精霊の森①
斜めがけのかばんをかけ、私はさながらピクニック気分であった。
今日はリオが森へ狩りに行くというので、ついて行くことになったのだ。
ちなみに、このカバンは私が転生したときに持っていたものだ。「マジックバッグ」というらしく、中には馬車2台分の荷物が入る、貴重なアイテムらしい。
もともと服が何着かと、使い道が分からないいくつかの小物や石しか入っていなかったので、容量は十分残っていた。
今日はリオとハナと私の三人分の軽食とフルーツジュースを入れて、準備万端だ。
「アサヒ、よく聞いて。森は危険な場所もあるから、絶対に僕の近くを離れないこと、一人でどこかへ行かないこと、もしはぐれてしまっても、動き回らないでその場で待つこと。いいね」
そう言って、リオは私の手を取った。
「て、手、繋いでいくの?」
リオの子ども扱いにはいまだに慣れない。
「まったく過保護な男だニャ。アサちゃんにはハナがついてるから大丈夫ニャ」
「もちろん、ハナも頼りにしてるよ」
さぁ、いよいよ出発だ。
狩りをするには、屋敷の近くは人の気配があり、野生動物があまり近寄らないので、30分ほど歩いた先に罠を仕掛けるそうだ。
目的地へ行きすがら、リオは森の植物や生き物について話してくれた。
「アサヒ、食べてごらん」
黄緑色に縞模様の入った、ぶどうのような実を、プチッと取ってくれた。
「ん…酸っぱい!けど美味しい…」
「グーズベリーだよ。熟して赤くなると甘味が増すから、もう少ししたら収穫しようか」
「うん。ジャムにしても、美味しそう」
あれは、ふきのとうかな、あっちのはつくし?
見たことのある植物があるが、ここでは食用ではないのかもしれない。
ふきのとうはよく天ぷらで食べたけど、リオも食べれるかな。
パンがあるんだから、小麦は流通してるんだよね。
最近はサンドウィッチしか食べていないせいか、森の植物は新しい料理を連想させ、私をわくわくさせた。
コツンッ
「いたっ」
木の実が頭に落ちてきた。
コツンッ コツンッ
「いたっ、痛い!」
上を見上げると、何匹かのリスが
「キュッ、キュキュ」
と私を見て笑っている。
「ラタトスクだね。彼らは情報屋だから、アサヒが森に住み始めたことも、森の動物たちの噂話になりそう」
「アサちゃん、リスにからかわれてるニャ。ハナがこらしめるニャ」
「ハナ、ちょっと待って」
よく見ると行く先の道に等間隔で木の実が落ちている。
「リオ、ちょっとだけ見てきてもいい?」
「そうだね。僕も罠を張らなくてはいけないから、ここらへんで自由行動としようか。ただし、僕の目の届く範囲から離れないこと」
「わかった」




