ…分かったから、お腹に乗らないで〜…」
いつもの朝だ。
「アサちゃん、そろそろ野菜が収穫できるニャ」
「ほんとに?じゃあ後で菜園に行こうか」
「ニャ」
「ぼくはゴーレムさんと遊ぶです」
着替えをすませて、ダイニングルームへ行くと、ヤヨイが朝食を取っていた。
「おはよう、アサヒさん」
「おはようございます、ヤヨイ様」
席へ着くと、マーサが紅茶を淹れてくれた。
紅茶を一口含み、ホッと一息。
マーサの紅茶は絶品だ。同じ茶葉を使っているのにこの違いはなんだろう。
(淹れ方が違うだけ…?何か魔法を使ってるのかな…?今度聞いてみよう)
「アサヒ様、朝食はトーストでよろしいでしょうか」
「うん、ありがとう」
マーサが来てからは、朝食はマーサが、昼食と夕食はマーサとアサヒの二人が準備するようになった。
マーサは料理も絶品なのだが、アサヒが何気なく作ったハンバーグがこの国では珍しい料理だったようで、それ以来レシピを聞かれることが多くなった。マーサに言わせれば、ハンバーグやお好み焼きなど、聞いたことのない料理の方が興味をそそられるらしい。
朝食を終えた後は洗濯物や掃除に取り掛かる。
家事全般はマーサの指導のおかげもあり、飛躍的に効率が上がった。そして仕上がりも素晴らしいのだから、やはりマーサはプロの侍女である。
これだけ細かい魔法操作ができるのに、なぜ侍女の道を選んだのか気になるところだ。
ひと仕事終えたあとは、ポストの手紙を回収して書斎へ向かった。手紙の返事を書くためだ。
文字の練習と称して始めたランディとの文通は未だに続いており、事あるごとに手紙を送ってくれるので、王都の流行りにも詳しくなってしまった。
あとは、モーソン家のアルからも手紙が送られてくる。時々手紙の他にも花などの贈りものが添えられており、なんてできた義兄だろうと関心させられる。
実は、リオからの連絡は一度もない。ランディの手紙で活躍は耳にしているが、不自然に期間が空いてしまったため、こちらから手紙を出すきっかけもつかめずにいた。
さて、そろそろ窓辺でまどろむふたりを迎えに行こう。
「ハナ、タロ。お外に行くよ」
ハナは尻尾でタシッ、タシッと返事をしているが、どうやらまだ眠いようだ。
タロはというと、起きてはいるが、ハナに枕代わりにされて動けないでいる。
「うぅ…」
「しょうがないな…後でふたりでお庭においでね」
「うぅ、はい…」
菜園へ向かうと、ハナの言っていたとおり、収穫時の野菜がいくつかあった。
ゴーレムに手伝ってもらいながら、それらを収穫していく。
「1号はピーマン、2号はトマトの収穫を、3号は水やりをして4号、5号は雑草を抜いておいてね」
ゴーレムの顔に埋め込まれた魔石がピカッと光り、きびきびと働き出した。
ゴーレムは現在10体いる。
ハナとタロがどこからか魔獣を取ってくるため、余った魔石を活用して数を増やした。
「トトトトトトッ、テイ、ヤ!!です!!」
庭から騒がしい音が聞こえてきた。どうやらハナとタロが起きてきて『戦闘ゴーレム』と格闘を始めたようだ。
「ニャんの〜これしきニャ!!」
「うぅ、テイテイ!!」
猫パンチかな?
いや、もう可愛くて癒やしでしかない。
時々、ふたりがとんでもない魔法を繰り出しているようだが、『防衛ゴーレム』が屋敷や菜園を守ってくれているので良しとしよう。




